田舎の両親の老後はどうサポートする? 不安を取り除く遠距離介護のポイント

夫婦のこれから

田舎で暮らす両親の介護について、遠距離介護で押さえておきたいポイントをお話しします。

【監修】渡辺 有美

両親と遠く離れて暮らす人にとって、親の老後問題はとても深刻です。
「もし親の介護が必要になったら、どうやって支えていけばいいのだろう?」
実家を出て都会で暮らす多くの人が、このような不安を抱いているのではないでしょうか。

今回は、田舎で暮らす両親の介護について、どのような選択肢があるのか詳しく紹介し、それぞれのメリットやデメリット、遠距離介護で押さえておきたいポイントをお話しします。

両親の老後をサポートする選択肢

今は元気な両親も、いずれはからだが衰えて日常生活でサポートを必要とする時がくるかもしれません。田舎で暮らす父や母を支えていくには、具体的にどんな方法があるのでしょうか。

1.実家に帰って両親を介護する

田舎の両親の介護というと、自分たちが実家へ帰って面倒をみる「Uターン介護」が頭をよぎる人も多いでしょう。たしかに両親と一緒に暮らしていれば、何かあった時にすぐにフォローできるのでお互いに安心です。両親も自分の子どもが常にそばにいてくれればとても心強いでしょう。ただ、Uターン介護は子どもにとってさまざまな問題を孕(はら)んでいることを知っておかなければなりません。
田舎へのUターン介護で生じるリスクには、以下のようなものがあります。

  • 転職先がなかなか見つからない
  • 経済的不安
  • 環境の変化によるストレス

まず問題となるのは、Uターン後の転職先です。すぐに希望にマッチした転職先が決まればよいですが、なかなか上手くいかないケースが多いのが実状です。これまでのキャリアや資格が活かせる仕事となると、就職はさらに難しくなるでしょう。

総務省の調査(※)によると、介護のために離職をした人の再就職状況は、かなり厳しいことがうかがえます。
離職後に就職を希望した人のうち、再就職できた人は全体の30.2%。このうち正規の職員・従業員として採用された人は6.2%に留まり、パートタイムやアルバイトは16.2%(「仕事あり」の約5割)になります。離職前は、半数近くが正規の職員・従業員として働いていたというデータもあり、いったん仕事を離れてしまうと、正社員としての再就職はかなりハードルが高くなることがわかります。都会と比べて仕事の少ない地方は、なおさらこの傾向が強いことが推測できます。

総務省「仕事と介護の両立に関する家族介護者等の認識」ア 介護離職後の再就職状況のグラフを基に作図

再就職が難しい理由としては、「再就職活動にあてる時間がない」「家族に要介護者がいると雇ってもらえない」「一度離職をすると、介護をしながら再就職は無理」などの声があります。(※)
仕事がなかなか決まらなかったり、正社員として採用されずにパートやアルバイトで働くことになったりすると、これまでよりも経済的に厳しくなることは否めません。そのうえ、両親と同居することになれば、子どもの配偶者にとっては義理の親と突然一緒に暮らすことになるわけですから心理的負担も大きく、そこに介護が加われば、心身ともに相当なストレスがかかってくるでしょう。こうした数々のデメリットを考え合わせると、不安の多いUターン介護は慎重に考えた方がよさそうです。

2.両親を呼び寄せる

Uターン介護が厳しいなら、両親を呼び寄せるというのはどうでしょうか。これなら、子どもが介護離職をすることなくキャリアを継続できるうえ、経済的にも安心です。ただ、この方法にも以下のような問題点があります。

