医療保険の選び方は? 老後の必要額までFPが解説します

お金・資産のこれから

医療保険は健康状態と年齢により保険料が設定されており、健康状態が悪化した場合には、医療保険に加入できない、または保険料が通常より高くなるおそれがあります。健康な若いうちに加入しておくと、保険料負担が安く済みます。老後の医療保険料の負担を減らしたいなら、なるべく早く加入を検討するとよいでしょう。

【ライタープロフィール】FPかぴさん

老後の医療保険は必要でしょうか? 不要でしょうか?
誰しも一度は検討したことのある「医療保険」。あると安心ではあるものの、年金生活になってからの保険料の支払いは負担も少なくありません。

今回は、老後の「医療保険は必要か否か」という観点から、日本の医療費の現状や健康保険の仕組みなどを解説します。「老後の医療保険を準備すべきかどうか」の検討材料となれば幸いです。

超高齢化社会である日本の医療費の現状

世界一の超高齢社会である日本。65歳以上の人口割合が全人口の21%を占めている社会を、「超高齢化社会」といいますが、日本のその比率は2020年時点で28.7%。世界で見てもダントツで高いのが特徴です。

総務省「報道資料 統計トピックス No.126 統計からみた我が国の高齢者(令和2年9月20日発表)」を基に作図

高齢化社会の一因となっているのは平均寿命の長さです。しかし、日本人の健康寿命は、実はあまり長くはなく、女性が74歳、男性が72歳となっています。健康寿命と比べ、女性は12.35年、男性は8.84年も短いことが下記の図から分かります。

内閣府「平成30年版高齢社会白書|2 健康・福祉」の情報を基に作図

高齢になると医療費もかさみます。平成30年度のひとり当たりの生涯医療費は2,700万円。このうち50%が70歳以上にかかる費用です。

厚生労働省ホームページ「生涯医療費(男女計)(平成30年度推計)」から引用

このことからも分かるとおり、平均寿命のわりに健康寿命は思ったよりも短く、高齢になるほど医療費もかさんでいきます。これが日本の医療費の現状です。

健康保険の仕組みと変遷

日本は「国民皆保険制度」を導入しています。万が一、病気になったときに備えて国民全員でお金を出し合い、医療にかかる費用の一部または全部を出し合ったお金から拠出する、というのがその仕組みです。

この国民皆保険制度は、時代に合わせて形を変えています。人口推移の高齢化を背景に日本の医療費総額は増加の一途をたどっており、健康保険料の見直しや自己負担額の増加が顕著です。

厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書 資料編|保健医療」、総務省「報道資料(令和2年9月20日)|統計トピックス No.126 統計からみた我が国の高齢者」の情報を基に作図

上記を背景に高齢者の医療費の自己負担は無料から徐々に引き上げられ、2000年に定額から定率1割に、2002年に現役並み所得者を2割とする改正が行われました。その後、2008年からは後期高齢者医療制度が導入され、70歳未満の医療費負担は3割、前期高齢者といわれる70~74歳は2割(現役並み所得者は3割)、後期高齢者といわれる75歳以上は1割(現役並み所得者は3割)となって、いまに至ります(※1)。

厚生労働省ホームページ「医療費の自己負担」を基に作図

高齢者の医療費は年々増加すると見られており、これにともなって高齢者の自己負担率も上がることが予想されています。

高額な治療費がかかるのは「ガン」

「先進医療」という言葉を聞いたことはありませんか。先進医療とは厚生労働省が認可した「高度の医療技術を用いた療養」を指します(※2)。
この名のとおり、保険適用の治療よりも先進性が高く、高度の医療技術を用いるため、治療効果が高かったり副作用が少なく済んだりとメリットの多い治療です。その代わり、治療費全額が自己負担であり、健康保険が使えません。つまり、治療費が非常に高額になります。

この先進医療対象の治療が多いのは「ガン」です。ガンの先進医療治療の代表的なものとして「重粒子線治療」「陽子線治療」が挙げられます(※2)。それぞれの治療費は下記のとおりです。

