高齢で物忘れがすすむ親の資産管理、どう考える? 特殊詐欺対策は?

お金・資産のこれから

高齢の親の金銭トラブルを避けるため、何より大切なのは本人と家族で常にコンタクトを取り、お金の動きの状況を見える化しておくことだと筆者は考えます。親の意見も尊重しつつ、最近の社会の状況などに関する情報を伝えてあげるのもいいでしょう。

【執筆者】續 恵美子

認知症まではいかなくても、高齢になると物忘れが増えるのはよくあることです。財布をどこかに置き忘れる、というようなお金まわりの物忘れも聞きます。

小さなことから大きなことまで物忘れの程度や状況は人それぞれですが、親がお金のトラブルに巻き込まれるのは避けたいものです。自分の親には関係ないと思わずに、まずは高齢者に多いお金関連のトラブルにはどのようなものがあるか確認しておきましょう。

この記事では、家族が知っておきたい金銭管理のサービスや注意点などを紹介します。事前に親子でお金の管理についての対策を考えてみましょう。

こんなことに注意! 高齢者のお金のトラブル

「うっかり財布をどこかに置き忘れる」「うっかり買った物を持ち帰るのを忘れる」「うっかりATMの無料時間帯を忘れて、手数料を取られてしまう」――これらの事象に対し、身に覚えがある人は少なくないと思います。恥ずかしながら、筆者自身にもこのような経験はあります。

年齢に関係なく、「うっかり」物忘れで金銭的に損をしてしまうことはあるものです。しかし高齢になってくると、その頻度が増したり、金額が大きくなったり、「うっかり」のレベルを通り越してしまうこともあるようです。

実際、60歳以上の人のお金のトラブルが増えています。独立行政法人国民生活センターの発表によると、契約当事者が60歳以上の人の相談は、2018年度は約43万件。これは、過去10年で最高です。相談全体に占める60歳以上の割合も約49%と増加傾向にあります

独立行政法人国民生活センター 報道発表資料(令和元年9月12日)「60歳以上の消費者トラブルが40万件を突破!-トラブルの現状を知って、被害を防ぎましょう-」の情報を基に作図

相談内容は、「情報通信関連の相談」「通信販売に関する相談」「訪問販売」「電話勧誘販売によるトラブル」など、さまざまですが、なかでも最も多く寄せられている相談は「架空請求」に関するトラブルです(※1)。
身に覚えがない請求ではあっても、「何か契約したような、してないような......」とうろ覚え状態のまま、お金を払ってしまう人もいるのではないでしょうか。

年齢に関係なくうっかり忘れてしまうことがあるのは冒頭でも述べましたが、歳を重ねてくると心配なのは認知症の疑いでしょう。物忘れは認知症の初期症状であるとも言われ、症状の進行にともなって判断能力は徐々に変化していくとも言われています。

家族にとっては親の状態について判断するのが難しいところですが、お金の損失は未然に防げるに越したことはありません。親の行動で少しでも不審に思う点があれば、対策を考えてみましょう。

どうする? 親のお金の管理

お金のトラブルを防ぐためには、親にお金を持たさなければよい、親に代わって家族が手続きをすればいい、と考える人もいるかもしれません。しかし、銀行の窓口で取引を行う際には本人確認書類を提示する必要があります。これは銀行に、本人確認書類をチェックし、取引の目的や、本人の職業を確認することが法律で義務づけられていからです。原則として本人からの委任状がなければ、家族であっても預金引き出しなどの依頼には応じてくれません。
その前に、親を心配する気持ちからではあっても、本人の行動を制限するようなふるまいは、自尊心を傷つけることにもなりかねません。

そこで知っておきたいのが、高齢者の資産管理サービスです。家庭で管理することも可能ではありますが、公的、私的サービスのいくつかを紹介しておきます。どのような対策を取るのがよいか、親子間で話し合う際の参考になさってください。

1.同行や委任状で対応する

買い物に行く、ATMや金融機関の窓口でお金を下ろす、振込みをするといった場合に、家族が同行して一緒に取引きをする方法があります。また、銀行や保険会社の取引きなどは、本人が記載した委任状を持って家族が代わりに行く方法があります。同行したり、依頼を受けたりすることで、本人にとっては意思が尊重され、また家族にとっては本人の行動をつかみやすいというメリットがあります。
一方で、実際に同行や委任状で対応している家族にとっては、その都度、本人の同意や直筆の委任状を得ることに負担を感じている人も少なくないでしょう。同行や代行などの支援が頻繁に必要になれば、そのぶんの負担も大きくなることが考えられます。

2.銀行の信託サービスを利用する

高齢化にともない、高齢者の資産を管理するための金融機関のサービスも増えてきています。そのうちの1つが「資産継承信託」です。これは、「万一に備えて資金を銀行等に預入れ、あらかじめ設定した条件のもと本人や家族がお金を引き出せるようにしておくサービス」のこと。なお、金融機関によって、商品名や具体的なサービス内容、取引条件などは異なります。

