50代から気をつける病気。予防・対策

外科医が伝える、初めての入院・手術を安心して過ごすための心構え

50代から気をつける病気。予防・対策

実際に手術を受ける立場となったら、病院でどんなに説明されても、きっと不安を感じてしまうことでしょう。その不安を少しでも軽くするため、色々なことを話し合える、あなただけの主治医を見つけてください。

【ライタープロフィール】surgyuichi

「自分は健康だ。これまで大きな病気もしなかった、だからこれからも大丈夫だ」と思ってはいませんか? ところが、人間は年齢を重ねるとともにさまざまな病気にかかりますし、手術が必要な病気も数多くあります。

「あなたは手術が必要です」と急に言われたとき、きっと皆さんこう思うでしょう。「入院生活はどうすればいいのか」「手術なんて受けたことがないし」「不安だ......」

そこで、今回は、現役の外科医師でもある筆者が「胆石症」の手術を受けたときの経験をもとに、診察から入院・手術に至るまで、医療機関で経験する各場面を再現しながら解説します。みなさんの状況に置き換え、入院を"体験"してみてください。

胆石症と診断され、手術の相談に来た50代男性の話

まず、入院・手術をするきっかけは、以下のような経緯から始まります。

去年、職場の健康診断で肝機能に異常があると言われ、近所のクリニックで精密検査を受けました。検査の結果、胆石症(注)と診断され、胆石で痛みが出る可能性もあるから手術も考えたほうが良いと言われ、近くの外科を受診することになりました。
これまで手術はおろか、病院を受診したことすらありません。何を言われるのか、と不安でいっぱいです。
(注)胆嚢(たんのう)の中に結石ができ、右の脇腹からみぞおちにかけて鋭い痛みを起こすことのある病気。

必ず紹介状をもらいましょう

まず、クリニックから紹介状(よく"お手紙"と言います)をもらいましょう。
2016年4月から、大病院に分類される大学病院などの「特定機能病院」や病床数500以上の「地域医療支援病院」では、紹介状をお持ちでない患者さんからは、診察代とは別に「選定医療費」を徴取するよう定められました。
特に大学病院では紹介状のない患者さんは診療をしてもらえないことが多いので、気を付けましょう。

厚生労働省「第107回社会保障審議会医療保険部会 資料2-2>外来時の負担等について4P」の情報を基に作図

通常、最初に受診した医療施設からは、その施設や自分の居住地に近い病院を紹介されます。受診したい病院や医師を指定することもできますが、クリニックと近隣の病院は医療体制で連携しているため、よっぽどの事情がない限りはクリニックの紹介先を受診されたほうが良いでしょう。

病院のホームページは必ず確認しましょう

受診する前に、病院のウェブサイトを訪問しておきましょう。なかでも以下の3点は必ず確認しておきたい項目です。

  1. ウェブサイトが最新の情報に更新されていること
  2. 年間手術件数
  3. 担当医師一覧

ウェブサイトでは、外来担当表や所属医師の取得資格などを閲覧できます。病院を紹介される場合、紹介する医師が指定されていなければ、曜日ごとの初診担当医が皆さんの主治医および執刀医となります。

初診担当医の決めかたは病院ごとで違いますが、多くの病院では、若手外科医が手術症例を集めるために初診外来担当となる場合が多いようです。

医師名、卒業年、各種資格が掲載されていますので、受診する外来担当医の項目をみておきましょう。

今回の胆石症の場合は、「内視鏡外科学会技術認定医」という手術の技能評価を受けた認定外科医が担当であれば、なお良いでしょう。

「手術は先生が担当(執刀:しっとう)されますよね?」

診察時には、診察をする医師に豊富な医療知識があることは当然ですが、身だしなみが整っている、説明がわかりやすいなどの側面からも信頼できそうかどうか、十分に観察しましょう。
印象がよく、このまま手術をお願いしようと思った場合は、胆石症という病気や治療方法に関する質問に加え、これだけは必ず聞くようにしましょう。

「手術は先生が担当されますよね?」

胆石症手術は、腹腔鏡(ふくくうきょう)を用いて行います。この手術は日本で最も多く実施されている手術のひとつです。通常、指導医(執刀医)、外科修練医、研修医の3人1組で行いますが、修練のために若手外科医に手術をさせる(執刀させる)ことがあります。

言い方は悪いですが、みなさんの手術が「若手外科医の練習」として見られている可能性があります。「技術のある医師に執刀してもらいたい」という希望は必ず伝えるべきですので、忘れないようにしましょう。

