二世帯リフォームを徹底解説

嫁姑の関係は良好に保てる? 完全同居でストレスを減らすための二世帯リフォームとは

住まいのこれから

同居のストレスを最小限に抑えた二世帯住宅にするのなら、「部分共有型」や「完全分離型」の間取りがおすすめです。同居は親世帯の助けが得られるメリットもありますが、可能な範囲で世帯間の分離をしてトラブル・ストレスの減少を目指し、快適な同居生活を送りましょう。

【ライタープロフィール】工藤アラタ

結婚、持ち家の購入、妊娠・出産、家業を継ぐためなど、親世帯との同居はタイミングもきっかけもさまざまです。このほか経済的な理由や親の老後の心配などを理由に、これから先の同居を考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし、自分の親や子との同居はともかく、結婚相手の親や、婿・嫁との同居となると、「家族になじめないのでは?」「自分の時間やリラックスできる時間は取れるの?」といった人間関係やプライバシーの問題が、大きなハードルとなり、不安や心配が芽生えてくることもあるでしょう。

同居のストレスを最小限に抑えた二世帯住宅にするのなら、「部分共有型」や「完全分離型」の間取りがおすすめです。これらは世帯ごとに独立したタイプのため、同居のトラブルとなりうるプライバシーや過干渉、家事の問題などを解消してくれます。しかし、予算や住居面積の関係でこうした間取りにすることが難しい場合は、同居の問題点をどう解消していけるのかが、同居生活をうまく送る大きなポイントになるでしょう。

今回は、「完全同居型」の二世帯住宅をメインに、同居によるストレスの解決方法を住宅リフォームの面からご紹介していきます。

同居によるストレスのいろいろ

同居のストレスは、どの世帯にも共通した問題点が多く見られます。たとえば、以下のようなものです。

食事

味付け、米の炊き加減、「朝食はパンかご飯か」「お祝いは洋食か、和食か」など好みの違い。食事の量や野菜と肉のバランス。食事の時間。

お金問題

リフォーム費用の負担額、食費・光熱費・水道代などの使用量や支払い。

生活習慣

お互いのこれまでの「当たり前」が理解できない/理解してもらえない。

設備の共有

食事担当以外の家族がキッチンを使いにくい。
浴室の順番や入浴時間などで気を遣う。
設備の掃除や道具の手入れ方法、片付けなどを思うようにしてもらえない。

家族の目が気になる

風呂上がりや寝起きのラフな格好や薄着のとき。
授乳や着替えなど、男女関わらず人の目に触れたくないとき。

過干渉

食事やお金問題、生活習慣や子育てなどに口を挟みすぎる、手を出しすぎる。

これらのすれ違いやストレスに対し、夫や妻が守ってくれない/味方をしてくれないなど、パートナーからのフォローがないことも家族関係のトラブル要因になってしまうようです。

完全同居のストレスを減少させる間取り

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

世帯間の境界が明確でない完全同居型の二世帯住宅においては、その間取りが同居のストレスに大きく影響します。プライバシーや自分たちの時間を守るためにはどんな工夫が出来るでしょうか。

生活リズムをあえてずらす

食事や就寝時間を無理に合わせると、生活や体調のバランスが崩れてしまうだけでなく、「合わせてあげているのに」といった不満になってしまう原因にもなります。
帰宅時間などに大きく差がある場合は、食事はあえて一緒にとらず、世帯ごとに入れ替え制にしてしまうというのもひとつの手段です。1度に利用する人数が少なくなることで、ダイニングの省スペース化にもつながるでしょう。ただし、誰かひとりだけがメインで料理当番をする場合、キッチンの所有権が偏りがちになってしまいます。家族全員がいつでも使いやすい状態に保ち、なおかつ誰かが長時間使用しないなどの工夫が必要です。

リビングを別々にする

食後のリラックスタイムや休日の過ごし方、観たいテレビ番組なども、世帯間で違ってきます。また、世帯間や嫁姑間の人間関係が良好であったとしても、老夫婦・若夫婦それぞれにゆっくり過ごすことができる時間は必要でしょう。
家のなかで過ごす時間の多くをそれぞれのリビングとすれば、身だしなみなどの気遣いをしなくても済むため、気持ちの開放感も得られます。

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

寝室などプライバシー性の高い部屋には鍵を設置する

鍵を設置することは、着替えや授乳時などの無防備な状態のときの安全性を保障するものでもあります。見られたくないものなども安心して置いておけることや、小さな子どもが勝手に物を持ち出せないようにすることにも役立つでしょう。

