健康のために。断熱リフォームを徹底解説

快適な生活のために知っておきたいリフォームの基礎知識「外壁断熱」とは

住まいのこれから

高い断熱性能を求める場合は「付加断熱」、コストを抑えたい場合は「充填断熱」、室内の意匠にこだわりたい場合は「外張り断熱」を選択することが、ひとつの指標と言えるでしょう。快適な環境を得るには、お住いの特徴や、求めている断熱性能に合った工法を選択し、結露対策も心がけて住まいの寿命を長く保つことが大きなポイントになるでしょう。

【ライタープロフィール】松野雄二

住まいのなかで、外気の影響を受けやすい部位のひとつが外壁です。特に都市部においては、住まいの快適性は外壁の断熱性能が大きく関わってきます。

今回は、外壁を断熱リフォームする際に知っておきたいポイントや注意点について解説していきます。

日本の住まいの断熱性能

現在の住まいが一般的にどの程度の断熱性能を持っているのか考えたことはありますか? 実は、国土交通省の統計によると、40年前の昭和55年に定められた最初の省エネ基準を満たしていない住宅は、全住宅約5,000万戸のうちの約4割を占めているとのこと。これは、日本には断熱性能を持たない住宅が、とても多いことを意味します。 現行の基準に近い、平成11年の省エネ基準を満たす住宅は全体の5%に留まっていることからも、日本では多くの人が断熱性能の低い住宅に暮らし続けていることがわかります。

国土交通省「既存住宅ストックの現状について 住宅ストック約5,000万戸の断熱性能|P17 住宅ストックの性能(断熱性)」の情報を基に作図

しかし、省エネ基準は年々高まっており、これにともない、断熱材の性能や窓の断熱性能は年々向上しています。現行基準の住まいとそうでない住まいとは、エネルギーの消費量に大きな開きが出ているのです。

国土交通省の調べでは、前述した無断熱の住まいと現行基準の断熱性能の住まいを比較すると、年間冷暖房費は約8万円もの差が出ることがわかっています。

国土交通省「住宅・建築物における省エネルギー対策について|P7 基準ごとの断熱仕様等の比較」の情報を基に筆者作成

このように住まいの断熱性能は快適性だけでなく、家庭の支出にも大きく関わってきます。そのなかでも、特に気を付けたいのが外壁の断熱性能です。

都市部ほど、壁の断熱性能が重要

壁の断熱を行う場合、断熱材を外壁と内壁の間に入れることになりますが、断熱性能は断熱材の厚みに比例して向上していきます。ただし、その分、壁に厚みが出るので部屋が狭くなってしまいます。 特に都市部は敷地の大きさに限りがあるため、壁を薄くして断熱性能を最低限とし、広さを優先する住まいも見られます。しかし、都市部の多くの住宅は建坪が小さいため、階数を多くしたり階高を高くしたりして、広さを確保する必要が出てくるため、建物の高さが高くなるぶん、外壁の面積が大きくなっていきます。結果、壁の断熱性能の影響を大きく受けることになるのです。 つまり、少しでも居住空間を確保したいがゆえ、広さを優先して断熱性能を犠牲にすると、住まいの快適性を大きく失うことにつながります。

わずかな広さと快適さ、どちらを取るか悩ましい選択ではありますが、後々の生活を考えると、しっかり断熱性能を確保したほうが賢明と言えるでしょう。どうしても壁を厚くしたくない場合は、薄い厚みでも断熱性能を確保できる高性能の断熱材を使うことで対処できます。

通気層・気密層を設けて結露を防ぐ

外壁の断熱リフォームで大切なのは断熱材だけではありません。断熱性能をしっかりと維持するためには、通気層・気密層を設けることが大事になります。

通気層とは断熱材の屋外側に設けて空気を通す層、気密層とは断熱材の屋内側に設ける防湿シートの層です。これらがない場合、室内の湿気が壁に侵入し、壁の中で結露してしまいます。水分が壁の中に入ると断熱材の性能低下を引き起こすだけでなく、柱や梁といった躯体(くたい)を腐らせるおそれがあり、そうなると建物の耐久性が低下し、耐震性能も低下してしまいます。

