からだの自由が利かない親のために

からだの自由が利かない親にできる親孝行とは

夫婦のこれから

からだの自由が利かない親のためにできることは、まずは『こころの距離感』を近づけることが重要です。こまめに会う、もしくはこまめに連絡するなど、親が抱えている不安を解消できるような関わりをしていきましょう。

【ライタープロフィール】いのきぶんいち

「お世話になった親に、今までの感謝の気持ちを込めて親孝行がしたい」
そのように考えている方は多いと思います。年を重ねていくごとに衰えていく姿を目の当たりにすれば、なおさらそのような感情が湧き出てくるときもあるでしょう。

しかし、からだの不自由な高齢の親のために何か力になりたいと考えても、実際にはどのような支援が必要なのか分からないという方が多くいます。
何か親孝行がしたいと考えていろいろなことを計画している方も多いのですが、高齢者自身が本当に望んでいるものではないことも少なくありません。

私はケアマネジャーとして多くの高齢者と関わる中で、不安を抱えて生活し、解消できずに悩んでいる姿を見続けてきました。
高齢になると誰でも今までできていたことができなくなり、普通に暮らしてきた自宅での生活ができなくなるかもしれないと考え、不安でいっぱいなのです。

こちらのデータをご覧ください。

内閣府「平成24年度 高齢者の健康に関する意識調査」の情報を基に作図

年を重ねてからだが不自由になったとしても、自宅で最期を迎えたいと考えている高齢者が多いことが分かります。つまり、自宅で住み続けることによる不安を解消することが、最善の親孝行(支援方法)だと考えるのです。

ここでは『高齢者の不安』を理解し、高齢者の親に対してどのように支援していけばいいのか具体的にお伝えしていきます。

老後の暮らしに関する意識

厚生労働省「高齢社会に関する意識調査(平成28年10月4日発表)」の情報を基に作図

上記調査からも分かるとおり、高齢期になるとからだの衰えや病気、認知症の発症などによって、老後に対する不安が大きくなります。

冒頭にもお伝えしたとおり、これらの悩みがあがってくるのは「自宅で最期を迎えたい」という希望が叶えられなくなる可能性があるから、と言い換えることはできないでしょうか。また、健康問題だけではなく「経済上の問題」が不安要素として高くなっている点も注視したいところです。

厚生労働省「高齢社会に関する意識調査(平成28年10月4日発表)」の情報を基に作図

続いて、高齢者の就労希望年齢を見てみます。この調査結果を見ると、年齢によって就労年齢を考えるのではなく、「働けるうちはいつまでも働きたい」と考えている高齢者は少なくありません。
その理由のひとつには、収入に対する不安もあるのかもしれません。しかし、つまるところ健康でなければ働くことはできません。

この結果からも、健康で生活し続けることが高齢者にとってもっとも大事なことであることが理解できるのではないでしょうか。

もう一つ、データをご覧ください。

厚生労働省「高齢社会に関する意識調査(平成28年10月4日発表)」の情報を基に作図

これは高齢期に自分自身が希望する場所で暮らし続けるために、何が必要になるかといった調査です。年齢が高くなるにつれて「医療機関が身近にあること」の割合が高くなっていることが分かります。それだけ老後の暮らしに健康に対する不安が大きいことが理解できます。
また「介護保険のサービスが利用できること」「買い物をする店が近くにあること」「家族による手助けがあること」も不安を感じる項目の上位に挙がっています。

高齢期にからだが衰えて不自由になることを考えると、暮らしにはこのような条件が必要であると考えているのです。つまり、これらを支援していくことがからだに自由が利かない親に喜ばれる親孝行(支援方法)ではないでしょうか。

高齢者の終末期問題に関する意識

これまでのデータをまとめると、「子どもには困ったときには協力してほしい。でもできることなら子どもの負担にはなりたくない」ということがいえるのではないでしょうか。
いつまでも自宅で暮らしたいと考えていても、病気や介護状態、認知症などの不安が大きくなります。そのため子どもにはいざというときに、病院や介護サービスといった手配をしてもらいたいと考えているのです。

近年では医療・介護ともに在宅サービスが充実してきました。最期を迎える場所も、近年変化が見られています。
厚生労働省の資料(※1)によると、『病院』で亡くなる人も、平成17年頃をピークとして少しずつ減少する一方、『老人ホーム』で亡くなる人が増えています。これは終末期ケア(ターミナルケア)に取り組む老人ホームが増えたからだともいえます。(※2)

最期を迎えたい場所として挙がっている「特別養護老人ホームなどの福祉施設」では、ケア向上の一環として終末期ケアに取り組むようになりました。
老人ホームで必要な介護を受けながら、自分らしく生活し、看取られながら人生の最期を迎えたいと考える人が少しずつ増えているのです。

健康が不安になり、介護が必要になったとしても、必要な医療や介護を受けられる体制を整えることが高齢者の望む暮らし作りであると言えるでしょう。

厚生労働省「高齢社会に関する意識調査(平成28年10月4日発表)」の情報を基に作図

このデータからは、「通院・買い物等の外出の手伝い」「急病などの緊急時の手助け」「洗濯や食事準備などの日常的な家事支援」などが多くなっていることが分かります。
積極的に介護や医療といった外部のサービスを受けながら生活していきたいということが理解できるのではないでしょうか。

もうひとつ見ていただきましょう。

厚生労働省「高齢社会に関する意識調査(平成28年10月4日発表)」の情報を基に作図

このデータからは、各種サービスや周りの支援を利用したいと考える人は一定数いながらも、やはり「子ども(孫)」を頼りたいと考えていることが一番多く、これらデータを総合的にまとめると、以下のようなことが言えるのではないでしょうか。

