30〜40代で気にしなければならない健康と予防対策

運動不足解消の方法は? 運動しないでいるとどうなる? 内科医が簡単解説!

身体のこれから

運動には、ネガティブな気分を発散させたり、こころとからだをリラックスさせ、睡眠リズムを整えたりする作用があります。今より10分多く、毎日身体を動かす取り組み「+10(プラス・テン)」を目標に、できることから日々のなかに運動を取り入れ、いつまでも健康なからだを保っていきましょう。

【監修】本間

「からだを動かすことはストレス解消になる」「適度な運動はストレス対策や健康維持に良い」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。実際、適度な運動は健康に良い効果をもたらすことは各種データが証明しており、医師としても大いに推奨できるところです。

今回は、世の中の人は実際にどのような運動をしているのか、健康維持とストレス対策を兼ねた運動にはどのようなものがあるのかを解説するとともに、これから新しく運動を始めるときに気をつけたいポイントをお話します。

適度な運動は確実に健康に良い

適度な運動が確実に健康に良いことは、各種データで実証されています。ここでは、運動が健康に与える良い効果とともに、運動不足が原因で生じる悪い効果もあわせて解説します。

日本では運動不足が原因で毎年5万人が死亡している

文部科学省「身体活動・運動を通じた健康増進のための 厚生労働省の取組|P1 わが国では運動不足が原因で毎年5万人が死亡!!」の情報を基に作図

上記のとおり、運動不足は人が死ぬ原因のひとつに数えられています。世界保健機関(WHO)でも、「身体活動不足」(6%)を全世界の死亡に対する危険因子の4 位に位置づけています(※1)。日本でも、運動不足を起因とする病気が原因で毎年およそ5万人が死亡しています。

運動の効果

運動は多くの生活習慣病を予防・改善し、健康の維持や介護予防に効果的です。科学的根拠があるものだけをまとめても動脈硬化性の病気の危険性を減らすのをはじめ、体脂肪を減らし、体重のコントロールをするうえでも有効です。また、認知症の予防・改善効果も期待できます。

運動の効用

  • 動脈硬化性の病気、特に心筋梗塞の危険性を減少
  • 体脂肪を減らし体重のコントロールに有効
  • 高血圧の予防・改善に有効
  • 糖尿病やメタボリックシンドロームの予防・改善に有効 ほか

厚生労働省「疾病予防および健康に対する身体活動・運動の効用と実効性に影響する要因|運動の効用」を参考

ストレス解消にも運動は効果的

運動が精神面に与える良い影響も証明されています。
運動には、ネガティブな気分を発散させたり、こころとからだをリラックスさせ、睡眠リズムを整えたりする作用があります。このようにして自律神経機能を調整することで、不定愁訴(ふていしゅうそ:特定の病気としてまとめられない漠然としたからだの不調の訴え)を減らす効果のあることもわかっています。また、脳内伝達物質の調整を行うことでポジティブな反応を引き出し、うつ状態や不安気分の改善に効果があると言われています。

30~40代の女性の運動量は十分?

実際、世の中の人はどのくらい運動ができているのでしょうか。ここでは、30~40代女性を例にとり見てみましょう。

30~40代の女性は、運動習慣がある人が少ない

令和元年「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、30~40代女性で運動習慣(1回30 分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している)のある人は、10%前後。目標値に掲げる33%とは、ずいぶんかい離のあることがわかります。また、1日当たりの歩数をみても、30〜40代は6,800歩程度であり、目標とされる1日8,500歩には及びません。

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要|図 34  運動習慣のある者の割合(20 歳以上、性・年齢階級別)、図 36  歩数の平均値(20 歳以上、性・年齢階級別)」を基に作図

健康を保つための理想の運動量とは

健康を保つための適切な運動量は、18〜64歳の健康な人で、「歩行以上の強度の身体活動を毎日60分以上」かつ、「息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分以上(30分以上の運動を週2回以上)」となっています。
先述の運動量と比べると、身体活動と運動の両方で不足していることがわかります。

具体的にどのくらいの運動をすれば良いのか

厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013 」の情報を基に作図

どのくらい運動をすれば理想的な運動量になるのかは、日常生活での活動量と運動を組み合わせて考えると良いでしょう。このとき、「メッツ」という単位を覚えておくと便利です。

メッツ(MET: metabolic equivalent)とは、運動の強さの単位であり、 身体活動におけるエネルギー消費量を、座って安静にしているときの代謝量(酸素摂取量で約 3.5 ml/kg/分に相当)で割ったものを指します。ちなみに、「メッツ・時」とは、運動強度の指数であるメッツに運動時間(hr)をかけ算したものになります。

このメッツを基準にした18~64歳の望ましい身体活動量を、厚生労働省は下記のように定めています。

強度が 3 メッツ以上の身体活動を 23 メッツ・時/週 行う。具体的には、歩行又 はそれと同等以上の強度の身体活動を毎日 60 分行う。

引用元:厚生労働省「運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書 平成 25 年 3 月 p5 4.個人の健康づくりのための身体活動基準

1.生活活動のメッツ

日々の家事や生活のなかにも、運動としてみなされる活動が数多くあります。厚生労働省の資料によると、たとえば、毎日30分の掃除は23メッツ・時/週(3.3メッツ×7=23.1メッツ)となっています。その一方、庭仕事など家事の内容によっては3メッツに満たないものがあり、日々の習慣であっても実際にはあまり運動にはなっていないことがわかります。

