幸せな”第三の生活”のために

介護施設の選び方~機能にあった選び方とタイミング

夫婦のこれから

介護施設にはそれぞれ目的があります。親がどのような生活を望んでいるのか、元気な間にしっかりと話し合いをして、ライフスタイルや受けたい介護など、今後のことをじっくりと決めていくとよいでしょう。

【ライタープロフィール】いのきぶんいち

介護保険制度が普及し、「第三の生活は介護施設で」と考える高齢者が増えてきました。
厚生労働省のデータによると、介護施設の入居者は年々増加している状況が分かります。

厚生労働省「介護福祉施設サービスの利用者数」の情報を基に作図

そして、高齢化が進んでいく中で介護施設の需要も増えていくと考えられることから、高齢者向けの住まいや施設も年々増えています。

厚生労働省「高齢者向け住まい・施設の件数」の情報を基に作図

しかし、介護施設にはさまざまな種類があり、どのような場面において、どの施設を選ぶべきなのか、理解している方は少ないのではないでしょうか。また、多くの人は、それまで何の準備もせず、入居しなければならない時期になってはじめて選んでいるケースがほとんどです。これでは生活できる場は確保できるかもしれませんが、自分の思った幸せな第三の生活が営めているのかというと疑問が残ります。

介護施設にはそれぞれ目的があります。これらと自分のライフスタイルや受けたい介護などを関連付けて考えることで、ニーズに沿った生活が送れるようになるのです。

わたしはケアマネジャーとして高齢者や家族と関わる中で、さまざまな介護施設の入居に関わってきました。その経験から、介護施設の機能面から、施設の選び方を詳しくお伝えします。

介護施設の機能とその特徴について

まずは、さまざまな高齢者者施設の中で、施設数や入居者が多い6種類の介護施設をピックアップしまとめてみました。介護施設の機能の違いを理解すれば、目的に合った介護施設を選ぶことができ、入居にあたっても自分のニーズに沿った生活が送れるようになります。

介護施設の機能とその特徴

種類

機能

施設数

特別養護老人ホーム

  • 在宅での生活が難しい原則要介護3以上の高齢者が入居できる。
  • 必要な介護や健康管理を受けながら生活することができる。
  • 完全個室のユニット型と多床室の従来型がある。

約9,600

介護老人保健施設

  • 在宅生活を継続するための専門的なリハビリを受けることができる。
  • 病院と在宅の中間施設としての役割が大きい。
  • 理学療法士、作業療法士などのリハビリスタッフが配置されている。

約4,200

介護療養型医療施設

  • 慢性的な医療処置と介護が必要な高齢者が入居できる。
  • 医師や看護師の療養管理を受けることができる。
  • 設置期限は2024年まで。介護医療院に転換する施設が増えている。

約1,300

グループホーム

  • 認知症の人が専門的なケアを受けながら生活できる。
  • 職員と共に家庭的な雰囲気の中でできる限り自立した生活を営む。
  • 5~9人の利用者が共同生活を営む。

約13,000

有料老人ホーム

  • 自立~要介護状態までの高齢者が入居できる。
  • スタッフから介護を受けられる一般型と外部サービス利用型が存在する。
  • 施設によって入居条件は異なる。

約12,000

サービス付き高齢者住宅

  • 自立度の高い高齢者が施設スタッフから見守りを受けながら生活できる。
  • 施設での自由度はもっとも高い。
  • 介護が必要となった場合には、外部の介護サービスを利用できる。

約6,300

厚生労働省「高齢者向け住まい・施設の件数」の情報を基に筆者が作成

これらのうち「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」は『介護保険施設』と呼ばれており、介護保険サービスとして利用できる公的施設です。なかでも「特別養護老人ホーム」が最も定員数が多く(※1)、地域にも必ず設置されており、安価で利用できることから人気の施設となっています。

施設数が最も多いのが「グループホーム」です。認知症の人が住み慣れた地域でいつまでも自立した生活を営むために設置されている施設です。ここでは、施設スタッフと入居者が少人数で共同生活を行います。スタッフから必要な介護や支援を受けながら、共に買い物に出かけたり、料理を作ったりしながら生活を営んでいきます。

