二世帯リフォームを徹底解説

完全分離型二世帯リフォームのメリット・デメリット~変化する生活様式と、自由な暮らしに寄り添った同居のかたちとは~

住まいのこれから

同居における最大のデメリットであるプライバシー性とストレスを最小限に抑えることのできる分離型二世帯住宅は、同居でありながらも両世帯の自由な時間を最大限に確保できます。しかし設備費がかさみ、コストが高くなる傾向がありますのでメリットとデメリットを家族と話し合うことが大切です。

【ライタープロフィール】工藤アラタ

近年は共働きの世帯が多く、出産・育児休暇後に職場に復帰する女性も少なくありません。育児中の女性の有職率は、わずか5年前と比べても増加しており、こうした世帯に対応した住宅・ライフスタイルがいま、求められています。

総務省「平成 29 年就業構造基本調査」P2の情報を基に作図

出産後も職場に復帰する、または家事・育児と両立できる職に新しく就くという就業形態は、いまとなってはごく普通のことでしょう。妻の早期の職場復帰を目指す世帯や、長期の育児休暇が取れない世帯のなかには、家事や育児の助けとなってくれる人がどうしても必要となる場合も。
その点、「二世帯住宅」での暮らしは、すぐそばに手助けをしてくれる家族がいることが最大のメリットです。

二世帯住宅にはいくつかのタイプがあります。今回はそのなかでも最もプライバシー性の高い、「完全分離型」の二世帯住宅についてご紹介します。

完全分離型二世帯住宅の特徴

「完全分離型」の二世帯住宅は、マンションやアパートに近い構造となっています。同じ屋根の下にあっても、世帯間で完全に分離された間取りが特徴です。

eBASE 50代からのリフォーム読本P11,12

二世帯住宅にはこの完全分離型のほかに、「完全同居型」と「部分共有型」があります。完全同居型は、キッチン・浴室・ダイニングなど全てを共有しますが、部分共有型は、玄関(またはその他一部)のみを共有し、キッチン・浴室・ダイニングは世帯間ごとに別々に設置します。

完全分離型二世帯住宅は、玄関、ダイニングキッチン、浴室、電気・水道(メーターも別)など、すべての設備をそれぞれの世帯ごとに設置するのが一般的です。食事や家事、入浴など生活のすべてを別々にすることができ、基本的には別居に近い環境となります。

完全分離型のメリット・デメリット

同居をするうえで完全分離型の二世帯住宅では、さまざまなメリットがあります。

食事がそれぞれの時間帯、それぞれのタイミングでできる

子世帯が夫婦共にフルタイムで働いている場合、帰宅時間によっては食事が遅い時間帯になる傾向にあります。また、帰宅後に食事の支度を始めるとなると、用意できる内容、分量には限界があるでしょう。若い世代は食生活も欧米化しており、親世帯とは食の好みに大きな違いがあることも考えられます。
食事は健康を保つうえでも重要なものであり、もちろん親世帯にとっても大切なものです。食事の時間や内容を両世帯で合わせることは、予想以上に大変なことが想定されます。それぞれが無理なく生活するうえで、キッチンが別々あることは大きなポイントでしょう。

お風呂の順番待ちの時間が少なくすむ

お風呂の使用は夜の短時間に集中しやすく、大人数で共有する場合は順番にもかなり気を遣わなくてはなりません。お風呂に入りたいタイミングなどにも融通が利きにくく、最後に入浴する人はかなり遅い時間になってしまうことも。こうした入浴にまつわるストレスも、完全分離型とすることで軽減されます。

プライバシー性が高く、同居のストレスが少ない

完全分離型の場合、共有するのは玄関までのアプローチと門扉しかありません。住宅内においては、玄関先で顔を合わせる程度のかかわりしか無く、必要最低限の交流になります。
家のなかのこともお互いノータッチで生活できるため、育児の手助けや介護の必要の無い世帯、同居にあまり積極的でない世帯にも受け入れられやすくあります。

(引用)リフォーム事例  住友林業のリフォーム

一方、デメリットとしては、「設備費がかさみ、コストが高くなる」ことが挙げられます。キッチン、ユニットバス、トイレなどの設備がすべて両世帯分必要になるため、設備機器費用が高額になるためです。
さらに、完全分離型では電気メーターなども分離するのが一般的です。メーターを分離することにより、設備費と工事費も二世帯分になります。メーターをひとつにまとめてしまえば、工事費や基本料金は一世帯分で収まりますが、契約アンペア数が大きくなってしまうので、基本料金は上がってしまいます。また、使用電気量で世帯間に差が出てしまうと、トラブルの元になりかねません。
メーターを分離させると二世帯分の基本料金が発生してしまいますが、完全分離型においては、こちらのほうがおすすめです。

もうひとつデメリットを挙げるとするならば、「世帯間のコミュニケーション頻度が少ない」ことではないでしょうか。
子育てや介護の助け合いをする場合は特に、常にお互いの生活状況や健康状態を把握できる環境が必要です。日常的に顔を合わせ会話をする機会がある同居型とは違い、お互いが積極的に交流していく必要があります。

完全分離型における世帯間の距離は、メリットであり、デメリットでもあると言えるでしょう。

現代の生活スタイルに寄り添う分離型二世帯住宅

厚生労働省「平成30年国民生活基礎調査|P6(平成28年)の結果からグラフでみる世帯の状況」の情報を基に作図

現在は、単独世帯や夫婦のみの世帯が増え、核家族化が進んでいます。同居には、プライバシーの不安、相手への気遣い等によるストレスが少なからずあり、いまの時代では敬遠される傾向にあるのかもしれません。子世帯においては、育児や生活に関する親の過干渉なども気になるのかもしれません。

しかし、近年では、親世帯側も同居の不安やストレスから同居を望まない場合も多くなってきています。子世帯の育児や生活面での面倒をみることに時間を取られすぎて、自分たちがゆっくり過ごすことができないのでは、という考えもあることでしょう。

高齢者の趣味や娯楽も近年多様化しており、そうした時間にかける自由な時間が親世代にも必要とされています。

このように、定年後のスローライフを自分たちの充実した時間にしたいと考える親世帯にとっても、子世帯との分離は、大きなメリットとなるのです。

まとめ

家を継ぐ、ということが昔ほど重要視されていない現代において、同居はしなければならないものではなくなりました。それよりも、個人の権利やプライバシー、社会的立場などが尊重されるようになり、固定観念にとらわれない家族の在り方が増えてきているように思います。それでも、費用面や生活の助け合いといった同居のメリットは、現代社会においても一考に値するものではないでしょうか。

同居における最大のデメリットであるプライバシー性とストレス。これらを最小限に抑えることのできる分離型二世帯住宅は、同居でありながらも両世帯の自由な時間を最大限に確保できます。同居自体に消極的な家族がいる場合などには特におすすめしたい住まいかたといるでしょう。

ライタープロフィール

工藤アラタ

2級建築士

専門学校を卒業後、建設会社設計課に就職。
住宅やビル、工場、各種施設などの設計業務に携わる。
現在は飲食業の傍ら、フリーで建築図面作成やライター業を兼務。
建築以外に、旅行やアウトドアなどの趣味を通しての記事なども執筆。