50代から気をつける病気。予防・対策

自粛生活や災害時に気をつけたい「生活不活発病」とは?

50代から気をつける病気。予防・対策

「生活不活発病」とは、その名のとおり「動かない」状態が続くことで生じる症状です。生活不活発病を予防し、症状を改善するためには、活発な生活を行うことが欠かせません。新しい生活様式を意識しつつ、日々の生活を楽しみながら活動量を増やすようにしましょう。

【執筆者】中西 真理

新型コロナウイルス感染症の影響で環境が一変し、「外出や趣味を楽しむ時間が減ってしまった」という方もいることでしょう。しかし、日々の活動量が減り、積極的にからだを動かす機会が減少すると、「生活不活発病」になるおそれがあります。

「生活不活発病」とは、その名のとおり「動かない」状態が続くことで生じる症状です。生活不活発病になると、歩くなど軽い動作すら困難になったり疲れやすくなったりして、からだが動きにくくなってしまいます。それがさらに「動かない」状態へとつながり、からだだけではなく、こころの状態にも悪影響が生じて、最終的には動けなくなってしまいます。

生活不活発病は、日常生活が大きく制限される災害時に多発することが知られています。
新型コロナウイルス感染症流行にともなう自粛生活や、それに続く「新しい生活様式」においても生じるおそれがあります。特にシニア世代は生活が不活発になりやすく、生活機能の低下にもつながりやすいため、早めの対策が必要です。

今回は、「動かないこと」が心身に与える影響と、新しい生活様式のなかでも実践できる生活不活発病対策について解説します。

生活不活発病の原因のひとつは、「することがない」ということ

生活不活発病は、高齢者や持病のある人に起きやすい症状ですが、心身の機能低下が直接の原因ではありません。「社会参加する機会の減少」「生活活動の質(自立度)の低下」「生活活動の量の低下」など、さまざまな環境変化が生活不活発病の原因となります。

ここでは、自粛生活や新しい生活様式の中で生活不活発病の原因となりうる環境変化を、例をあげながら説明します。

社会参加する機会の減少

感染症対策のために外出が制限されると、趣味や地域での交流が少なくなり、ボランティア活動なども制限されるため、社会参加の機会が減少します。また、外出自粛の影響で家族が家にいる時間が増えると、今までこなしていた家事が思うようにできなくなったり、分担が減ったりすることもあります。人によっては、同居の家族に遠慮して自室にこもりがちになることもあるでしょう。
このように社会参加する機会が減ると、日中にすることがなくなり、動かない状態から生活不活発病を起こすリスクが高まります。

生活活動の質(自立度)の低下

自粛生活や新しい生活様式にともない人々の行動が制限されると、生活に不自由さが生じることがあります。たとえば、デイサービスやリハビリセンターなどの利用が制限されると、からだを動かす機会が減って、生活活動の質(自立度)が低下するおそれがあります。また、ホームヘルパーの訪問回数が減り、依頼していた家のなかの掃除や整頓ができなくなると、居室の状態が悪くなり、屋内での移動が困難になることもあります。
こうして動く機会が減ったり動くことが困難になったりすると、生活活動の質が低下して、生活不活発病を招くおそれがあります。

生活活動の量の低下

社会参加する機会が減少し、生活活動の質が低下すると、生活活動の量も低下してきます。また、スポーツジムなどで新型コロナウイルスの感染が広がった例もあることから、運動する場所や機会を失ってしまった方もいるでしょう。しかし、生活活動の量が低い生活は、まさに「動かない」生活そのものです。このような生活を続けていると、生活不活発病が発症しやすくなります。

以上のように、「社会参加する機会の減少」「生活活動の質(自立度)の低下」「生活活動の量の低下」は、いずれも生活不活発病の原因となるものです。しかし、それぞれが独立してリスクになっているわけではなく、互いに影響しあって生活不活発病を発症させ、悪化させる関係にあります。

厚生労働省「「生活不活発病」と「生活機能低下の悪循環」(3)」の情報を基に作図

生活不活発病の症状は、からだだけではなく、こころにもあらわれます

生活不活発病になると、からだが動きにくくなる、動けなくなるだけではなく、うつ状態や周りへの無関心など、こころの状態が不安定になることもあります。そして、ひとつの症状だけではなく、いくつもの症状が同時に少しずつ進行して、日常生活での動作がしにくくなっていきます。

▼生活不活発病で生じる症状(例)

症状の表出先

症状例

からだの一部

  • 関節が硬くなり動かしにくくなる
  • 筋肉がやせて筋力が低下する
  • 骨がもろくなる
  • 皮膚が萎縮して関節などの動きを妨げる
  • 褥瘡(床ずれ)
  • エコノミークラス症候群

全身

  • 心臓や肺の機能低下
  • 立ちくらみ
  • 食欲不振や便秘
  • 脱水

精神・神経

  • うつ状態
  • 知的な行動をしなくなる
  • 周囲に無関心になる
  • 自律神経が不安定になる(イライラする・眠れないなど)
  • 姿勢の維持、運動のコントロールが困難になる

筆者作成

上記に該当する症状がなくても、ささいなことから発症することも考えられます。

現在の自身の状態を知っておきたい、という方は、厚生労働省が作成した「生活不活発病チェックリスト」を活用するとよいでしょう。
こちらは、2016年の熊本地震の際に作成されたものです。「地震前」を「新型コロナウイルスの流行前」に置き換え、生活活動量の低下の有無を確認し、該当するものがあれば、生活の内容を見直すようにしましょう。

生活不活発病は、予防も回復も可能です

生活不活発病を予防し、症状を改善するためには、活発な生活を行うことが欠かせません。とはいえ、やみくもに筋力アップを目指したり、無理な運動をしたりすると、からだに負担がかかってしまいます。新しい生活様式を意識しつつ、日々の生活を楽しみながら活動量を増やすようにしましょう。

社会参加の維持

社会参加を維持するために、家族以外の人とも交流するようにしましょう。しかし、いまは、感染症対策の観点から人と直接会ったり、ふれあったりすることは難しいため、オンライン通話やスマートフォンのテレビ電話機能などを使うことをおすすめします。互いの顔を見て会話を楽しめば、孤独感やストレスを感じにくくなります。

生活活動の質(自立度)の維持

何らかの不自由がある場合は、できないことをあきらめるのではなく、できないことをできるようにする工夫を試みましょう。たとえば、歩きづらいからといってすぐに車イスを利用するのではなく、4点杖(安定性の良い多脚杖)やシルバーカーなどを利用してからだを動かすようにすると、自立度の高い生活を維持できます。

生活活動の量の維持

無理のない範囲でからだを動かすようにしましょう。運動は、簡単な体操や軽い散歩がおすすめです。また、自宅にいるときは、横になる時間や座っている時間をできるだけ減らすようにしましょう。積極的に家事をするのも活動量を増やす方法のひとつです。
新しい生活様式のもとであっても、毎日を楽しみ、生きがいを持って過ごせば自然と活動量は増えるものです。生活不活発病を予防・改善するために、充実した日々を過ごすようにしましょう。

執筆者

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬学修士。

医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。