【手術2週間前】体調管理を入念に

手術日は2週間後となりました。この時期は、麻酔科外来で麻酔専門医の診察を受け、麻酔の方法(全身麻酔や局所麻酔)、手術後の痛みをどう管理するかなどが説明されます。術後の痛みに不安がある場合は、その際に相談しておくと適切な方法を提案してもらえます。

また、体調の面で気を付けておきたいことが、まずタバコです。術後肺炎など重篤な合併症の危険因子になりますので、喫煙者は必ず禁煙しましょう。加えて、体力をつけようとして食べ過ぎないようにもしてください。肥満は手術の難易度を大きく上げる要因のひとつです。規則正しい食生活、適度な運動を心がけましょう。

【手術前日】入院期間は思っている以上に短い

入院は手術の前日になります。最近は「クリニカルパス」という、決まった手順に沿って手術前後の管理を行います。胆石の手術であれば、入院は2泊3日~3泊4日が平均的ですが、日帰り手術や1泊2日入院を対応している施設もあります。事情に応じて相談するとよいでしょう。

病院の部屋は「大部屋」「重症個室」「有料個室」の3種類あります。入院時は大部屋に入り、手術後は1、2日ほど重症個室と呼ばれる部屋で様子を見て、その後再び大部屋へと移るのが通常です。これは、術後の経過や受けた手術の内容によって変わります。
一方、差額ベッド代を払って入る有料個室もあり、こちらは入院から退院まで自分の部屋として確保できます。
部屋の大きさ等によって差額ベッド代に幅があります。入院の手続きをする際によく検討しましょう。

【手術当日】手術は寝ているあいだに終わります

いよいよ手術当日の朝になりました。最近は、多くの病院で手術室への歩行入室という制度が取られています。「緊張感を軽減できる」「心構えができる」など良い点もありますが、たくさんの手術の器械を目にすることで逆に緊張したという意見もよく聞きます。歩いていくか、ストレッチャーに乗るかは、担当の看護師さんとよく相談しましょう。

【手術後】目が覚めた時にはもう手術は終わっています

麻酔科の先生が麻酔をかけ始めると、そこからの記憶はもうなく、次に目が覚めた時には手術は終わっています。ただし、喉には人工呼吸器の管が入っているため、しゃべることはできません。

意識が戻ったら、麻酔科の先生や看護師さんから「手を握ってください」「足首を動かしてください」「大きく深呼吸してください」と指示されますので、何も考えずに従いましょう。無理やり起き上がろうとするのはNGです。

午前中に手術が終わった場合は、午後からからだを起こしたり、歩いてトイレまで行ったりすることもあります。また、術後の状態によっては、夕方から水分や軽食をとることもできます。主治医や担当の看護師さんとよく相談してください。

翌日の朝食から普通のごはんを食べられます(お粥ではなく、普通のごはんです)。午前中はレントゲンの検査や傷の状態を見る回診がありますが、それ以外は特にすることはありません。読書をしたり、持ち込んだ仕事をこなしたり、自由に過ごせます。

ただし、自由とは言えども、飲酒や喫煙、公序良俗に反する行為は固く禁じられています。大部屋はもちろん、有料個室であってもそれは同じです。特に喫煙は、改正健康増進法により、医療機関の敷地内は一切認められていません。トイレで隠れて吸ったり、敷地の外へ出て吸ったりしたのが判明した場合、状況次第では強制退院となります。十分に注意してください。

【退院後】次に来院するのは2~3週間後です

手術が終わってもしばらく傷は痛みます。痛みは1週間程度で良くなりますが、創感染症といって、まれに傷から膿が出てくることもあります。この場合は次回の診察を待たずに、外来を受診してください。

その他気になることがあれば、外科外来の看護師さんへ電話し、相談することをお薦めします。主治医へ直接電話連絡しようとしても、検査や手術中の場合も多く、つながりません。急ぐ場合は、主治医以外の外来を受診しても構いません。その際は、いつ手術を受けたかを正しく伝えてください。

手術と言われても大丈夫?

手術が必要と発覚したときから手術後までを解説してきました。しかし、実際に手術を受ける立場となったら、病院でどんなに説明されても、きっと不安を感じてしまうことでしょう。その不安を少しでも軽くするため、色々なことを話し合える、あなただけの主治医を見つけてください。

あなたが手術を受ける状況になったときに、この記事を思い返し、心構えとしていただけるなら幸いです。

ライタープロフィール

surgyuichi

国立大学医学部卒。現役の外科医師。

医学博士、外科専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科学会技術認定医など。現在も外科医として数多くの手術をこなしながら、病気や医療に関する記事を執筆。