50代から気をつける病気。予防・対策

死亡原因ともなる誤嚥性肺炎! 高齢者の健康を守るため日常生活でできる対策を知ろう

50代から気をつける病気。予防・対策

誤嚥性肺炎は、高齢になるほど悪化・再発しやすい病気です。最悪の事態を回避するためには、食べたり、飲み込んだりする力の低下に気づくこと、早めに治療を開始することが重要です。食べる力、飲み込む力を維持し、誤嚥予防に取り組みましょう。

【ライタープロフィール】遠藤愛

「誤嚥性肺炎」は一般的な肺炎とは違い、「食べる力」「飲み込む力」の衰え、いわば老化現象によって引き起こされる病気です。年を重ねるほど誤嚥性肺炎のリスクは高くなり、重症化すると、寝たきりや死亡の原因となることもあります。

今回は、誤嚥性肺炎の原因や初期症状、生活のなかで実践できる予防法について解説します。

寝たきりや死亡につながることもある誤嚥性肺炎、その原因は?

「誤嚥(ごえん)」とは、唾液(つば)や食べ物が、誤って気管に入ってしまうことを意味します。食事中、たまにむせて咳き込むことはありませんか? このような状態を「食べ物が気管に入った」「のどに詰まった」と表現しますが、これこそが「誤嚥」です。

しかし、誤嚥したからといってすぐ肺炎になるわけではありません。誤嚥によって唾液や食べ物に含まれる細菌が気管支や肺に入って増殖し、炎症を起こしている状態が「誤嚥性肺炎」です。厚生労働省の平成30年の調査(※)によると、誤嚥性肺炎は、日本人の死因第7位に挙がっています。

画像1(誤嚥性肺炎のイラスト) / 利用規約

誤嚥性肺炎は、高齢者をはじめ、脳神経の病気や、その後遺症などで寝たきりになった方に多く発症します。また、健康だった方が誤嚥性肺炎をきっかけに長期入院し、足腰の筋力低下、食べる力や意欲の低下、認知症などを引き起こすことも珍しくありません。
このように、誤嚥性肺炎は老後の生活に及ぼす影響が大きく、避けたい病気のひとつです。

ところで、誤嚥性肺炎の原因となる「誤嚥」はなぜ起こるのでしょうか? ひとつは、食べたり飲み込んだりするための筋力・動作の衰えです。普段意識することはありませんが、食事をとるためには、噛んだものを唾液でまとめ、舌を使ってのどの奥に運ぶ、飲み込む......といった一連の動作が必要です。
さらに、食べ物をごっくんと飲み込む際、のどの奥では反射的に気管の入口にフタをして、異物が流れ込むのを防いでいます。同時に、普段は閉じている食道の入口は開かれ、食べ物が食道から胃に流れるようになっています。
これらの動作や反射は、口・頬・のどの神経や筋肉が正常に働くことで成立するため、加齢や病気などで働きが悪くなると誤嚥のリスクが高まるのです。

もうひとつは、咳反射の低下です。万が一、誤嚥しても健康な方であれば激しく咳き込むことで異物が気管の奥深くまで侵入するのを防ぎます。ところが、咳き込む力が弱まっていたり、そもそも誤嚥していることに気づかなかったりすると、気管支や肺に細菌が侵入して誤嚥性肺炎を引き起こすのです。

誤嚥は加齢や病気が複雑にからみあって起こる

「食べる力・飲み込む力の低下」「咳反射の低下」が誤嚥性肺炎の原因となりますが、これらの機能低下は、加齢や病気などさまざまな要因が影響しています。

加齢

年齢を重ねると、口やのどの筋力が衰える、刺激に対する反応が鈍くなる、唾液が減るなどの変化が現れます。また、病気やケガで寝たきりになると、寝ているあいだに少しずつ唾液を誤嚥し、さらには誤嚥したことに気づかない(咳反射が起こりにくい)などの問題も起こりやすくなります。 高齢者のなかには、このような変化によって食事の楽しさを失い、食べる力がさらに衰えてしまう方が少なくありません。

脳の病気

脳神経の病気も誤嚥のリスクを高めます。脳神経の働きが悪くなることで、食べるために必要な筋肉の働きも悪くなるからです。特に脳梗塞の後遺症やパーキンソン病を患っている方は食べるための機能が低下し、誤嚥性肺炎を起こしやすい傾向にあります。

薬の副作用

50代を過ぎて持病が増え、複数の薬を服用している方もいるのではないでしょうか。そのなかでも、抗うつ剤や睡眠剤、降圧剤、抗アレルギー薬などは、口の中を乾燥させ、飲み込みに影響することが考えられます。

逆流性食道炎

何らかの理由で胃の内容物が逆流し、胃酸によって食道の炎症を起こした状態が「逆流性食道炎」です。逆流した胃の内容物を誤嚥することで肺炎を起こしたり、慢性的な食道の炎症で飲み込みが悪くなったりします。

