万が一のために知っておきたい 現役世代でも受け取れる「障害年金」の仕組み

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「障害年金」は、病気やケガで障害を負い、生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の人も含めて受け取ることができる年金です。いつ、どんな病気に罹患してしまうかわからない時代では障害年金の基礎知識を学んでおきましょう。

【執筆者】續 恵美子

病気やケガに対する公的保障は、健康保険だけだと思っていませんか? 実は、病気やケガで生活や仕事が制限されるようになった場合には、障害年金からお金を受け取れるケースもあります。
公的年金制度からの支給されるものとして、老齢年金や遺族年金の概要は知っている人も多いのですが、障害年金は認知度が低いようです。

そこで今回は、障害年金の概要や支給条件、支給額などについて説明します。知っていれば、いざという時に頼りになるかもしれません。

障害年金は公的年金の保障のひとつ

20歳以上のすべての人が加入を義務づけられている公的年金。月々納付する年金保険料は、「老後に年金を受け取るため」と思っている人が多いと思われます。たしかに、私たちの老後生活を支える大切な公的年金ですが、実は公的年金からの支給は老齢給付だけに限られているものではありません。

そもそも日本の公的年金制度の基本的な目的は、「所得保障」です。所得の喪失または減退などの事情があれば、高齢者に限らず現役世代の人に対しても障害給付や遺族給付として支給されます。公的年金の給付には大きく分けて3種類あり、簡単にまとめてみると次のようになっています。

▼公的年金の給付の種類

老齢年金

障害年金

遺族年金

高齢になったときに受け取る年金

  • 老齢基礎年金
  • 老齢厚生年金

重度の障害を負ってしまったときに受け取る年金

  • 障害基礎年金
  • 障害厚生年金

一家の大黒柱が亡くなった時に遺族が受け取る年金

  • 遺族基礎年金
  • 遺族厚生年金

厚生労働省「教えて!公的年金制度 年金はどのようなときに受け取れるの?」を参考に筆者作表

このうち、「障害年金」は、病気やケガで障害を負い、生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の人も含めて受け取ることができる年金です。

障害年金がもらえるのはどんな状態?

上の表にあるように「重度の障害」と聞くと、障害年金は身体が不自由になった人が受け取る年金というイメージを持ってしまうかもしれません。しかし、実は病気やケガで長期療養が必要となり、仕事や生活が著しく制限を受ける状態になったときに、その状況に応じて支給されるものであり、がんや糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、精神の障害など多くの病気が障害年金の対象となります。

障害年金が支給される障害の程度として、「国民年金法施行令」および「厚生年金保険法施行令」で障害等級(1~3級)が次のように定められています。

障害等級

障害の程度

1級

"身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめ、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度。"

たとえば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできない、または行ってはいけない。

例)病院内の生活で、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られる

例)家庭内の生活で、活動の範囲がおおむね就床室内に限られる

2級

"身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加え、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難。労働により収入を得ることができない程度。 "

たとえば、家庭内の軽い活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできない、または行ってはいけない。

例)病院内の生活で、活動の範囲がおおむね病棟内に限られる

例)家庭内の生活で、活動の範囲がおおむね家屋内に限られる

3級

"労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度。"

障害手当金

"「傷病が治ったもの」であって、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度。"

日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準/第2 障害認定に当たっての基本的事項」をもとに筆者作表

なお、障害を負った部位や疾患の種類によっては、より具体的に基準が定められているものもあります。たとえば、眼の障害では障害等級に応じた視力基準があり、1級では「両眼の視力の和が0.04以下」などが設けられています。一方、呼吸器疾患、心疾患、がんなどの内部疾患は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療および病状の経過、年齢、具体的な日常生活状況などにより総合的に認定される仕組みです。

自治体が発行する障害者手帳の障害等級とは連動しておらず、また、障害者手帳を持っていなくても障害年金を受給できるケースがあることは知っておくといいでしょう。

障害年金が支給される要件は?