  • 健康でいつまでも自宅で生活したい
  • 子どもの世話にはならずに医療や介護サービスを受けながら生活したい
  • いざというときに対処(急変時の対応や介護サービスの手配)をしてもらいたい
  • そのためにできれば同居や近居してほしい

つまり、親は子どもに対し、不安を解消できるような関わりを求めていることが分かります。

からだの自由が利かない親のためにできること

厚生労働省「国民生活基礎調査(平成28年)」を基に作図

先述のとおり、親は自宅での生活を望んでいるものの、いざというときには子どもに助けてもらいたいと考え、子どもとの同居や近居を望んでいる高齢者の割合が多い、とお伝えしました。

しかし上記データのとおり、実態としては子ども夫婦との同居は減少傾向にあることが分かります。高齢者が望んでいる同居に関しては、なかなか難しい問題であるのかもしれません。また、高齢者の親を介護するために離職しなければならないと考える子どもが少なくありません。
子ども夫婦の状況によっては、共働きをしなければならないこともあるでしょうし、転勤などによって親と離れた地域に暮らさねばならないこともあるかもしれません。

このデータからは親の近くに住んでいるとしても、遠くに住んでいるとしても、なかなか親が抱えている不安を解消できるような関わりが出来ていない様子が感じられます。

では、からだの自由が利かない親のために、どのように関わっていけばいいのでしょうか。
私はケアマネジャーとしての経験から、次のような関わり方を提案します。

  • こまめに会う、もしくはこまめに連絡する
  • できる時には病院への付き添いや医師とのやり取りを行う
  • 介護サービスとのやり取りを行う
  • 終末期の話し合いを行う

高齢となった親が安心して暮らしていくためには、「子どもにいつでも相談できる」という体制づくりと「医療・健康」「介護」のサポートが、子どもにできることではないでしょうか。

いつでも相談できる体制づくりというのは、「こまめに会う」「こまめに連絡する」ことによって、どのような不安を抱えているか引き出すことができます。近くにいても、なかなか会えずに話す機会もないのであれば、親からしても子どもの負担になってしまうと考えて、相談したいこともできなくなってしまいます。

そのため、こまめに話をする機会を持つということは、相談しやすい雰囲気をつくれるため、とてもいい関わりかただと考えます。可能であれば通院に付き添って、主治医から直接話を聞くことも、親からすればからだの状況を知ってもらえる機会となり、とても喜ばれる行動です。

そして、介護サービスを利用しているのであれば、担当のケアマネジャーや介護サービススタッフと関わることで、日々の様子を知ることができます。
変わったことがあれば、担当者から直接連絡をしてもらうこともできますので、高齢者自身も安心して介護サービスを受けることができるでしょう。

また人生の最期をどのように迎えるのかについても、家族で話し合っておくとよいでしょう。

人生の最終段階おける医療について

家族と話し合ったことがある者の割合(%)

詳しく話し合っている

2.7

一応話し合ったことがある

36.8

全く話し合ったことがない

55.1

無回答

5.4

厚生労働省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」の情報を基に作図

このデータを見ても分かるとおり、半数以上の高齢者は終末期についての話し合いが家族間でできていません。
子どもからすれば「まだまだ元気だから」と考えているのかもしれませんが、高齢者にとってはからだが衰えるにつれて「最期」が現実に近づいていることを感じるものです。

  • 急変時にはかかりつけ病院で対応してほしい
  • 往診に来てもらっている主治医に連絡してほしい
  • 延命措置をしてほしい、あるいはしてほしくない

このような内容はしっかりと確認しておかねばなりません。

聞き取りをしておくことで高齢者自身にとっても、安心して子どもに任せることができますし、子どもの立場からしても最期にどのように関わればいいのか迷わずに済むのです。

まとめ

  • こまめに会う、もしくはこまめに連絡する
  • 病院への付き添いや医師とのやり取りを行う
  • 介護サービスとのやり取りを行う
  • 終末期の話し合いを行う

からだの自由が利かない親のために子どもにできる具体的な親孝行(支援方法)として、この4つの方法をご提案します。

私はケアマネジャーとして多くの高齢者に関わる中で、子どもが高齢者の親にどのように関わっていけばいいのか分からないという意見をよく聞きます。
もちろん旅行や外食に出かけるといった関わりも大事であるのは間違いありません。しかし、高齢者は、日々の暮らしの中で少しずつからだの衰えを感じ、不安が積み重なっているものです。
それでもこまめに会ったり、連絡を取ったり、いつでも気軽に相談することを通じて、安心して自宅に住み続けることができます。

子ども自身にとっても、地域医療や介護サービスとうまく関わっていけば、高齢の親の存在が大きな負担とならずに支援することができるでしょう。介護のために離職することもなく、あるいは親のために自身の家族と離れて生活するようなこともせずに済むことも考えられます。

からだの自由が利かない親のためにできることは、まずは『こころの距離感』を近づけることではないでしょうか。

参考)

※1 厚生労働省「終末期医療のあり方に関する検討会の設置について|死亡場所の推移」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000173560.pdf

※2 厚生労働省「介護保険施設等における看取り|看取りの現状・課題・検討の視点」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000156002.pdf

ライタープロフィール

いのきぶんいち

主任ケアマネジャー、社会福祉士、介護福祉士。

居宅介護支援事業所の管理者として約10年間の勤務経験で述べ5000人の相談援助経験あり。現在、経験を活かしてWEBライターとして活躍中。