図)筆者作成

しかし、屋内側に気密層があれば、室内の水分が壁の中に侵入しづらくなります。万が一、湿気が侵入して水分が発生した場合も、通気層があればその水分を屋外側に排出することができ、壁の中に水分が留まることを防げます。
このように断熱リフォームを行う場合、断熱材の入れ替えに加え、結露対策をしっかり行わないことには、断熱効果を十分に発揮させることができません。

さまざまな壁の断熱方法

木造住宅で使用される断熱方法には、大きく分けて3つの方法があります。それぞれの工法について、メリットとデメリットを解説します。

図)筆者作成

充填断熱

最も多くの住まいで採用されているのが「充填断熱」です。
充填断熱とは、柱と柱の間の隙間にグラスウール、ロックウールなどの断熱材を充填する工法です。そのうえで、屋外側に通気層、屋内側に気密層を設けるのが一般的な方法です。

メリットは、柱と柱の間に断熱材を入れるため、空間を広く活用できます。施工も容易なので、最も安価に断熱できる工法と言えます。また、外壁材は下地に直接支持させることができるので、外張り断熱のように重量による制約がなく、比較的自由に外壁材を選択できます。

デメリットは、柱間に断熱材を充填するため、柱や梁などの部分で断熱材が途切れてしまうことです。木材部分は断熱材部分より断熱性能が劣るため、柱や梁の部分から冷たい外気が侵入する、ヒートブリッジ(熱橋)という現象を起こします。木材は比較的熱を伝えにくいので鉄骨造ほど大きな心配はないものの、断熱材と比べると弱点になる部分でもあります。
また、コンセントや換気の配管などにより気密層の防湿シートが切り欠くことになるので、そうした部分はシートの補修を行うなど、気密を維持するための工夫が必要です。

引用)住友林業のリフォーム「旧家リフォーム現場

外張り断熱

柱や梁の外側にボード状の断熱材を張り付ける工法です。断熱材は外壁材の下地と一緒に専用のビスで固定されます。

メリットは、柱の外側に断熱材を張り付けるため、充填断熱のようにヒートブリッジが起こることがほとんどありません。また、柱の外側に気密層となる気密シートを設けるので、コンセントなどによる気密層の欠損が起こらず、容易に気密を確保できます。断熱材を外側に施工するので、屋内側は柱や梁を露出させ、素材感を出した空間にできることも外張り断熱の魅力でしょう。

一方、デメリットは、断熱材を厚さに限界があることです。厚くしすぎると断熱材と外壁の下地を留め付けているビスが耐えられず、外壁が垂れ下がってしまうおそれがあります。また、ビスに負担がかかる工法のため、外壁材は軽い材を選ぶ必要があり、充填断熱と比較すると外壁材の選定に制約があります。さらには、充填断熱で採用されるグラスウール等の断熱材に比べ、外張り断熱で使用する発泡プラスチック系のボード状断熱材はコストがかかることも、知っておくとよいでしょう。

付加断熱

充填断熱の柔軟性を生かしながら、ヒートブリッジの弱点を解決した工法が付加断熱です。充填断熱と同様にグラスウールなどの断熱材を柱の外側に充填し、さらにその外側にボード状のグラスウールを張り付ける工法です。外張り断熱とほぼ同程度のコストながら、より断熱性能の高い壁をつくることができます。

まとめ

大きく3つに分類される断熱工法を解説しました。リフォームの場合は予算や求める断熱性によって工法を選択することが大切です。

高い断熱性能を求める場合は「付加断熱」、コストを抑えたい場合は「充填断熱」、室内の意匠にこだわりたい場合は「外張り断熱」を選択することが、ひとつの指標と言えるでしょう。また、部屋ごとに工法を選択することも考えられます。たとえば、リビングなど長時間を過ごす部屋には付加断熱、トイレや廊下などが短時間使用する部屋は充填断熱にするなど、予算を考慮しながら重要度に合わせて断熱材を選択するのもよいでしょう。

お住いの特徴や、求めている断熱性能に合った工法を選択し、結露対策をしっかり施した断熱リフォームを心がけることが、住まいの寿命を長く保ちながら、快適な環境を得る大きなポイントです。

ライタープロフィール

松野雄二

一級建築士

建築設計事務所で公共建築、商業施設、住宅等を担当し、独立。現在、住宅・リノベーション・店舗などの設計監理を行っている。