50代から気をつける病気。予防・対策

熱中症対策を忘れずに! シニア世代は特に注意したい「新しい生活様式」と健康管理

50代から気をつける病気。予防・対策

感染対策も視野に入れた今年の熱中症対策は、従来の暑さ対策・水分補給に加え、マスク着用時は熱がこもらないように注意することを忘れないようにしましょう。熱中症が重症化しやすいシニア世代においては、まずは予防をこころがけ、初期の段階で早めに気付き、対処することが何よりも重要です。

【ライタープロフィール】遠藤愛

熱中症の季節がやってきました。今年は新型コロナウイルスの影響により「新しい生活様式」が求められ、これまでとは違った夏を過ごすことになります。
高温多湿でのマスク着用は熱がこもりやすく、長期間の自粛生活で暑さへの耐性も低くなっています。家で過ごす時間が長くなると、電気代がかかるから、とエアコンの使用を制限する方もいるでしょう。

このように昨年までとは異なる状況のなかでは、熱中症になりやすく重症化しやすい高齢者は特に注意が必要です。

今回は、新型コロナウイルスによる「新しい生活様式」のなかで、シニア世代がどのような熱中症対策を行うべきか解説します。

熱中症による重症者・死亡者は、60代以上で急増

まずは、熱中症の症状とはどういうものなのかを、押さえておきましょう。厚生労働省のウェブサイトでは、以下のように解説されています。

「高温多湿な環境下で、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称」

厚生労働省 職場における熱中症予防-熱中症とは?

夏の暑さは年々厳しさを増しており、毎年7月から9月にかけては熱中症患者が増える"熱中症シーズン"となります。熱中症はあらゆる年代の人に発症しますが、その中でも60代以上のシニア世代は熱中症にかかりやすく、重症化しやすい傾向にあります。

厚生労働省(※)によると、平成30年7月から同年9月の熱中症による入院患者数は1,343人、うち60代以上の患者が871人と、8割以上をシニア世代が占めています。

熱中症による死亡者数でも、60代以上から急激に増加し、80代がピークになっています。

厚生労働省「人口動態統計|年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~30年)」の情報を基に筆者作図

シニア世代は、なぜ熱中症になりやすいのか

シニア世代は熱中症にかかりやすいうえに重症化しやすく、最悪の場合は死亡に至るケースもあります。その背景には、加齢による体温調節機能の低下があります。

年齢を重ねるとあらゆる身体機能が低下しますが、体温調節もそのひとつです。外気温の上昇や運動などで体温が上がると、脳の体温調節中枢に情報が送られ、脳が「暑い」と感じます。すると、汗をかいたり、皮膚の表面温度を上げたりして、体内の熱を逃すように働きます。水を飲む、エアコンをつける、衣服を脱ぐなどの行動も体温調節機能がうまく働くことで起こる反応です。ところが、加齢によって体温調節機能が低下すると、熱を逃がすための反応が鈍くなります。具体的には、以下のような特徴が見られ、結果として熱中症のリスクが高まります。

体温調節機能の低下による高齢者の特徴

  • 暑さを感じにくい
  • 汗をかきにくい
  • のどの乾きを感じにくく、水分をとらない
  • 夏でも室内温度が高いまま過ごしてしまう
  • 夏でも重ね着をする、厚手の靴下を履くなど、外気温と衣服のアンバランスが起こる

また、高齢者は若い年代に比べてからだの水分量が少ないこと、心臓や腎臓の基礎疾患を持っている方が多いこと、常用薬の副作用で脱水を招きやすいことなども、熱中症の発症リスクを高める要因となっています。

「新しい生活様式」における熱中症予防のポイント

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新型コロナウイルスの世界的流行により、「ステイホーム」や「マスク着用」が日常となりました。しかし、気温の上昇する季節にマスクで鼻や口を覆うと、熱がこもって蒸れや息苦しさを感じます。加えて、家のなかで過ごす時間が長かったがゆえ、運動不足や暑さへの耐性が例年ほどないまま夏本番を迎えることになり、従来とは違った観点での熱中症対策が求められます。
夏の暑さを乗り切るために、「新しい生活様式」における熱中症予防について理解しておきましょう。

暑さ対策

エアコンの使用を制限せず、室内の温度・湿度を適切に管理することが大切です。一般的には温度28℃前後・湿度50〜60%を保つように推奨されていますが、暑さの感じ方には個人差があります。推奨値を目安にはしつつも、外気温度と室内温度の差が大きくなりすぎない程度に、自分にとって最適な設定温度に調整しましょう。

なお、コロナウイルス感染対策としてエアコンの使用中も定期的に換気することが大切です。外出をする際は暑い時間帯を避け、通気性・透湿性の良い衣服や帽子を着用しましょう。決して無理をせず、疲れたら涼しい場所で休むようにしましょう。

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こまめな水分補給

高齢になると、体内水分量の減少に加えてのどの乾きを感じにくくなります。1日あたり1.2リットルを目安に、のどが乾いていなくてもこまめな水分補給を心がけましょう。

手の届くところに水を置いておく、外出時はマイボトルを持ち歩くなど、飲みたいときにすぐ飲める状態にすることがポイントです。このとき、カフェインや糖分が多く含まれる飲み物ではなく、水・麦茶などで水分補給するようにしましょう。

