50代から気をつける病気。予防・対策

排尿の悩みは前立腺肥大症が原因? 症状や治療法、生活上の注意点

50代から気をつける病気。予防・対策

前立腺肥大症は、年齢を重ねるにつれて発症する人が多い病気で、生活習慣病との関係も指摘されています。病状を悪化させないためには、治療と並行して生活習慣を整えることも大切です。

【ライタープロフィール】浅野すずか

「トイレに行ったばかりなのにまた行きたくなる」「トイレのために夜中に何度も起きる」。このような排尿の悩みは、もしかすると前立腺肥大症が原因かもしれません。

前立腺肥大症は、年齢を重ねるにつれて発症する人が多い病気で、生活習慣病との関係も指摘されています。実際に排尿の悩みがあっても相談しにくいと感じ、受診をためらってしまう人の多いのが現状です。

そこで今回は、前立腺肥大症とはどのような病気なのか、その症状や検査、治療法について解説するのに加え、受診のタイミングや診断後の留意点についてまとめました。

前立腺肥大症は、適切に治療を受ければ症状がやわらぎ、快適に生活できます。この記事が、受診するきっかけになれば幸いです。

前立腺肥大症とはどんな病気? 前立腺がんとの関係は?

前立腺肥大症とは、前立腺が大きくなり尿道を圧迫することで排尿障害を引き起こす病気です。
前立腺は男性にしかない器官で、精液の一部である前立腺液を作っています。前立腺は、膀胱の下あり、尿道を囲むように位置しています。

前立腺肥大症は、前立腺に関する病気のなかでよくみられるものですが、そのほとんどはさほど心配する必要はありません。名古屋大学大学院医学系研究科のウェブサイトにも、以下のように説明されています。

50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%に見られますが、(中略)治療を必要とする、いわゆる前立腺肥大症の頻度は、その1/4程度と言われています。

前立腺肥大症 | 泌尿器科の病気について | 名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室

前立腺肥大の原因は、男性ホルモンの働きが関与していると言われていますが、詳しくは分かっていません。加齢のほかに、肥満、高血圧、高血糖などの生活習慣病も指摘されています。
また、「進行すると前立腺がんになるのでは」と心配する人もいますが、実際は関係ありません。ただし、前立腺がんが原因で前立腺肥大になることは、起こりうることです。

前立腺肥大症の症状

前立腺肥大症の症状を大きく分けると、以下の3つに分類されます。

排尿症状

尿の出が悪い、勢いが弱い、途中で途切れるなど、排尿に関する症状が出ます。

畜尿症状

膀胱に尿をためられないために起きる症状です。トイレに行く回数が多い、急に尿意を感じる、トイレに間に合わないなどがあります。

排尿後症状

排尿後もなんだかすっきりしない、いわゆる残尿感を感じます。

これらのほかに、病状が進行することで血尿、尿路感染、膀胱結石といった合併症を起こすこともあります。

検査と治療法

前立腺肥大症を診断するための検査項目や治療法には、どのようなものがあるのでしょう。順にみていきましょう。

検査

1.自覚症状の程度

自覚症状を客観的に判断するのは難しく、検査結果は分かりやすく点数で表します。多く使われているのは、「国際前立腺症状スコア」です。これは、7つの項目を点数化し、その合計値で症状の程度を把握するものです。7点以下は「軽症」、8~19点は「中等症」、20点以上は「重症」という判断です。

国際前立腺スコアに付随している「QOLスコア」では、症状がどのくらい生活に支障をおよぼしているのか把握します。1点以下が「軽症」、2~4点が「中等症」、5~6点が「重症」となります。