  • 親がこれまでのコミュニティやかかりつけ医を失う
  • 親が認知症になるリスクが高まる

両親が慣れ親しんだ家を離れ、子どものいる街へ移り住むことは、ご近所づきあいなど親が地域で長年築いてきたコミュニティを失うことになります。子ども世帯と一緒に住めることはメリットのひとつですが、高齢になってから慣れない土地で暮らすことは、当人にとってストレスにほかなりません。こういった心理状態の悪化や住環境の大きな変化は認知症になる確率を高めてしまう怖さがあります。
認知症の症状には、記憶障害や判断力の衰えといった「中核症状」と、環境やからだの具合の影響を受けて出現してくる、徘徊や幻覚といった「周辺症状」があります。引っ越しはこの周辺症状の出現の引き金になってしまうリスクがあるのです。

高齢者にとって、一番居心地がよく安心して暮らせる場所は、自分の家だといえます。高齢になってから環境がガラリと変わることは、少なからず心身にダメージを与えて認知症リスクを高めてしまうことは頭に入れておいた方がよいでしょう。

ただ、環境の変化によるストレスよりも、高齢の夫婦、あるいはひとりで暮らす不安の方が上回る場合は、話は別です。認知症の周辺症状の発生を予防するには、両親にとってどんな状況が一番ストレスを感じるのか、介護方法を決める前にしっかり把握しておくことが大事です。

3.遠距離介護

次に、お互い今の家に住んだままで親の介護をサポートする、「遠距離介護」です。両者とも転居の必要がないため、子どもが離職をすることも、環境変化のストレスも、親がこれまでのコミュニティを失う心配もありません。

厚生労働省の資料によると、「同居介護者の割合」はゆるやかに下降傾向にあるのが見てとれます。2001年には7割以上が要介護者と同居(配偶者、父母など含む)しながら介護をしていましたが、2016年には6割を切っています。

厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」大規模調査年の「Ⅳ 介護の状況 要介護者等との続柄別主な介護者の構成割合」の各グラフを基に作図

親に介護が必要になる時期は、子どもが働き盛りのケースが多く、会社で重要な役職についていたり、子の大学費用を準備しなければならなかったりと、子ども自身も色々なものを背負っています。両親も大切ですが自分の人生も同様に大切に考えなくてはなりません。その点で、遠距離介護はお互いにとってより負担の少ない選択であるといえます。
ただ、遠距離介護のデメリットとして、何かあったときにすぐに駆けつけられない、帰省をしたり、連絡を密にとったりするのに交通費や通信費がかかる、といったことがあります。特に遠距離介護の場合は、"いざという時の対応"をしっかり考えておく必要があるでしょう。

4.施設入所

両親の要介護度が上がり、日常生活に支障が出てくるようになったら、施設入所も視野に入れていかなければなりません。
介護施設は、衣食住をすべてプロにお任せできるので、遠方に住む子どもにとっては非常に安心感があります。また、プロによる質の高いサービスを受けられること、24時間体制で見守ってくれること、緊急時に素早く対応してくれることは、在宅介護にはないメリットです。一方、デメリットとして、施設によっては入居一時金や月額利用料がかなり高額になること、食事や入浴など本人の自由が利かないこと、人との共同生活にストレスを感じることなどが挙げられます。

両親の老後に向けて今から準備しておきたいこと

離れて暮らしていても、今から将来の介護に向けて準備をしておくことはできます。その中でも特に大切なことを考えておきましょう。

・両親の経済状況を把握する

介護の仕方にはさまざまな選択肢があり、どの方法を選ぶかは本人の希望もさることながら、経済状況によっても大きく左右されます。そのため、両親が介護に使えるお金がどのくらいあるのか、実際に介護が始まる前に子どもが知っておくことはとても大切です。年金の額、預貯金の額、加入している保険の内容などを、しっかり確認しておきましょう。

・将来どのような暮らしを送りたいのか、両親の希望を聞く

老後の暮らしについて、父親、母親それぞれの考えや希望を聞いておくと、いざという時に迷わずに済みます。日常生活に介護が必要になったとき、どこでどのようなサポートを受けて暮らしたいのか、両親の気持ちを確認しておきましょう。 介護サービスを利用しながらできるだけ自宅で過ごしたいのか、子どもと同居して介護をしてもらいたいのか、すぐに施設に入居したいのか、まずは両親の本音を知ることがカギになります。