厚生労働省「令和元年6月30日時点における先進医療Aに係る費用 令和元年度実績報告(平成30年7月1日~令和元年6月30日)」を参考に筆者作成

先進医療を受けたいとなった際には自分で全額負担するか、保険会社が販売している医療保険に加入する等でカバーするしかないのが現状です。

高額な治療費には「高額療養費制度」を利用しよう

「高額療養費制度」とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(1~月末日)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給するというものです。医療費がかさんでしまっても国が負担してくれる便利な制度であり、高齢者に限らず全年齢が利用できます。そのため、高額な治療費を払えず治療を受けられないという状況が避けられます。なお、自己負担の上限額は下記のとおり、年齢と収入によって決まります。

▼69歳以下の上限額

▼70歳以上の上限額

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ|P.4,5 」を基に作図

この高額療養費制度を利用するうえで、2つ注意点があります。ひとつは、入院時の食費負担や差額ベッド代、先進医療にかかる費用等は含まれないこと、もうひとつは、69歳以下の場合はひとつの医療機関での自己負担額が2万1,000円以上であることです。たとえば30歳(年収約370~約770万円)の男性が同じ月に下記の治療費を要したとします。

B病院とC病院の治療費はそれぞれ2万1,000円以下のため合算できません。高額療養費の対象となるのはA病院の7万円のみです。しかし、この男性の自己負担上限額は上記の表にあてはめて計算すると約9万円になるので、高額療養費制度は使えません。

高額療養費制度は便利な制度ではありますが、どんなときでも頼れる制度ではないことを知っておきましょう。

医療保険も検討しましょう

日本は「国民皆保険制度」を導入しており、1~3割の自己負担でよいこと、高額療養費制度を使えることもあり、基本的には自己負担額はあまり高くありません。しかし、今後は高齢者の自己負担割合は増えていくことが予想されるため、現状の制度が続く保証はありません。
また、ガンをはじめとする特定の病気では、先進医療を勧められることもありますが、高額療養費制度や健康保険は対象外になるため、全額自己負担となります。先進医療を勧められた際に、お金の心配から治療を受けることができないという状況も考えられるのです。

このようなときに役に立つのが、保険会社が販売する「医療保険」です。医療保険は各保険会社の約款所定の入院や手術、先進医療等の治療を受けた際に給付金を受け取ることができます。国でカバーしきれない治療費を医療保険でまかなうことができるのです。

まとめ

医療保険は健康状態と年齢により保険料が設定されており、健康状態が悪化した場合には、医療保険に加入できない、または保険料が通常より高くなるおそれがあります。また、高齢者の場合、年齢によっては制限がかかり加入を断られるケースもあります。その一方、健康な若いうちに加入しておくと、保険料負担が安く済みます。老後の医療保険料の負担を減らしたいなら、なるべく早く加入を検討するとよいでしょう。ただし、医療保険には掛け捨ての商品が多く、一切病気にかからなかった場合、それまでかけてきた保険料は戻ってこないことがほとんどです。返戻金のないことが「絶対に嫌」という場合には、別途老後の医療費の備えとして貯蓄をしていく必要があります。

医療保険か、貯蓄か、どちらを選ぶのかは個人の自由ですが、どのような制度があり、どのくらいの費用がかかるのかを理解しておくことは、今後の医療費を備えるうえで判断材料のひとつとなるはずです。

参考文献/参考サイト

※1 厚生労働省「先進医療の概要について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index.html

※2 国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ「放射線治療の種類と方法」
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/rt_03.html

ライタープロフィール

FPかぴさん

AFP取得

フリーランスのライターとして活動中。
得意分野は保険と保険に関わる社会保障制度について。
自身でも「FPかぴさんのお金のはなし」というブログを運営中。
複数のメディアでコラムを執筆する1児の母。FP上位資格のAFP取得済み。