自立を支援し介護の負担を軽減するバリアフリーリフォーム

浴室のバリアフリー化 高齢者の健康と安全のために注意したいリフォームの考え方

住まいのこれから

30年以上前の住宅の場合、浴室はタイル張りの湿式工法の浴室がほとんどです。この工法は、段差が大きい、冷えやすい、滑りやすいなどの危険なデメリットが多くなっています。今後の状況を考え、補助金制度も利用して介護の負担を軽減するバリアフリーリフォームを検討してみてはいかがでしょうか。

【ライタープロフィール】工藤アラタ

浴室のバリアフリー化は、「費用が高額になってしまうのでは......」と思う方も多いのではないでしょうか。

浴室は構造上、洗い場と浴槽にどうしても高低差ができてしまい、この段差が入浴を困難にする大きな原因になっています。また、狭い空間であること、水や石鹸で足場や手すりが濡れて滑りやすく、踏ん張りがきかないなどの危険も多くあります。
浴室内は、戸の開閉や移動、浴槽への出入り、水栓の開閉、洗体洗髪などの複雑な動作を行う場所でもあり、なるべくなら不安を解消し、使いやすい浴室を実現したいと考えるのは、多くの人の思いではないでしょうか。しかし、これらの問題点をリフォームですべて解決しようすると、確かにリフォームの費用は高額になってしまうことも。

自宅の浴室をバリアフリー化する場合は、現在の身体能力だけでなく、今後の状況にも対応できるリフォームをしなくてはなりません。そのために、将来、入浴介助が必要となった場合に、デイサービスなどの福祉施設への「通所入浴介護」を受けるのか、それとも自宅の浴室で入浴を介助してもらう「訪問入浴介護」を受けるのかを決めておきたいところです。
もしも通所入浴介護を受けるのであれば、自宅浴室に大掛かりな設備を導入するようなバリアフリーリフォームを行う必要はありません。こうした場合は、現在の浴室の危険を除去し、浴室内事故を予防するための措置が、浴室のバリアフリー化となります。

(引用)リフォーム・リノベーション事例 マンション 築30年~50年 M邸 No.342 事例詳細 浴室・バス 住友林業のリフォーム

浴室のバリアフリー化で行うべき8つのポイント

浴室断熱

高齢者の不慮の事故については、住宅内で発生しているケースがほとんどであり、転倒や誤嚥などに次いで多いのが「溺水」です。さらにこの溺水の原因の多くとなっているのが「ヒートショック」といわれる発作です。

ヒートショックは、急激な温度変化により、血圧が急上昇・急降下を繰り返し、心筋梗塞などの重大な発作を引き起こすものです。温度差を要因とする発作であるため、健康体であっても、高齢者の心臓には大きな負担がかかります。

これを防ぐのが浴室断熱です。浴室全体を保温し室温を下げにくくすることで、温度変化を抑え、ヒートショックを防いでくれます。

浴室暖房などの空調設置

浴室断熱と一緒に行いたいのが、浴室暖房の設置です。こちらもヒートショック防止のために必要な設備ですが、入浴が快適にできるための設備でもあります。
ヒートショック防止には、浴室の暖房はもちろん、洗面脱衣室も室温が下がらないような工夫が必要です。

浴槽の高さと種類

低くて浅い浴槽や、洗い場よりも少し低い位置に埋め込まれているタイプの浴槽は、比較的安全に移動ができます。また、浴槽自体も断熱・保温タイプのものを選ぶと、湯温の低下も防ぐことができます。

(引用)おすすめリフォーム設備 システムバス 住友林業のリフォーム

浴室の寸法

介護が必要な場合はもちろん、手すりを設置する場合は、洗体の際などに手すりに腕や、からだをぶつけない広さ、介護用の風呂イスが置ける広さが必要です。

住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)では、住宅性能表示基準法が設けられており、バリアフリーに関する住宅内の寸法などの基準は、『9-1高齢者等配慮対策等級』に定められています。
このなかで最も高い水準となる「等級5」の場合では、浴室の内径短辺は1,400mm以上が要求されています。つまり、四方の内径のどこか一辺でも1,400mmを下回る寸法だと、入浴介助などの動作に支障が出てしまうのです。