認知症高齢者は現在どんどん増えている状況で、平成24年では有病者数462万人(※2)と推計されており、今後も増えてくることが予想されています。その中でグループホームの果たす役割は大きいといえるでしょう。

介護施設を選ぶために準備しておくこと

冒頭で述べた通り、介護施設を選ぶ必要が差し迫ったときは、介護施設の違いやメリット・デメリットなどを十分把握することが難しく、本当に自分にあった施設を選べなくなってしまうことがあります。

介護施設は、第三の人生を送るための重要な場所になります。人生の最期の時期に「失敗した」という生活を送るほど、寂しいものはありません。そのような失敗を防ぐためには、以下の3つのポイントを重視するとよいでしょう。

  • 親と今後の生活について話し合いを行う
  • 職場から親の介護に対する理解を得る
  • 担当のケアマネジャーとの連携を図る

親と今後の生活について話し合いを行う

厚生労働省「平成30年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査 報告書」の情報を基に作図

高齢になると病気になるリスクが高くなり、いざ介護施設ヘの入居が必要になったときに本人の意思を確認できないことがあります。そのため、元気なうちにしっかりと話し合いをしておくことをおすすめします。しかし、人生の最終段階においてどのように過ごすのか、延命治療はどうするのかといったことを話し合う人は、どうやら多くはなさそうです。

上のデータのとおり、人生の最終段階における医療について、「詳しく話し合っている」割合は、たった2.7%、「一応話し合っている」を含めても約4割に留まっています。

繰り返しますが、介護施設は、第三の人生を過ごす大事な場所です。高齢の親がどのように過ごしたいのか、元気なうちに確認しておくといいでしょう。

職場から親の介護に対する理解を得る

「介護離職」という言葉が報道されているとおり、家族の介護によって退職してしまうことが社会問題となっています。子どもの立場として、「自分が介護しなければならない」と身構えてしまうことに加え、職場に迷惑をかけてしまうといけないと考えて離職を選んでしまう人が多いためです。

厚生労働省では、仕事と介護の両立のポイントとして、職場に家族を介護していることを伝え、必要に応じて「仕事と介護の両立支援制度」を利用することを勧めています。(※3)
介護保険サービスをうまく利用しながら生活していけば、高齢者本人がいつまでも自立した生活を営むことができ、支える家族も大きな負担となることはありません。通院などに付き添う必要がある場合があることも、職場に理解してもらえばいいでしょう。

担当のケアマネジャーとの連携を図る

親の介護をすることは、何も自分自身の手によって介護するだけではありません。介護サービスのスタッフから日々の話を伺ったり、困ったことを相談したりすることも、親の介護のための大事な支援になります。

厚生労働省は、仕事と介護を両立させるポイントとして、「介護保険サービスを利用する」「ケアマネジャーを信頼する」といった内容を挙げています。(※3)
しかし、わたしがケアマネジャーをしている中で「スタッフに口出ししてはいけない」といった雰囲気を家族から感じることがあります。とはいえ、介護サービスを受けている親が、介護保険サービスのスタッフに想いをすべて伝えることは難しく、もしかしたら我慢してサービスを受けている場合もあるかもしれません。もしもそうであれば、家族は親の代弁者として、担当のケアマネジャーと連携を図ることはとても重要です。

また、介護施設にはどのようなものがあるか、どのタイミングで介護施設を選ぶべきなのかといった悩みを、専門家の視点で考えてもらえることもケアマネジャーとの連携を図るうえで大切な情報源になります。

介護施設を選ぶタイミング

介護施設を選ぶタイミングとして、次の三つを念頭に置くことをお勧めします。

1.親の希望やライフスタイルに応じる

以下のデータは、厚生労働省が全国の55才以上の男女に対し、「最期を迎えたい場所」を聞いた調査です。

半数以上は「自宅で過ごしたい」と考えており、その次に多いのが「病院などの医療施設」となっています。また、「高齢者向けのケア付き住宅」「特別養護老人ホームなど」介護施設での生活を考えている人が一定数いることも分かります。