夏は寝汗をかきやすいため、就寝前や起床後にコップ1杯の水を飲む習慣をつけましょう。
入浴や運動で大量の汗をかいた後は、水分とともに塩分の補給も忘れずに。

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体調管理と暑さに負けないからだづくり

日常的に体温を測り、健康状態をチェックするようにしましょう。日頃の健康管理は感染対策においても重要です。栄養バランスの良い食事をとって夏バテを予防し、入浴や軽い運動で汗を流すことも大切です。
体調が優れないときは無理をせず横になり、疲れを回復するために十分な睡眠をとりましょう。

マスク着用時の注意点

高温多湿でのマスク着用は熱がこもりやすく、熱中症対策を行ううえで特に注意が必要です。運動中のマスク着用は控え、仕事や外出中も周囲の人と十分な距離を確保してマスクを外すなど、熱がこもらない工夫をしましょう。

熱中症の初期症状は? 早期発見が重症化を防ぐカギ

熱中症ではさまざまな症状が現れますが、その程度によって大きく3つの段階に分けることができます。熱中症の重症化を防ぐには、早い段階で熱中症の症状に気付き、適切に対処することが重要です。

1.軽度の熱中症

体内に熱がこもると、熱を逃がすために皮膚表面の毛細血管に血液が集中するため、ほてりや皮膚の紅潮が現れます。また、多量の発汗によって体内の水分・塩分が失われ、筋肉痛(こむら返り)の症状が見られます。脱水によって一時的に脳の血流が減り、めまいを感じることもあります。

2.中等度の熱中症

熱中症が進行すると、頭痛、吐き気、からだのだるさなどが現れ、周囲からも分かるほどぐったりした状態になります。ときに軽い意識障害が見られることもあります。

3.重度の熱中症

さらに悪化すると、日時や場所が分からない、自分の名前が言えない、呼びかけに対する反応がおかしいなどの意識障害、歩行障害、全身のけいれん、40℃以上の高熱といった症状が現れます。これらは「熱射病」と呼ばれる病状で、命に関わる危険な状態です。

重症かどうかを見極めるポイントは、「意識は正常か?」「自力で水分をとれるか?」の2点です。意識がもうろうとし、水分補給を促してもぐったりして飲めない、吐き気や嘔吐で飲めそうにないときは、すぐに病院に搬送する必要があります。

家族が熱中症で倒れたら? 万が一のときの応急処置

熱中症は早い段階で症状に気付き、適切な対処をすることが重要です。しかし、初期の段階では、本人だけでなく周囲の人も熱中症に気付きにくく、様子がおかしいと思っても「少し様子を見れば落ち着くかも?」と考えてしまい、対応が遅れることがあります。
ここからは、熱中症が疑われた際の応急処置について解説します。

涼しい場所に移動させる

外出先で熱中症になった場合は、冷房の効いている屋内や風通しのよい木陰に避難させます。
自宅で熱中症になった場合は、冷房の設定温度を下げて室内を冷やしましょう。

衣服をゆるめ、からだを冷やす

からだを締め付けるようなベルト・ネクタイは外し、可能であれば衣服を脱がして熱を逃しましょう。重症化を防ぐためには、とにかく「からだを冷やす」ことが大切です。
氷枕や保冷剤、無ければ水で濡らしたハンカチやタオルを、首すじ、両脇、足のつけ根に当て、からだを冷やします。肌に直接水をかけ、うちわや扇風機で風を送ってからだを冷やすのもよいでしょう。

水分・塩分の補給

意識がはっきりしていれば、冷たい水をなるべく多く飲むよう促しましょう。多量の発汗があるときは、スポーツドリンク(水1Lに食塩1〜2gを混ぜた飲用水も可)で塩分も補給します。
吐き気や嘔吐、意識障害などで水分が飲めない場合、無理に口から飲ませるのは危険です。すぐ病院に搬送しましょう。

こんなときは、すぐに救急車を呼びましょう!

  • 自力で水分を飲むことができない
  • 意識が朦朧としている、呼びかけに反応しない
  • 応急処置をしても症状が改善しない

熱中症の重症化を防ぐには、早期発見・早期対応がポイントです。熱中症を疑ったら、からだを冷やして水分を補給します。すでにぐったりした状態で発見したら速やかに救急車を呼ぶなど、迅速な対応が必要です。

まずは熱中症にならないための「予防」が大切ですが、身体機能の低下したシニア世代では、注意しても熱中症になってしまうことがあります。いざというときのために、熱中症予防と応急処置はセットで覚えておくと安心です。

熱中症対策は「予防」が第一です

感染対策も視野に入れた今年の熱中症対策は、従来の暑さ対策・水分補給に加え、マスク着用時は熱がこもらないように注意することを忘れないようにしましょう。また、暑さへの耐性が十分でない状態で長時間の外出を避けるなど、これまで以上に慎重な対応が求められます。
熱中症が重症化しやすいシニア世代においては、まずは予防をこころがけ、初期の段階で早めに気付き、対処することが何よりも重要です。

「年をとってもまだまだ元気!」という健康自慢の方も、若い人と比べると体内の水分量や身体機能は確実に低下しています。体力に自信があっても決して油断せず、適切な熱中症対策を行って、厳しい夏を乗り越えましょう。

※ 厚生労働省「平成30年7月1日〜平成30年9月30日の重症入院患者数」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000379113.pdf

ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。