口内環境の悪化

誤嚥性肺炎の主な原因菌は、口や鼻にいる常在菌や肺炎球菌です。虫歯や歯周病などで細菌が増えると、それだけで誤嚥性肺炎のリスクは高まります。さらに歯を失えば、噛む力の低下は避けられません。また、口の中の汚れの放置やドライマウスは、味覚障害、口臭の原因となり、食欲低下や機能低下につながります。

このほかにも、加齢や持病による免疫力の低下、栄養状態の不良など、さまざまな要因が複雑にからみあうことで誤嚥性肺炎を発症します。

誤嚥性肺炎のサインに気づいて早めに対処しましょう

誤嚥性肺炎は、高齢になるほど悪化・再発しやすい病気です。最悪の事態を回避するためには、食べたり、飲み込んだりする力の低下に気づくこと、早めに治療を開始することが重要です。

次のような症状が見られたら「飲み込む力が弱まっているのかも」と考え、早めに医療機関に相談しましょう。

  • 食べ物や水分が飲み込みづらいと感じる
  • 食事に時間がかかる
  • 食欲がない
  • 口の中が乾く
  • 食事中にむせることが多い
  • 食後に咳・痰が出る
  • 痰に食べかすが混ざっている
  • 夜中に咳き込む
  • 発熱を繰り返す

誤嚥性肺炎の症状としては、発熱や咳、黄色っぽい痰が出ることが特徴です。これらの症状以外にも、「元気が出ない」「なんとなくだるい」といった不調がきっかけで誤嚥性肺炎が見つかることもあります。

今日からできる誤嚥性肺炎の予防法

誤嚥性肺炎は、高齢者にとっては命取りになりかねません。公的機関の調査によると、誤嚥性肺炎による死亡者数は右肩上がりで急増しており、急速な高齢化によって今後さらに増加すると予測されています。

東京都健康安全研究センター「人口動態統計からみた日本における肺炎による死亡について|6.動向予測 2)誤嚥性肺炎 図12. 誤嚥性肺炎による死亡者数の年次推移予測」の情報を基に作図

加齢によるからだの衰えは、止めることができません。しかし、「食べるための力」をできる限り維持することは可能です。
ここからは、普段の生活で行える誤嚥性肺炎の予防についてご紹介します。

食事をするときの注意点

食事の際は背筋を伸ばし、軽くあごを引いた姿勢を保ちます。早食いは誤嚥の原因になるため、よく噛んで食べましょう。
「硬いものは噛めない」「パサつくものはむせやすい」など、食材を制限しすぎると食事の楽しみがなくなってしまいます。柔らかく煮たり、あんをかけたりなどの工夫で、おいしく安全な食事を目指しましょう。

画像2(食事の姿勢) / 利用規約

口腔ケア

口腔内の清潔を保つことは、誤嚥性肺炎予防の基本です。食後や寝る前の歯みがき習慣で、細菌感染のリスクを減らしましょう。歯みがきには、味覚を正常に保ち、唾液の分泌を促す作用もあります。

画像3(歯みがき) / 利用規約

逆流予防

食べてすぐ横になると、胃の内容物が逆流して誤嚥性肺炎の原因になります。食後2時間はイスやソファに腰をかけて、からだを起こしておきましょう。

嚥下機能の維持

誤嚥を予防するためには、食べる力、飲み込む力(嚥下機能)を維持することが大切です。
噛む、噛んだものをのどに運ぶ、飲み込むといった一連の動作がスムーズに行えるように、食事前に「パタカラ体操」を繰り返し3回行い、で口まわりの筋肉を鍛えましょう。

「パタカラ体操」で口まわりの運動を終えた次は、嚥下体操を行い、からだの緊張をほぐしましょう。

  • ゆっくり深呼吸(鼻から吸って口から吐く)
  • 肩を上下に動かす
  • 首を前後左右に倒す
  • 首を左右に回す
  • 手を上にあげて背伸びをする
  • 最後にもう一度、ゆっくり深呼吸

画像5(嚥下体操) / 利用規約

いずれの方法も、日常生活の中で無理なく取り入れることができます。まずは、できそうなものから始めてみましょう。

日頃の予防習慣で誤嚥性肺炎のリスクを減らしましょう

加齢によるからだの衰えは、誰もが経験することです。年齢を重ねるほど食べる力は衰えて誤嚥しやすくなり、誤嚥性肺炎のリスクも高まります。誤嚥性肺炎は寝たきりや死亡の原因にもなる病気ですが、「予測できるリスク」でもあります。食べる力、飲み込む力を維持し、前向きに誤嚥予防に取り組みましょう。

※厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/kekka30-190626.pdf

ライタープロフィール

遠藤愛

看護師として約13年間病院勤務。外科・内科病棟、地域連携室、介護老人保健施設、訪問看護に従事。現在は看護師の知識と経験を活かし、ライターとして活動中。