帰省時に両親の生活状況を注意深く観察する

お盆やお正月など、実家に帰省したときは、両親のからだの状態や生活状況を知るチャンスです。以前より痩せていないか、からだの動きに違和感はないか、物忘れなどの症状がないかを注意深く観察するとともに、本人にもからだの不調や悩みごとはないか尋ねましょう。
これについては、厚生労働省の「介護予防のための基本チェックリスト」が役に立ちます。アンケート形式になっており、いくつかの質問に答えていくと問題点や対処法を示してくれるので、活用するとよいでしょう。
※厚生労働省「介護予防のための基本チェックリスト 」

遠距離介護の4つのポイント

田舎の両親の介護が現実味を帯びてきたら、気をつけておきたいこと、早めに備えておきたいことがあります。とても大切なことなので、ぜひ心に留めておいてください。

・電話などで定期的にコンタクトをとる

両親の状態の変化にいち早く気づくために、できるだけこまめに連絡をとりましょう。
おすすめは、声を直接聞くことができる「電話」です。受け答えや声の調子に注意を向け、いつもと変わったところはないかよく観察してください。

・おかしいと思ったら「地域包括支援センター」へ相談

両親の様子に異変を感じたら、まずは「地域包括支援センター」へ相談しましょう。
地域包括支援センターは、介護が必要な人の最初の窓口です。ケアマネジャー、保健師、社会福祉士などが駐在しており、無料で高齢者やその家族の相談に乗ってくれる「介護の何でも屋」。介護のアドバイスや適切なサービスの紹介など、相談者の悩みに寄り添いながら役立つ情報を提供してくれます。すぐに介護が必要な状態ではなくても、家族から「最近、親の元気がなくて心配」「外出の回数が減っているようで不安」などの悩みを相談することもできます。介護に関するあらゆる困りごとに対応してくれますので、親と遠く離れて暮らしている人は早めに地域包括支援センターとコンタクトをとっておくことをおすすめします。

・介護認定を受ける

生活に支障が出てくるようになり、デイサービスや訪問介護などの介護保険サービスを利用したいと思ったら、最初に「介護認定」を受ける必要があります。認定を受けることで必要な支援やサービスを受けられるだけでなく、担当のケアマネジャーが付いて各方面への連絡や調整を担ってくれるため、両親の介護をよりスムーズに進めることができます。
遠距離介護では、いざという時に頼りになるのは担当のケアマネジャーや民生委員といった地域の人たちです。家族は、彼らと連携をとりながら介護に関わっていくことになります。

・万一に備え、早めに施設の情報収集を

要介護度が上がるにつれ、徐々に親だけで暮らすのが難しくなってくることが考えられます。そうしたら、いよいよ施設入所を考える時期です。ただ、施設は思い立ったらすぐに入居できるわけではありません。料金や場所など条件に合った施設がなかなか見つからなかったり、空きがなかったりして、入居までに時間がかかってしまうことも十分に考えられます。そのため、実際に入居するかどうかは別として、施設の情報収集だけでも早いうちから始めておくのが望ましいといえます。情報を集めることで、両親に合いそうな施設をじっくり選べますし、万一の時にも素早い行動がとれます。

まとめ

離れて暮らしていても、両親に介護が必要になったら子どもはある程度介護に関わっていかなくてはなりません。
何の備えもないと、いざ介護が始まったときに大変な思いをすることになってしまいます。
今のうちから両親としっかり話をして、将来の介護に向けた準備やリサーチを始めていきましょう。

参考
※総務省「仕事と介護の両立に関する家族介護者等の認識」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000557683.pdf

監修

渡辺 有美

介護やマネー関連が専門のフリーライター。

独身時代は都市銀行に勤務し、その後、結婚と子育てを経て介護の道へ。介護福祉士としてデイサービス・特養・訪問介護の現場で10年以上働いた経験を活かし、高齢者の方々の役に立つ記事を多数執筆しています。