災害で頼りになるのは"遠い親戚より近くの隣人!防災で大切な「互近助」

住まいのこれから

従来から、地域防災には「自助」「共助」「公助」の三助が重要だといわれてきました。「被害者にならず、加害者にならず、傍観者にならず」の気持ちで、避難したら元気な人は避難所で掃除を手伝うなど、助け合いましょう。

【監修】山村武彦(やまむら・たけひこ)

いつなんどき、どこで大地震が起きてもおかしくない日本列島。
日ごろから備蓄品を用意したり、避難経路を確認したりと、個々で備えておくべきことはたくさんあります。
しかし防災とは備えたり逃げたりするだけでなく、"闘う防災"も必要だと言うのは、防災システム研究所 所長の山村武彦さんです。
山村さんは、災害時の被害を抑えるために大切な考え方として「互近助」を提唱しています。
「互近助」とは何か、山村さんにお伺いしました。

発災時、頼りになるのは"遠い親戚より近くの隣人"です

従来から、地域防災には「自助」「共助」「公助」の三助が重要だといわれてきました。

  • 自助...自分自身を守ること
  • 共助...地域で助け合うこと
  • 公助...警察、消防など公的機関が助けること

しかし地震発生直後は、みな被災者。役所も被災しているかもしれないし、公助が行き届くには時間がかかります。

だからこそ、発災時、自分の身の安全を確保できた元気な人は、そこに踏みとどまって闘うことも必要なのです。

そこで大切なのが「互近助(ごきんじょ)」という考え方。
「互近助」とは、昔あった隣組のような、向こう三軒両隣の「ご近所同士が積極的に助け合うこと」です。

1995年の阪神・淡路大震災を例に挙げます。
この地震では、家屋などの倒壊でなくなった方が大半を占めました。
神戸市消防局が神戸市民850人に行ったアンケートによると、阪神・淡路大震災で救出・救助に当たったのは「近所の者」と答えた人が60.5%と圧倒的に多く、次いで家族18.9%、救助隊2.4%という結果になりました。
約80%の人が、近所の人や家族に助けられているのです。

一方、亡くなった方のうちの92%が地震発生から14分以内に亡くなったっていたことが分かっています(兵庫県警監察医調べ)。
つまり、早く助けないと助からないということです。それができるのは、近くにいる人だけです。近所の人の力と救助の迅速さが、いかに大切かということが分かるデータです。

「助ける」というのは実際に手を伸ばして人命を救うことだけではありません。
安否確認をしたり、避難をするときに声をかけたりすることも「互近助」です。
近所に体の不自由な人や高齢者、病気の人がいれば、気にかける。
また、自身が高齢者だったとしても、要救助者の代わりに助けを求めたり通報したりすることはできます。
そうやって隣近所でお互いを助け合うことが、防災・減災につながります。

また、避難先でも助け合いの精神が大切です。
発災直後の一般的な避難所のスペースは1人約1畳、トイレは50人に1台です。
清掃が行き届かなかったり物資が不十分だったりする状況での生活は想像を絶するものがあり、避難所で亡くなる方も多くいらっしゃいます。阪神・淡路大震災では3か月で919人の方が亡くなり、震災関連死と認定されました。

避難所は避難した人の自治運営で成り立っています。
防災はモラルです。「被害者にならず、加害者にならず、傍観者にならず」の気持ちで、避難したら元気な人は避難所で掃除を手伝うなど、助け合いましょう。

なお、こうした避難所での生活をしないためには、平時から災害に備えておくことが重要です。家が安全であれば避難所に避難しなくても自宅で避難生活を送ることができます。
家の耐震診断を行って不十分であれば補強をする、水や食料、燃料などを備蓄する、家具を固定するなどしましょう。これからは逃げる防災だけでなく、安全な家に住む(する)防災が大切です。
基礎にひびが入っている、実はシロアリが発生しているなど、我が家が実際どのような状態にあるのかは、自分たちではわかりません。リフォーム会社などに相談し、耐震診断は10年に一度の目安で行うことをおすすめします。

互近助を円滑にするための、隣人と仲良くする10のコツ

ご近所との良い関係は、一日にしてなるものではありません。
その時になって、隣人の顔を知らない、隣家に何人が暮らしているか分からない...とならないように、普段からほどよい距離感で気持ち良い挨拶が交わせるように、隣近所との良い関係を構築することが大切です。
隣人と仲良くするコツを、以下の10か条にまとめましたので、ぜひ取り組んで、防災のためにもよりよい関係を気づいてください。

隣人と仲良くする10か条

  1. 挨拶は、肩の力を抜いて、先手必勝(相手の挨拶を待たず、気づいたほうが先に言う)
  2. 挨拶は、前向きの言葉に笑顔を添える(明るい笑顔が、相手の笑顔を誘う)
  3. 敬意を持ってほどよい距離感(親しき中にも礼儀あり、プライバシーに深入りしない)
  4. 自慢しない、嫉妬しない、比べない、噂話はしない(コミュニティに上下無し、陰口・悪口は言わない)
  5. 褒めるより感謝する(上から目線で褒めない、その存在を認め、感謝し、敬意を払う)
  6. 相手の嫌がることはしない、言わない(自分がされて嫌なことはしない、言わない)
  7. 困った時はお互い様(つらいときや苦しいときは隣人や行政に助けを求める。隣人でもできる範囲で対応)
  8. いざというときはためらわずに声をかける(向こう三軒両隣に声をかけ、安否確認、避難は一緒に)
  9. 地域行事に積極参加(祭り、盆踊り、清掃、冠婚葬祭などできる範囲で積極参画)
  10. できる人が、できることを、自分のために(安心まちづくりは、自分の心地よい居場所づくり)

~『災害に強いまちづくりは互近助の力~隣人と仲良くする勇気~』(山村武彦著)より~

監修

山村武彦(やまむら・たけひこ)

防災システム研究所 所長

1943年、東京都出身。
1964年新潟地震でのボランティア活動を機に、防災・危機管理のシンクタンク 「防災システム研究所」を設立。以来50年以上にわたり、 世界中で発生する災害の現地調査を実施。多くの企業や自治体の防災アドバイザーを歴任し、BCP (事業継続計画)マニュアルや防災マニュアルの策定など、災害に強い企業、社会、街づくりに携わる。実践的防災・危機管理の第一人者。著書は、「災害に強いまちづくりは互近助の力 ~隣人と仲良くする勇気~」(ぎょうせい)、「南三陸町 屋上の円陣 - 防災対策庁舎からの無言の教訓」(ぎょうせい)、「NHKまる得マガジン 家族を守る!現場に学ぶ防災術」(NHK出版)、「新・人は皆『自分だけは死なない』と思っている」(宝島社)など多数。