引き出しできる家族や使途をあらかじめ設定しておくことで取引行での手続きもスムーズにできます。逆に、設定外の条件、使途が不明な引き出しなどは制限されるため、詐欺や使いすぎといったトラブル防止につながるメリットがあります。

3.日常生活自立支援事業のサポートを利用する

社会福祉協議会では日常生活自立支援事業として、「日常的金銭管理サービス」を実施しています。
これは、福祉サービスや医療費の利用料金、税金や保険料、公共料金、家賃の支払い手続きや預金の出し入れなどをサポートしてくれるサービスです(※2)。
専門の生活支援員がサポートしてくれるので、家族の負担は軽減されるでしょう。

また、これらの日常的なお金のやりとり以外にも、年金証書、通帳、権利書、実印などを預けることができる「書類等預かりサービス」もあります。大切な資産を管理してくれるのは安心でしょう。

利用対象者は認知症の診断を受けていない人や障害者手帳を取得していない人も含まれますが、判断能力が十分でないなどの条件があります。また、利用は有料であり、各市町村で利用料の設定基準が異なります。気になる人は、お住まいの市町村の社会福祉協議会へ問い合わせてみましょう。

4.成年後見制度を利用する

認知症などで判断能力が不十分になり、契約締結や財産管理を行えなくなった場合には、「成年後見制度」を利用することもできます。

「成年後見制度」とは、家庭裁判所が選任した成年後見人が、本人に代わって契約などの法律行為をしたり、本人がよく判断ができずに行った不利益な法律行為を後から取り消したりすることができる制度です。

成年後見人は本人の親族がなることもありますが、法律・福祉の専門家その他の第三者や福祉関係の公益法人、その他の法人が選ばれる場合があります。誰が選ばれる場合でも、成年後見人は家族本人の利益を考えながらお金の管理や契約の締結、解約などを行うのが任務ですから家族としては安心でしょう。

成年後見制度を知っておきましょう

成年後見制度をもう少し詳しく解説します。成年後見制度には、大きく分けると「法定後見」と「任意後見」の2つがあります。
「法定後見」は、すでに判断能力が不十分な場合に、家庭裁判所に選任された後見人が財産を管理するものです。一方の「任意後見」は、本人の判断能力があるうちに、将来への備えとして後見人となる人を自ら事前に決めておくものです。

法務省「成年後見制度~成年後見登記制度~」の情報を基に作図

まだ認知症ではないけれども、物忘れが多くなってきて先々が心配というような場合には、資産を守るための対策のひとつとして、後者の「任意後見」の手続きを行っておくのもいいでしょう。

ただし、前述したように、成年後見人は家庭裁判所が選任し、また財産の管理は後見人の権限となります。
仮に、後見人の管理方法について家族の意向が反映されない場合でも、その後見人を家族の意向で交代、除外することは難しくなります。なぜなら、選任された後見人は法務局に登記されるからです。
また、任意後見人の申立てには費用がかかること、後見人には報酬を払う必要があることも知っておかなければなりません。

▼任意後見契約公正証書作成に必要な費用

公正証書作成の基本手数料

1万1,000

登記嘱託手数料

1,400円

登記所に納付する印紙代

2,600円

その他

本人らに交付する正本等の証書代、登記嘱託書郵送用の切手代など

法務省「成年後見制度~成年後見登記制度~(Q&A17)」を元に筆者作表

また、後見人への報酬は、管理が必要となる財産額にもよりますが、基本報酬として月額2万円程度が目安とされています(※3)。申立てをする前に、管轄の家庭裁判所に確認するようにしてください。

事前に家族で話し合いを

今回、高齢の親の金銭トラブルを避けるための対策をいくつか紹介しましたが、何より大切なのは本人と家族で常にコンタクトを取り、お金の動きの状況を見える化しておくことだと筆者は考えます。年金、生活費、税金支払といった親の収支の状況や、預貯金、保険、不動産などの財産状況を表にまとめ、家族でオープンにしておくのがおすすめです。

そのためにも、もしも判断能力が低下した場合、日常生活や医療・介護などにかかるお金の管理をどうするのかを、事前に家族全員でしっかり話し合っておきたいものです。親の意見も尊重しつつ、最近の社会の状況などに関する情報を伝えてあげるのもいいでしょう。
今回紹介した対策法を参考にしていただきつつ、もしもの場合の対策をぜひ親子で考えてみてください。

※1 独立行政法人国民生活センター「報道発表資料 令和元年9月12日付『60歳以上の消費者トラブルが40万件を突破!-トラブルの現状を知って、被害を防ぎましょう-』」
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20190912_1.pdf

※2 内閣府「日常生活自立支援事業の概要」
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2016/225/doc/20160614_shiryou2_6_2.pdf

※3 東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/file/0102.pdf

執筆者

續 恵美子

ファイナンシャルプランナー(CFP®)

生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。