50代から気をつける病気。予防・対策

突然死の原因として多い「虚血性心疾患」 生活習慣を改善し上手に予防しよう

50代から気をつける病気。予防・対策

狭心症や心筋梗塞に代表される虚血性心疾患は、生活習慣病のひとつです。普段から規則的でストレスを溜めない生活を心がけ、健康状態を良好に維持するようにしましょう。万が一感じたことのない胸の痛みや、普段とは違う息苦しさ・動悸などの違和感を覚えたら、早めに医療機関を受診するようにしてください。

【ライタープロフィール】遠藤愛

日本人の死因第2位(※)である心疾患は、心臓にまつわる病気の総称です。心疾患のなかでも、「虚血性心疾患」の占める割合は特に高く、突然死の原因としてたびたびニュースで取り上げられています。

心臓は命に直結する臓器であることや突然死への不安から、虚血性心疾患がどのような病気なのか気になる方も多いのではないでしょうか。

今回は、虚血性心疾患の代名詞である「狭心症」と「心筋梗塞」にスポットを当て、病気の実態と予防策について解説します。

50代以降で急増する「虚血性疾患」

虚血性心疾患とは、心臓の血管に問題が生じ、局所的に血液量が減少する病気の総称です。
心臓の表面を覆うように存在する冠動脈は、心臓が動くために必要な酸素や栄養を絶え間なく送り続ける重要な血管です。
ところが、加齢や生活習慣によって動脈硬化が進行し、冠動脈の内側が狭くなってしまうと、心臓に十分な血液が行き渡らず、酸素や栄養が不足した状態(虚血)となります。

虚血性心疾患は、50代を過ぎると患者数が急増することがわかっています。
発症数は男性が圧倒的に多く、30代後半から徐々に患者が増加していますが、女性の場合は、50代以降の発症が目立ちます。これには女性の閉経が影響しており、血管拡張作用のある女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで、心疾患のリスクが高まると考えられています。

厚生労働省「虚血性心疾患患者数の状況(平成30年度版)」の情報を基に作図

虚血性心疾患といえば、「狭心症」と「心筋梗塞」が大きな理由です。
狭心症は心筋梗塞の前段階の病気として、心筋梗塞は命に関わる病気として恐れられており、実際に突然死の大半が虚血性心疾患によるものと言われています。

狭心症と心筋梗塞の原因・症状

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狭心症と心筋梗塞は、「心臓に十分な血液が供給されない」という点で共通していますが、発症のメカニズムや症状の現れ方には違いがあります。それぞれの病気の特徴について知っておきましょう。

狭心症

狭心症は、動脈硬化によって冠動脈(心臓に酸素と栄養を与える血管)の内側が狭くなり、心臓に供給される血液量が減少することで発症します。
狭心症の多くは、歩行やスポーツの最中に発症する「労作性狭心症」ですが、安静時(主に就寝中)に冠動脈がけいれんをすることで発症する「安静時狭心症」もあります。
その症状としては、以下のようなものが特徴です。

  • 胸を圧迫されるような痛み
  • からだを動かすことで起こる息切れや息苦しさ
  • 安静にすると、数分~15分以内に症状がなくなる

心筋梗塞

狭心症が「一時的に血液の流れが悪くなる(数分後には元に戻る)」のに対し、心筋梗塞は「冠動脈が完全に詰まる(血液の流れが完全に止まって元に戻らない)」という大きな違いがあります。
動脈硬化が進行すると、やがて血管の内側に血栓(血の塊)ができ、それが冠動脈を塞いで血液の流れを遮断します。この状態によって細胞がダメージを受けることとなり、重篤な不整脈や心不全を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。
なお、症状には以下のようなものがあります。

  • 胸や背中の激しい痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗
  • 吐き気
  • 放散痛(病気の原因となっている部位とは、まったく違う場所に痛みを感じること)
  • 安静にしていても症状が改善せず、痛みが20分以上続く

これらの症状のなかでもっとも特徴的なのが、放散痛です。胸の痛みに続き、肩・腕・頬・歯などに痛みが広がることがあります。また、心筋梗塞では冠動脈が完全に詰まってしまうため、安静にしていても症状が改善することはありません。

なお、虚血性心疾患の特徴的な症状は「胸の痛み」「息苦しさ」ですが、「胃の痛み」「吐き気」として自覚することもあり、消化器症状と誤解される場合がある点は注意しておきたいところです。
持病に糖尿病のある方は、糖尿病の合併症である神経障害によって痛みの感じかたが鈍くなり、発見が遅れることもあるため、特に注意が必要です。

虚血性心疾患の原因

虚血性心疾患を引き起こす、もっとも大きな原因は「動脈硬化」です。
動脈硬化は加齢にともなう生理的なものもありますが、高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満・喫煙習慣がベースにあることで、動脈硬化の進行はさらに加速します。
虚血性心疾患を防ぐためには動脈硬化の予防が必須であり、リスクとなる要因をできる限り取り除くことが重要です。

虚血性心疾患を予防する生活習慣とは?

虚血性心疾患の発症には、「動脈硬化」が大きく影響しています。
動脈硬化は加齢による老化現象のひとつですが、同時に生活習慣が深く関わる生活習慣病でもあります。そのため、虚血性心疾患の予防においては生活習慣を改善し、動脈硬化の進行を遅らせることがカギとなります。

高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満・喫煙習慣のある方は、特に動脈硬化のリスクが高く、食生活を中心とした生活習慣の改善が欠かせません。基本的なことですが、塩分・糖分・脂肪分のとりすぎに注意し、和食中心のバランスの良い食生活を心がけましょう。なかでも、飽和脂肪酸を多く含む牛肉やバター、トランス脂肪酸を多く含むスナック菓子やファストフードの食べすぎは、動脈硬化を促すため注意が必要です。
反対に、青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸は中性脂肪を下げ、血液をサラサラにする作用もあります。積極的に摂取するようにしましょう。

また、運動をする際はウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を行いましょう。瞬発力を要する運動は心臓への負担が強いため避けたほうが無難です。
ストレス解消のために十分な睡眠をとり、節酒・禁煙も心がけましょう。

年齢を重ねるごとに血管も年をとり、弾力性を失い、固く、もろくなります。動脈硬化は、いわば老化現象のひとつであり、誰しも避けることはできません。しかし、生活習慣に気をつけることで動脈硬化の進行を遅らせ、虚血性心疾患の発症リスクを低くすることができます。

普段の心がけで危険因子を取り除くとともに、持病のない方も定期的に健康診断を受け、動脈硬化の原因となる生活習慣病の早期発見・早期治療に努めましょう。
すでに糖尿病や高血圧など、生活習慣病のある方は、治療を継続して持病を良い状態にコントロールし、動脈硬化の進行を防ぐことが大切です。

自己管理と早期診断が予防のポイントです

狭心症や心筋梗塞に代表される虚血性心疾患は、生活習慣病のひとつです。
食事・運動・睡眠などの基本的な生活習慣に加え、タバコの吸いすぎや仕事での過剰なストレスも虚血性心疾患を引き起こす要因となります。普段から規則的でストレスを溜めない生活を心がけ、健康状態を良好に維持するようにしましょう。

また、虚血性心疾患は予防が第一であることは言うまでもありませんが、万が一発症した場合は早期診断・早期治療が予後を大きく左右します。感じたことのない胸の痛みや、普段とは違う息苦しさ・動悸などの違和感を覚えたら、早めに医療機関を受診するようにしてください。

【出典元】

※厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況|死亡数・死亡率(人口10万対),性・年齢(5歳階級)・死因順位別」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/h7.pdf

ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。