家事を分離させる

家事の分担や負担が偏ったり、お互いのやり方に不満があったりする場合もトラブルになりかねません。こうしたトラブルを回避するには「それぞれのことはそれぞれでやる」という方法が簡単です。しかし、洗濯機やキッチンを共有する場合は、世帯別に使用する時間帯のスケジュールを決めておく必要があります。また、物干しなど長時間の使用が前提の物は、2カ所に分けて設置するなどの工夫が必要でしょう。

間取りではゾーニングを大切に

一般的な住宅では、リビングや水まわりなどの「動」のゾーンと、寝室などの「静」のゾーンを分けて設計されることが多くなっています。完全同居の場合は、さらに親世帯と子世帯のゾーンをなるべく分けることが理想でしょう。
簡単なゾーニング方法は、1階と2階で親世帯・子世帯を分けることです。1階をキッチンや浴室などの水まわり&親世帯のリビング・居室とし、2階を子世帯のリビング・居室とする方法です。また、平屋などの場合は、住居の中心にキッチンや水まわりなどの共有スペースを配置し、左右にそれぞれのリビングや居室を振り分けるなども良いでしょう。それぞれの居室をなるべく離すことで、境界を明確にできます。

意外と楽かも!? 同居のメリットあれこれ

完全同居にはデメリットが多いイメージもあります。しかし、実際に二世帯同居をしている女性にとっては、「同居をして良かった」「助かっている」といった意見も多くあるようです。

日経BPコンサルティング「働く既婚女性と二世帯同居に関するアンケート P11」の情報を基に作図

日経BPコンサルティングが行ったアンケートによると、「家族が増えいつも誰かがいる安心感が増した」「安心して仕事に集中できるようになった」「子育ての負担が減った」など、子世帯にとっては、親世帯の助けが得られるメリットが多くみられます。仕事と育児を両立する女性にとって、身近にいる親の存在は、まさに"心強い味方"と言えるでしょう。

生活面では親世帯に思い切って甘えてしまうというのも、同居生活を円滑にするうえで役に立つようです。家族の助けを最大限に取り入れ、仕事と育児の両立に生かすことを考えたとき、同居のメリットはより有効化するでしょう。

また、同居後の嫁姑関係についても、多くの回答者が「良好な関係にある」と回答(※)しています。
関係がもともと良好ではない家族や友好的なふるまいをしない家族のあいだでは、そもそも最初から同居を考えていなかったり、同居自体を諦めていたりするはずです。つまり、同居を希望する家族や同居に至った家族は、お互いの助けが必要だと判断した結果の生活様式だと言えるのではないでしょうか。

ただし、人間関係が概ね良好な同居世帯にとってもやはり、同居においてのプライバシー性の評価は低いようで、ここにはお互いの歩み寄りや工夫を必要とするようです。

まとめ

完全同居型においても、リフォームの間取りやプランニングで重要なのは、「世帯ごとのプライバシーが守られること」です。同居のストレスの多くは、自分の行動に制限があること、自由がないことなどが原因となっています。これらの問題点の多くは、「完全同居においては不可避である」と言えるでしょう。

また、結婚相手の家族と同居する場合は、子ども以外の家族の全員が血縁関係のない他人であり、生活習慣も違います。こうした環境において重要なのは、相手やストレスと上手く付き合っていくことでしょう。そのためには問題点を無くそうとするのではなく、トラブルやストレスを少なくする方法が効果的です。
最も簡単なのは、世帯間で顔を合わせる時間や関わる範囲、共有するものを限りなく少なくすることです。キッチンや浴室、リビングを共有する完全同居型での生活のなかでは、なかなか難しいことですが、可能な範囲で世帯間の分離を目指すことが、ストレスの減少につながるでしょう。

※日経BPコンサルティング「働く既婚女性と二世帯同居に関するアンケート」 P14
https://consult.nikkeibp.co.jp/common/images/news/2012/1228ys/release20121228.pdf

ライタープロフィール

工藤アラタ

2級建築士

専門学校を卒業後、建設会社設計課に就職。
住宅やビル、工場、各種施設などの設計業務に携わる。
現在は飲食業の傍ら、フリーで建築図面作成やライター業を兼務。
建築以外に、旅行やアウトドアなどの趣味を通しての記事なども執筆。