50代から気をつける病気。予防・対策

夏は脳梗塞に要注意! 初期症状と予防について正しく知り暑さを乗り切ろう

50代から気をつける病気。予防・対策

脳卒中(脳血管障害)は日本人の主な死亡原因のひとつです。血圧が高くなる冬の病気と思われがちですが、脳卒中の多くを占める脳梗塞は夏に発症することが多いという報告があります。それは、水分不足にともなう脱水が関係していると考えられています。できれば時間を決めて、確実に水分をとるように心がけましょう。

【執筆者】中西 真理

脳卒中(脳血管障害)は日本人の主な死亡原因のひとつです。平成30年に厚生労働省が発表した資料によると、約13人に1人が脳卒中で亡くなっています。

厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計(確定数)の概況|第6表 性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」を基に筆者作成

脳卒中は、「血管が破れて出血するタイプ」「血管が詰まるタイプ」の2つに大別されますが、4分の3以上は、脳の血管が詰まる「脳梗塞」が占めています(※1)。血圧が高くなる冬の病気と思われがちですが、脳卒中の多くを占める脳梗塞は夏に発症することが多いという報告があります(※2)。

今回は、夏に脳梗塞が起きやすい理由と発症した際の初期症状、そして脳梗塞の予防法について解説します。

脳梗塞の原因のひとつは夏場の脱水

脳梗塞には、「アテローム血栓性脳梗塞」「ラクナ梗塞」「心原性脳塞栓症」の3種類があります。

看護roo!「看護師イラスト集>診療科/解剖生理>脳・神経>心原性脳塞栓症・アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞の違いのイラスト」 / 利用規約

「アテローム血栓性脳梗塞」は、脳の太い血管に血栓(血液のかたまり)ができて詰まるタイプ、「ラクナ梗塞」は、脳の細い血管に動脈硬化が起きて詰まるタイプの脳梗塞です。一方、「心原性脳塞栓症」は、心臓の血管にできた血栓が流れてきて、脳の血管に詰まるタイプです。

脳梗塞のうち、「心原性脳塞栓症」は脳出血と同じように寒い季節に発症しやすい疾患ですが、「アテローム血栓性脳梗塞」と「ラクナ梗塞」は、夏にも起きやすいと報告されています(※3)。この2つの脳梗塞が暑い季節に発症しやすくなるのは、水分不足にともなう脱水が関係していると考えられています。脱水を起こすと血液中の水分が減少して、血流が悪くなります。すると、血栓ができやすくなり、脳梗塞を起こす危険性が高まるのです。

また、気温が高くなると、体温を下げるために血管が拡張します。血管が拡張すると血液の流れが遅くなるため、脱水を起こしていなくても血栓ができやすくなります。
最近は、熱中症予防のためにエアコンを利用することが多く、暑さを感じにくくなっています。しかし、エアコンを使うと空気が乾燥するため、気がつかないうちに脱水を起こしていることがあります。

また、ビールなどの酒類を摂取すると、アルコールの持つ利尿作用によって脱水を起こしやすくなります。緑茶やコーヒー、紅茶などカフェインを含む飲み物も利尿作用があるので要注意です。

このほか、胃腸風邪などで下痢をしているときも水分が体外に大量に排出されるので脱水を起こすおそれがあります。特に生活習慣病にかかっている人は動脈硬化が進みやすく、脳梗塞発症のリスクの高いことが知られています。また、生理機能が低下している高齢者は、ちょっとした気温の変化や水分不足がきっかけで脳梗塞を起こす心配があります。

脳梗塞の治療は時間との勝負

脳梗塞の症状は、血管が詰まる位置によって異なります。多くみられるのは「片麻痺」と呼ばれる症状で、顔の左右どちらか一方、手足の片側のみが突然動かなくなります。この時に、動かない側の感覚が鈍くなったりしびれを感じたりすることもあります。