障害年金が支給されるためには、上記で紹介した障害等級に認定される以外にも、次の2つの要件を満たすことが必要です。

初診日

障害年金を請求しようとする病気やケガで、初めて医療機関を受診した日が初診日です。障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」がありますが、初診日に国民年金と厚生年金のどちらに加入していたかによって受給できる障害年金が決まります。
初診日が国民年金加入中であれば障害基礎年金のみ、厚生年金保険加入中であれば障害基礎年金と障害厚生年金が対象となります。

ちなみに、20歳前に初診日がある場合、初診日時点で公的年金の被保険者ではなくても、20歳に到達したときに(初診日から1年6カ月経過していること)障害等級1級または2級に該当していれば障害基礎年金が支給されます。

保険料納付要件

初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていなければなりません。

  1. 初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間のうち2/3以上、保険料が納付または免除されていること
  2. 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に対象となる初診日がある場合には、納付要件は問われません。

障害年金はいくらもらえる?

障害年金を受給できる額は、障害等級および加入している年金制度によって異なります。
先に障害の程度と障害等級について紹介しましたが、障害基礎年金は1~2級に該当する場合、障害厚生年金は1~3級に該当する場合に支給されます。

加入している年金制度と受給できる障害年金の関係は次の図のようになります。

日本年金機構「障害年金ガイド(令和2年度版)

障害基礎年金は老齢基礎年金と同様に定額が定められています。

障害基礎年金(令和2年度の額)
 1級:97万7,125円(78万1,700円×1.25)
 2級:78万1,100円

生計を維持する子がいる場合、子の加算があります。第2子までは1人当たり22万4,900円、第3子以降は1人当たり7万5,000円です。

障害厚生年金

報酬比例方式といって、標準報酬月額、標準賞与額、厚生年金加入期間によって年金額が計算される仕組みです。計算式はかなりややこしいのですが、大まかな年金額は把握できるよう、シンプルにした計算式を紹介します。

報酬比例の年金額(2級の額)=A+B
 A:平均給与月額 × 12 × 0.7% × 2003年3月までの加入月数
 B:平均年収 × 0.55% × 2003年4月以降の加入月数

※AとBの加入期間を合わせて300月(25年)未満の場合、300月(25年)として計算する最低保障があります。

1級の場合、上の計算式で算出された額の1.25倍の金額になります。3級に該当する場合も、上記計算式(報酬比例の年金額)で算出することになります。ただし、1級、2級は障害基礎年金も同時に受給できますが、3級は障害基礎年金が対象外となります。そのため 3級の障害厚生年金には最低保障額が設定されており、令和2年度の最低保障額は58万6,300円となっています。
また、障害厚生年金では生計を維持する配偶者がある場合、配偶者加給年金額が加算されます。配偶者の加算額は22万4,900円です。

障害手当金

障害手当金は厚生年金に加入している人のみ対象となる手当金です。厚生年金に加入しているあいだに障害の原因となった病気やけがの初診日があり、かつ障害厚生年金を受けるよりも軽い障害の状態であるため、障害年金を受給できない場合に一時金が支給されるというものです。
一時金の額は、上の計算式で算出された額の2倍相当額です。

障害手当金を受ける場合にもいくつか要件を満たす必要がありますが、国民年金よりも厚生年金のほうが幅広くカバーされているのは、老齢年金や遺族年金と同様です。

受給の際に注意したいこと

ここまでの説明で、障害年金についておおよそのイメージをつかんでいただけたでしょうか。いつ、どんな病気に罹患してしまうかわからない時代では障害年金の存在は経済的に心強いものだと思います。

日常生活に支障をきたしたり、健康な人のように働けず、働き方に制限が加わったりするといっても、障害等級に認定されるかどうかは自分だけでは判断できません。しかし、さまざまな状況から総合的に判断されることを知っておけば、医師の診察を受ける際にも日常の状態をしっかり伝えたり、申請にトライしたりできるかもしれません。

ところで、障害年金は老齢年金とは異なり、終身受給できるものではありません。傷病によっては「永久認定」されることもありますが、症状が良くなったり悪くなったり変化する傷病については、定期的に診断書を出すことが必要です。これにより、障害の状態が悪くなっていて年金額が増額される場合もあれば、状態が改善されていて年金額が減額または打ち切られる場合もあります。
病気が快復することは喜ばしいことですが、これまで受給していた障害年金がなくなることで、家計に影響が及ぶ場合もある、という独特の仕組みも理解しておくべきことです。

障害年金のことをよく知らず、受給していない人も多いと聞きます。もしもの経済リスクに対し、今回紹介した障害年金の基礎知識を参考にしていただけると幸いです。

執筆者

續 恵美子

ファイナンシャルプランナー(CFP®)

生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。