段差の解消

(引用)リフォーム・リノベーション事例 戸建て S邸 No.344 事例詳細 浴室・バス 住友林業のリフォーム

浴槽の段差以外にも、浴室出入り口の段差があります。ユニットバスなどの場合は、床の勾配によりスムーズに排水されることや、水はけのよい床材を使用しているため、浴室と脱衣室の段差をフラットにすることが可能です。引き戸のレールなども埋め込み式とすることで、つまずきの防止にもなります。

引き戸、もしくは折れ戸への変更

(引用)リフォーム・リノベーション事例 戸建て 築30年~50年 I邸 No.104 事例詳細 浴室・バス 住友林業のリフォーム

タイル張りなどの浴室の場合、浴室側へ押して開くドア(押し戸)が主流となっていました。これは、湿気を室内側へ入れにくくし、ドアに付いた水滴を脱衣室に落とさないためのものですが、現在では引き戸の気密性も向上しているため、押し戸とする必要はありません。
押し戸は、構造上どうしても間口の狭い開口寸法となってしまうため、浴室のバリアフリーには不向きとなるのです。

手すりの設置

風呂イスを使用する際や、浴槽の出入りの際に捕まることの出来る手すりを設置しましょう。ただし、狭い空間では、腕や頭をぶつけてしまうこともあるので、多く取り付けてしまうと動作の妨げになってしまいます。浴室の広さに合わせて、2~3か所の設置としましょう。

(引用)リフォーム・リノベーション事例 戸建て 築30年~50年 F邸 No.624 事例詳細 浴室・バス 住友林業のリフォーム

滑りにくい床

古い浴室の場合は、表面に光沢のある滑りやすいタイルを使用している場合も多くあります。たとえ手すりなどを設置しても、滑りやすい床では転倒を防止することはできません。
滑りにくい素材や水はけのよい構造、そして吸水率に優れた浴室用の床などを選びましょう。

介護保険によるリフォームの補助金制度

介護に関わる費用として、バリアフリーリフォームも介護保険による補助の対象となります。

介護保険によるリフォーム補助金額:最大20万円(そのうち1~3割を自己負担)

浴室のバリアフリー化は、面積や工事の内容を考慮すると、およそ100万円前後。大規模な工事は行わず、手すりの設置やドアや床材の取替えのみの工事でも、50万円程度の費用がかかります。そのため、補助金制度はぜひ利用したいところです。
介護保険によるリフォーム補助を受ける場合は、要介護者や要支援者が同居する世帯が対象です(※自治体によっては要介護認定を受けていなくとも、対象者となる場合があります)。

申請の際にはケアマネジャーの確認も必要となりますので、リフォームの内容についても、一度相談してみると良いでしょう。
バリアフリーを含め、断熱リフォームや耐震リフォームは補助金の対象となるものが多くありますので、お住まいの自治体にぜひ相談してみましょう。補助金の申請だけでなく、悪徳リフォーム業者による被害の防止などにもつながります。

まとめ

30年以上前の住宅の場合、浴室はタイル張りの湿式工法の浴室がほとんどです。この工法は、床材が滑りやすい素材であり、壁や床の下地もモルタルであるため、非常に硬く冷たい素材で出来ています。水に強いことや汚れにくいなどのメリットはありますが、段差が大きい、冷えやすい、滑りやすいなどの危険なデメリットが多いため、バリアフリー化には不向きな構造なのです。

現在の浴室のリフォームではユニットバスへの取替えがほとんどですが、バリアフリー化でも、やはりユニットバスへの取替えがおすすめです。高齢者だけでなく、小さな子どもや妊娠中の女性など、多くの人が利用しやすいよう、あらゆる危険を除去した構造がベースとなっています。手すりや段差の解消、滑りにくい床材や浴室暖房、ドアなどのバリアフリー設計はもちろん、断熱性能にも優れているため、ヒートショック対策にもつながるのです。

ユニットバスは工場で製造された製品を現場で組立てる工法ですので、工事日数が比較的短いというのも、リフォームにおいては重要な利点といえるでしょう。

ライタープロフィール

工藤アラタ

2級建築士

専門学校を卒業後、建設会社設計課に就職。
住宅やビル、工場、各種施設などの設計業務に携わる。
現在は飲食業の傍ら、フリーで建築図面作成やライター業を兼務。
建築以外に、旅行やアウトドアなどの趣味を通しての記事なども執筆。