50代から気をつける病気。予防・対策

年をとると手が震えるのはなぜ? 高齢者に多い「振戦」の原因と対処法

50代から気をつける病気。予防・対策

手の震えを年のせいと考えてしまう方は意外と多いのですが、加齢だけが原因ではなく、病気や普段飲んでいる薬の副作用などが考えられます。対処するためには、まずは原因を知ることが大切です。震えの原因によって適切な診療科に紹介してもらうようにしましょう。

【ライタープロフィール】遠藤愛

年齢が高くなると、手の震えを気にされる方が少なくありません。
手の震えによって日常生活に支障を感じるだけでなく、「箸使いも気になるし、コップの水をこぼしてしまわないかと不安で外食できない」「人前で字を書いたり食べたりするのが怖い」など、社会生活にまで影響を及ぼすことがあります。また、病気のサインとして手の震えが現れることもあり、年のせいと簡単に片付けるのは危険です。

今回は、そんな手の震えでお困りの方に向けて、震えの原因や対処法について解説します。

手の震えが起こる4つの主な原因

からだの一部が震えることを、医療用語では「振戦(しんせん)」と呼びます。振戦は、自分の意思と関係なく一定のリズムで繰り返される動きのことで、その原因は主に以下の4つに分けられます。

原因1:生理的な震え

寒さや緊張など、周囲の環境や心理的要因によって起こる震えです。これらは一時的なものであり、誰にでも起こりうる症状です。

原因2:原因がはっきりしない震え

検査をしてもこれといった病気がなく、原因がはっきりしないタイプの震えです。
手の震えのなかではもっとも多く、交感神経の過剰な興奮が影響していると考えられています。(※1) 特定の姿勢や動作によって震えが起こるのも特徴です。

原因3:病気の症状としての震え

手の震えを症状とする代表的な病気に、パーキンソン病やバセドウ病があります。ほかにも小脳障害や脳卒中の後遺症として現れることもあります。

原因4:薬の副作用による震え

持病の治療薬の副作用で、手の震えを生じることがあります。

手の震えは病気のサイン? 考えられる病気とは

手の震えを症状とする代表的な病気のひとつが、パーキンソン病です。
厚生労働省によると、パーキンソン病患者は国内に約16万人いるとされ(※2)、下記グラフのとおり、高齢になるほど発症者の多い病気です(※注 推計患者数:調査日当日に、病院、一般診療所、歯科診療所で受領した患者の推計数)。

e-Stat 政府統計の総合窓口「平成29年患者調査」の情報を基に筆者作成

パーキンソン病の特徴として、じっとしているときに生じる安静時振戦があり、動くことで震えは消失します。振戦以外の症状として、動作の緩慢さ・前屈み姿勢・小刻み歩行などが見られるのも特徴です。

そのほか、ある特定の姿勢で震えが生じる「姿勢時振戦」を特徴とする病気に、バセドウ病があります。バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、それによってからだの新陳代謝が異常なほど活発になり、振戦、心拍数増加、血圧上昇、動悸、発汗などの症状が特徴です。

一方で、手の震えを起こすような病的要因がなく、原因のはっきりしない「本態性振戦」があります。これは、手の震え以外の症状がなく、パーキンソン病やバセドウ病のように多彩な症状が現れるタイプとは異なります。
実は、手の震えの多くは本態性振戦だと言われており、症状が悪化したり麻痺を起こしたりすることのない(あまり心配のない)タイプがほとんどなのです。

このように、手の震えには特に問題のないものから何らかの病気のサインとして現れるものまでさまざまです。「年のせい」で片付けてしまうと、重篤な病気に気づかないおそれがあり、大変危険です。

受診科はどこ?

手の震えが気になっていても、「こんなことで病院を受診してもいいの?」と考える方もいるのではないでしょうか。しかし、「手先の細かい作業ができない」「人目が気になって外食をしたくない」など、生活の質の低下や引きこもりにつながるおそれもあることから、症状が気になる場合は、ぜひとも病院にかかりたいところです。
まずは、手の震えを専門的に診てくれる「脳神経内科」を受診し、全身に異常がないか診察・検査を受けるようにしましょう。

手の震えの治療は、原因に対する薬物療法が基本です。パーキンソン病やバセドウ病であれば、それらの病気に対する治療薬が処方され、医師の指示のもと服薬治療を続けます。

本態性振戦の対処法

病的要因がないタイプの手の震え(本態性振戦)を軽減するため、日常生活で気をつけるべき習慣・対処法をご紹介します。

睡眠・リッラクスで交感神経をコントロールする

本態性振戦は、緊張やストレスで交感神経が過度に興奮することが要因だと言われています。
睡眠やリラックスで心身を休めると交感神経の高ぶりが抑えられ、手の震えを落ち着かせることにつながります。

手の震えを気にしすぎない

手の震えは感覚的にも視覚的にも自覚しやすく、どうしても気になるのは仕方のないことです。しかし、必要以上に気にしすぎるのは禁物です。ストレスでイライラしたり、気分的に落ち込んだりすると、症状が余計に悪化することもあります。「そのうちに落ち着く」と気持ちに余裕を持って向き合うようにしましょう。

不便さを解消する工夫を

たとえば、コップを持つ手が震えて水をこぼしてしまう方は、コップに注ぐ量を少なめに調整したり、ストローを使用したりしましょう。こうした工夫が不便さを解消するとともに、不安をやわらげることにつながります。

事前に「手が震えて困っている」ことを伝える

「水をこぼすかもしれない」「書類の記入が上手くできないかもしれない」など、不安や緊張が強くなるほど手の震えは起こりやすくなります。事前に周りの人に手の震えのことを伝えておけば、必要以上に緊張することも少なくなるでしょう。

「年のせい」とあきらめず、専門家に相談しましょう

手の震えを年のせいと考えてしまう方は意外と多いのですが、加齢だけが原因ではなく、病気や普段飲んでいる薬の副作用などが考えられます。もっとも多く見られる本態性振戦の場合、過剰なストレスや緊張が症状を悪化させることもあります。

手の震えに対処するためには、まずは原因を知ることが大切です。はじめは脳神経内科に相談し、震えの原因によって適切な診療科に紹介してもらうようにしましょう。
病気が原因の振戦であれば、その病気を治療することで手の震えも改善できることがあります。
日常生活では手の震えを気にしすぎず、なるべくリラックスすることを心がけながら、上手に向き合っていきましょう。

【出典元】

※1 一般社団法人 日本臨床内科医会「本態性振戦 震えが起きるメカニズム p.8」
https://www.japha.jp/doc/byoki/024.pdf

※2 厚生労働省「平成29年患者調査(傷病分類編)p.33」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/dl/h29syobyo.pdf

ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。