50代から気をつける病気。予防・対策

「最近ごはんがおいしくない」と感じたら要注意! 高齢者に多い味覚障害とは?

50代から気をつける病気。予防・対策

味覚障害は加齢によって現れやすい症状ではありますが、食事が楽しめないだけでなく病気の心配もあるなど、決して軽視できない問題です。味覚の変化を感じたり、家族から味付けの変化を指摘されたりしたら、味覚異常を疑い、医療機関に相談するようにしましょう。

【ライタープロフィール】遠藤愛

年を重ねると、「食事がおいしいと感じない」「以前よりも食が細くなった」「何を食べても味がしない」など、味覚の変化を訴える方が少なくありません。これらの症状が現れる背景には、「年齢のせい」「味の好みの変化」だけでは片付けられない健康問題が潜んでいる場合があります。

今回は、シニア世代の味覚障害をテーマに、味覚の変化・異常が起こる原因や健康への影響、対処法について解説します。

味覚障害はなぜ起こる?

味覚障害の原因はいくつかあります。加齢もそのひとつです。年を重ねるとあらゆる身体機能が低下します。味覚の感じ方も例外ではなく、味覚障害はシニア世代に多いトラブルだと言われています。

味覚障害の原因について詳しく説明する前に、まずは私たちがどのように味を感じるのかを簡単に理解しておきましょう。

私たちは食べ物や飲み物を口にすると、甘味・酸味・塩味・苦味などの味覚を刺激として受け取ります。この刺激をキャッチするのが「味蕾(みらい)」と呼ばれる器官で、舌の表面や軟口蓋(上あごの奥の軟らかい部分)、のどの奥などに存在します。そして、味蕾から神経を伝わって脳に情報が届くと「味」を感じる仕組みです。

つまり、私たちが味を感じるためには「味蕾」「神経」「脳」の働きが必要であり、どれが欠けても味覚を正常に保つことはできないのです。

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味覚の変化は老化現象のひとつですが、ほかにも味覚障害の原因として次のようなものがあります。

  • 偏食による亜鉛・ビタミンB群の不足
  • 鉄欠乏性貧血
  • 糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病
  • 脳腫瘍・顔面神経麻痺・パーキンソン病など脳神経系の病気
  • 持病の治療薬による副作用
  • 不安やストレス
  • ドライマウス
  • 喫煙

特に多いのが、亜鉛不足や治療薬の副作用による味覚障害です。亜鉛は、味蕾の新陳代謝に欠かせない栄養素で、偏った食生活や腎機能の低下によって血液中の亜鉛濃度が低下します。また、薬の副作用によって亜鉛の吸収が抑えられる、唾液の分泌が低下する等から味覚障害を起こすこともあります。代表的なものに、降圧剤、胃潰瘍治療薬、抗うつ薬、抗生物質、抗がん剤があります。複数の薬を服用している方は注意が必要です。

味覚障害を起こしやすい人の特徴

味覚障害の原因として、食生活、ストレス、生活習慣病が挙げられることからもわかるように、その背景には普段の生活が深く関係しています。以下の状態に当てはまる人はいませんか? これらは、味覚障害になるリスクが高いと言われています。

  • 食事が不規則で栄養バランスが偏りがちだ
  • 長年の不摂生によって糖尿病や腎臓病を患っている
  • 複数の薬を服用している
  • 加齢や薬の副作用で口の中が乾燥している
  • ヘビースモーカーである
  • 強いストレス・うつ症状がある

舌表面の粘膜や味蕾を健やかな状態に保つには、亜鉛・鉄・ビタミンなどの栄養素が必要ですが、偏った栄養バランスの食事では、これらの栄養素が十分に補給できません。また、代表的な生活習慣病である糖尿病は、合併症である神経障害や亜鉛不足によって味覚障害を発症することがあります。ストレスやうつは、それ自体が味覚障害を起こすのではなく、自律神経の乱れや抗うつ薬の服用によって唾液の分泌が低下することが原因です。
味覚の変化を感じている方は、まずは普段の生活習慣を見直すことから始めてみましょう。

「年のせい」では片付けられない、味覚障害の弊害

味覚の変化は高齢者にはよくある症状と考えられていることもあり、程度が軽ければ「年のせい」と深刻に捉えていない方がいるかもしれません。しかし、食事をおいしく食べることは生活の質を上げるだけでなく、健康を維持するうえでも重要です。年のせいと軽く考えず、味覚障害によって起こり得る弊害について理解しておきましょう。

食べられないストレス

食事の味を感じない、苦味を感じるなどの味覚異常は、食事を楽しむことができず、食事そのものがストレスとなります。また、買い物や料理が億劫になる、人付き合いが減るといった社会生活への支障も出てきます。

生活習慣病の発症・悪化のリスク

味覚の低下によって塩味や甘味の強いものを好んで食べていると、高血圧、肥満、糖尿病などの生活習慣病を招く原因になります。糖尿病や慢性腎臓病では亜鉛欠乏に陥りやすく、味覚障害による食生活の偏りやストレスが病状を悪化させることもあるため注意が必要です。

低栄養になるリスク

味覚障害によって食事が苦痛になり、食事量が減る、特定のものしか口にしない状態が続くと、栄養バランスの偏りから低栄養を招きます。低栄養では体力・免疫力が低下し、感染症や病気にかかりやすくなります。

隠れた病気に気付かない

味覚障害の影に、脳腫瘍や腎臓病といった重篤な病気が潜んでいることもあります。程度が軽いからと放置せず、医療機関に相談することが大切です。

味覚障害があるときの食事の工夫

味覚障害が起こると食事に楽しみを見いだせず、むしろ「食べなければ」というプレッシャーからストレスを感じやすくなります。一時的であれば「食べられるものを無理のない範囲で」という考え方でも構いませんが、それが長期間続くとなると栄養面が不安です。

ここでは、なるべく栄養バランスの整った食事内容で、味覚障害があっても食事を楽しむための工夫をご紹介します。

味付けを工夫する

味覚が低下すると、つい塩味や甘味の強い味付けになってしまいますが、からだのためには塩分・糖分控えめの食事を心がけたいものです。そんなときは、出汁をしっかりとり、旨味や香りを楽しみましょう。お酢や柑橘系の食材を使用して、酸味を加えるのもおすすめです。

見た目を工夫する

食事は、味だけで楽しむものではありません。料理の盛り付けを工夫する、お気に入りの食器を使うなど、料理をおいしく見せる工夫をしてみましょう。

亜鉛・鉄・ビタミンB群の多い食材を利用する

普段から栄養バランスの整った食事を心がけることが大切ですが、味覚に異常を感じたら、以下の表を参考に、亜鉛・鉄・ビタミンB12を積極的にとるようにしてください。

亜鉛を多く含む食材(※1)

牡蠣、鶏肉、豆類、ナッツ類

鉄分を多く含む食材(※2)

豚や鳥のレバー、カツオ、アサリ、小松菜など

ビタミンB12を多く含む食材(※3)

牛レバー、鶏卵、牛乳、鶏肉など

味覚の異常を感じたら早めの対策・治療を

味覚障害は加齢によって現れやすい症状ではありますが、食事が楽しめないだけでなく病気の心配もあるなど、決して軽視できない問題です。味覚の変化を感じたり、家族から味付けの変化を指摘されたりしたら、味覚異常を疑い、医療機関に相談するようにしましょう。

【出典元】

※1 厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業|eJIM 亜鉛」
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/12.html

※2 厚生労働省「eヘルスネット|貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-008.html

※3 厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業|eJIM ビタミンB12」
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/07.html

ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。