2.直腸内指診

肛門から指を入れ、前立腺の状態をみる検査です。硬さや痛みの有無などをチェックします。

3.尿検査

健康診断でもおなじみの検査です。血が混じっていないか、にごりはないかなど確認します。

4.尿流測定

排尿時の勢いや排尿にかかる時間などを測定します。トイレ型の検査装置に排尿すると、データがとれる仕組みになっています。

5.残尿測定

排尿後、膀胱内に尿が残っていないかチェックします。排尿前後にエコーを当てて判別します。

6.PSA検査

採血をして、血液内のPSA濃度を測ります。PSA値が高いと前立腺がんの可能性があり、前立腺肥大症と見分けるためにも行います。

7.超音波検査

エコーで前立腺の状態をチェックします。お腹から器具を当てる場合と、肛門から器具を挿入して検査する場合があります。

これらは、基本的な検査項目です。その他、状況に合わせて追加で検査を行います。

治療

前立腺肥大症と診断されても、必ず治療が必要なわけではありません。生活に支障がない場合は経過観察をします。もし治療が必要と判断されたときは、「薬物療法」または、「手術療法」が行われます。

薬物療法

飲み薬で前立腺肥大をやわらげ、排尿をスムーズにします。ただし、前立腺肥大そのものが治るわけではないので、薬をやめると元に戻ります。
主な薬として前立腺を小さくする「5a還元酵素阻害薬」、交感神経を遮断して前立腺の緊張をゆるめる「a1ブロッカー」があり、これらによって尿道の圧迫を解消します。

手術療法

手術で前立腺の大きくなった部分を切除します。内視鏡で行われるのが一般的です。薬物療法でも改善しない場合や、前立腺肥大症の合併症がある場合に行われます。

受診する科とタイミングは?

前立腺肥大症は、排尿に関する症状のため、泌尿器科の担当です。受診のタイミングに迷う方は、上記に挙げた「国際前立腺症状スコア」をチェックし、該当する症状があれば受診するのもひとつです。

前立腺肥大は、年齢とともに誰にでも起こりうるもので、決して恥ずかしいことではありません。気になる症状があれば早めに受診しましょう。

症状の悪化を防ぐポイント

冒頭でもお話ししましたが、前立腺肥大症は加齢だけでなく生活習慣病との関係が指摘されています。治療なしに病状を改善するのは難しいですが、生活習慣を見直すことで進行をゆるやかにできる可能性があります。

バランスのよい食事

炭水化物だけでなく、タンパク質や野菜も取り入れ、バランスのよい食事を心がけましょう。なかでも、レバーや魚卵など、コレステロールの多い食品には注意が必要です。コレステロールをとりすぎると男性ホルモンが活性化し、前立腺肥大が悪化するためです。なお、研究途上ではありますが、大豆製品に多く含まれる「イソフラボノイド」が前立腺肥大を抑制するといわれています。

適度な運動

適度な運動は、生活習慣病の予防に欠かせません。運動する時間が確保できない人は、できるだけ階段を使ったり早足で歩いたりと、日常でできることを増やしてみましょう。

尿意を感じたらすぐトイレに行く

尿意をひんぱんに感じると、トイレに行くのが面倒になってしまいますよね。しかし、それでは膀胱に負担がかかってしまいます。尿意を感じたら我慢せず、早めにトイレに行きましょう。

お酒を飲み過ぎない

お酒には利尿作用があるので、トイレの回数が増えてしまいます。また、アルコールで前立腺が充血すると尿道を圧迫するので、症状を悪化させるおそれがあります。お酒は適量を楽しむようにしましょう。

前立腺肥大症の治療薬以外の薬に注意

風邪薬や精神安定剤には、排尿を抑制する作用を持つものもあります。飲む前に医師に確認することをおすすめします。

まとめ

前立腺肥大症は、命に関わる病気ではありませんが、生活の質を低下させます。気になってもそのまま過ごしてしまう人もいるかもしれませんが、症状が出たら早めに受診しましょう。また、病状を悪化させないためには、治療と並行して生活習慣を整えることも大切です。できるところから改善し、健やかな毎日を過ごしましょう。

ライタープロフィール

浅野すずか

フリーライター

看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。