厚生労働省「人生の最終段階について~最期を迎えたい場所」の情報を基に作図

この結果からは、「できることなら自宅で過ごしたい」という人、「家族に迷惑をかけないように最期は病院や介護施設の世話になりたい」と考えている人に大きく二分できることが分かります。
親の希望やライフスタイルに合わせて介護施設を選ぶことが、いかに大切なことかを理解できるのではないでしょうか。

2.主治医の意見

下記の表は、人生の最期を迎えるにあたって重要視することを調査した結果です。
複数回答が可能となっていますが、「信頼できる医師等に見てもらうこと」も38.1%と高くなっていることが分かります。

人生の最終段階について考える際に重要なこと(複数回答)

家族等の負担にならないこと

73.3%

体や心の苦痛なく過ごせること

57.1%

経済的な負担が少ないこと

55.2%

自分らしくいれること

46.6%

家族等との十分な時間を過ごせること

41.6%

信頼できる医師等に見てもらうこと

38.1%

厚生労働省「人生の最終段階について考える際に重要なこと」の情報を基に作表

高齢者になると何らかの病気を持っている場合が多いですから、近隣の医院などに体調管理をしてもらっているという人は少なくありません。そのため、介護施設や医療施設を選ぶ際に主治医の意見を聞いて決定したいという高齢者がたくさんいることが分かります。
そのため、子の立場としては、親の主治医と日常的にやり取りしておくことも、介護施設を選ぶうえで重要になってくるでしょう。

3.ケアマネジャーと相談

ケアマネジャーは介護サービスを受けている高齢者にとって、もっとも身近な相談相手といえます。先述のとおり、常日頃からケアマネジャーと連携を図るようにしておけば、いざという時に相談しやすくなります。介護施設をどのように選べばいいか、どのようなタイミングで入居すればいいのかについては、ケアマネジャーの意見を参考にするといいでしょう。

ケアマネジャーは、高齢者本人の意思に沿って、必要なタイミングで介護施設を勧めたいと考えています。そのために、高齢者自身やその家族の希望やライフスタイルを知り、主治医から健康状態を把握し、さまざまな介護サービスと連携を図っているのです。
家族の想いとは違う視点から、高齢者の今後の生活について考えていますから、客観的な意見として受け止めることができるはずです。

まとめ

ケアマネジャーとして高齢者や家族と関わっていると、自分の親に介護が必要になるとすべて家族が担わなければならないと考えている方がおられます。子どもの想いだけで介護施設を探すようなケースも見られますが、来たるときに備え、準備を進めておくとよいでしょう。そのための重要なポイントは、「親との相談」「職場の理解」「ケアマネジャーとの連携」だと感じています。

介護施設はどこも同じものではありません。その種類によって機能や役割は全く違うものですから、選び方を間違ってしまえば、親の第三の生活がとても不自由で寂しいものになってしまいます。

親がどのような生活を望んでいるのか、元気な間にしっかりと話し合いをしておけば、いざという時に親の気持ちに沿った介護施設を選ぶことができるようになります。そして、家族自身が親の介護を抱えすぎないようにして、うまく介護サービスを利用していくことが大事です。主治医や担当のケアマネジャーと連携を図りながら、今後のことをじっくりと決めていくとよいでしょう。

※1 厚生労働省「高齢者向け住まい・施設の定員数」7P
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000171814.pdf

※2 厚生労働省「認知症高齢者の現状(平成24年)」3P
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000065682.pdf

※3 厚生労働省「仕事と介護両立のポイント」2~3P
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000154738.pdf

ライタープロフィール

いのきぶんいち

主任ケアマネジャー、社会福祉士、介護福祉士。

居宅介護支援事業所の管理者として約10年間の勤務経験で述べ5000人の相談援助経験あり。現在、経験を活かしてWEBライターとして活躍中。