上記に加え、以下のような症状が現れたら脳梗塞を疑い、すぐに救急車を呼び治療を受けるようにしてください。

  • 突然ろれつが回らなくなる
  • 言葉が出なくなる
  • 相手の言葉が理解できなくなる
  • 突然片方の目が見えなくなる
  • 視野が欠ける
  • 物が二重に見える

治療によって大きな回復が期待できるのは、発症から4~5時間以内と言われています。一方、治療が遅れてしまうと脳の障害が大きくなって後遺症が残りやすくなり、命を落とすこともあります。
なお、脳梗塞を疑う症状が現れても、数分程度で症状がなくなる「一過性脳虚血発作」と呼ばれるものがあります。これは、一時的に血栓が脳の血管に詰まるものの、すぐに溶けて症状がなくなるために起こります。この一過性脳虚血発作は脳梗塞の前触れであることが多く、症状が短時間で消失しても放置せず、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

近年、アメリカの脳卒中協会では、脳梗塞を含む脳卒中が疑われる場合は、「顔(Face)」「腕(Arm)」「言葉(Speech)」を確認し、「症状があらわれた時間(Time)」を確認して救急受診することをすすめています。

こまめな水分補給が夏場の脳梗塞を防ぐカギに

夏場に限らず、脳梗塞と関係の深い「生活習慣病」の治療はとても大切です。薬による治療を受けている場合であっても、食事の内容に注意して適度な運動を心がけ、脳梗塞の発症リスクを下げるようにしましょう。

加えて、夏場の脳梗塞を防ぐためには、上手に水分を補給して脱水を防ぐ配慮も必要です。
運動をする際には、汗をかいていなくても、のどの渇きを感じる前に水分をとるようにしましょう。おすすめはスポーツドリンクですが、糖分が多く含まれるものもあるので飲みすぎないように注意してください。

また、エアコンを使用している場合は、乾燥にともなう脱水に注意しましょう。「トイレに行く回数がいつもより少ない」「尿の色が濃い」「唇が乾燥している」という場合は、汗をかいていなくても脱水を起こしている可能性があります。これらを防ぐために、できれば時間を決めて、確実に水分をとるように心がけましょう。

そして、繰り返しになりますが、ビールなどアルコール類は飲みすぎないように注意しましょう。アルコールには利尿作用があるので、水分を十分にとっているつもりでも脱水を起こすことがあります。このほか、睡眠中は汗をかいて水分を失いがちなので、寝る前に水分をとることもおすすめです。また、朝起きたときにも、夜間に失った水分を取り戻すために水分補給したほうが良いでしょう。ただし、寝る前にカフェインを含むものを摂取すると、寝つきが悪くなりトイレも近くなります。寝る前の水分補給には、カフェインや糖分の入っていない麦茶や白湯がおすすめです。

脳梗塞を含む脳卒中は、日本人の主な死亡原因のひとつであるだけではなく、介護が必要になる原因でもあります。特に生活習慣病のある方、高齢などの理由で生理機能が低下している方は、夏場の脳梗塞に注意して健康寿命の延長を目指しましょう。

参考文献・参考サイト

※1 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス「循環器病あれこれ>[103] 脳梗塞が起こったら」
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph103.html

※2 公益社団法人 日本脳卒中協会「市民の皆さまへ>イベント>脳卒中週間」
http://www.jsa-web.org/citizen/93.html

※3 一般社団法人 脳卒中学会「機関誌案内「脳卒中」(和文誌)「脳卒中」オンラインジャーナルのお知らせ」
https://www.jsts.gr.jp/journal/jounal.html

脳卒中 第33巻第2号:226-235「全国労災病院46,000例からみた脳卒中発症の季節性(2002-2008年)」P.229左側の段落
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/33/2/33_2_226/_pdf

執筆者

中西 真理

公立大学薬学部卒。薬学修士。

医薬品卸にて一般の方や医療従事者向けの情報作成に従事。その後、調剤薬局に勤務。現在は、フリーライターとして主に病気や薬に関する記事を執筆。