▼生活活動のメッツ例

3メッツ以上の生活活動

3メッツ以下の生活活動

メッツ

活動内容

メッツ

活動内容

3.3

カーペット掃き、フロア掃き、掃除機など

1.8

立位(会話、電話、読書)、皿洗い

4.0

高齢者や障がい者の介護(身支度、風呂、ベッドの乗り降り)など

2.0

ゆっくりした歩行(平地、53m/分未満)、料理や食材の準備、洗濯など

5.0

速歩(平地、107m/分)、動物と活発に遊ぶなど

2.3

ガーデニング(コンテナを使用)、ピアノの演奏など

8.3

荷物を上の階へ運ぶ

2.5

植物への水やり、子どもの世話、仕立て作業など

厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013|参考資料2-1 生活活動のメッツ表」の情報を基に作図

2.運動のメッツ

18~64 歳の運動の基準に関しては、下記のように考えられています。

強度が3メッツ以上の運動を4メッツ・時/週行う。具体的には、息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分行う。

引用元:厚生労働省「運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書 平成 25 年 3 月 p7 (2)運動量の基準(スポーツや体力づくり運動で体を動かす量の考え方)

なお、3メッツ以上の運動の例は下記をご参照ください。たとえば、1回30分のウォーキングを週2回行うと、4.3メッツ×1時間(30+30分)=4.3メッツ・時/週となります。

▼運動のメッツ例

3メッツ以上の運動

3メッツ以下の運動

メッツ

活動内容

メッツ

活動内容

3.0

ボウリング、ピラティス、太極拳など

2.3

ストレッチなど

4.0

卓球、パワーヨガ、ラジオ体操第1

2.5

ヨガ、ビリヤード

4.8

水泳(ゆっくりとした背泳)

2.8

座って行うラジオ体操

6.5

山を登る(04.1kgの荷物を持って)

厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013|参考資料2-2 運動のメッツ表」の情報を基に作図

生活のなかの運動量を増やす

特別な運動を始めるのが大変でも、毎日の生活のなかで少しずつ運動量を増やすだけで効果があります。ここでは、厚生労働省が健康づくりのための身体活動指針として掲げる「+10(プラス・テン)」を紹介します(※2)

「+10」は、今より10分多く、毎日身体を動かす取り組みです。もっとも簡単な方法は歩くことであり、エレベーターではなく階段を利用することもまた効果的です。平日はパソコンに向かって仕事をすることが多い方も、イスに座ったまま両足を引き上げたり、立つ座るを繰り返すスクワットをしたりすると良いでしょう。このように、10分多くからだを動かすだけで、糖尿病や心臓病、脳卒中、がん、足腰の痛み、認知症のリスクを下げることができます。
また、身体を動かすことは、軽い気分障害の予防や解消にも有効です。ストレス社会では、こころの健康のためにも「+10」が必要です。

「+10」の具体的な効果

1日たった10分でも、毎日続ければ着実な効果が期待できます。身体活動量が1メッツ・時/週増加するごとに、生活習慣病や生活機能低下のリスクが 0.8%減少するとされています。これはつまり、1日の身体活動量を2〜3分増やすと0.8%、5分増やせば1.6%、10 分では3.2%のリスク減少が期待できるということです(※3)

メンタルを整えられるおすすめの運動

メンタルを整えるうえで運動は効果的です。おすすめは、身体の中に新鮮な空気をたくさん取り入れながら行う軽いジョギングやサイクリングなどの有酸素運動です。ちょっとハードルが高いと感じたら、近所を散歩したり、緑の多い公園などでいつもより活動的に過ごしたりするだけでも効果があります。メンタルが弱っているときに頑張りすぎるとかえって疲れてしまうので、これらの運動は1日20分を目安にすると良いでしょう。
週1回1時間運動するよりは、毎日10分間でも続けた方が効果的です。メンタル改善が目的の場合は、運動の強さもそれほど必要ありません。からだがポカポカして汗ばむくらいの強さでも十分効果を期待できます。

運動を始めるときに気をつけたいポイント

突然激しい運動を始めると、運動にともなう事故やケガを生じて逆効果になることがあります。ここでは新しく運動を始めるときに気をつけたい点を簡単に説明します。

治療中の病気がある場合:かかりつけ医に確認

持病で病院にかかっている方は、担当医に運動しても良いかどうかを確認しておきましょう。また、運動時の注意点があるかどうかも一緒に聞くようにしましょう。

治療中の病気がない場合:健康診断で体調を確認

担当医がいない場合は、健康診断などで血圧検査や血液検査を受けておきましょう。病院や健診施設によっては、運動を始めようとする人に対し運動負荷心電図を行い、適切な運動プログラムを作成してくれるところもあります。

運動中に気をつけたいこと

運動の前後にはストレッチ(柔軟体操)を行いましょう。ストレッチを行うことで、からだがほぐれて故障防止になるとともに、少しずつ関節の可動域が広がり、できる運動が増えていきます。また、はじめから目標の心拍数や適正負荷で行うのではなく、徐々に心拍数や負荷量を上げていくことが理想です。

運動中の水分補給も大切です。つい忘れてしまいがちですが、20分に1回程度は水分を取りましょう。

運動終了時、突然身体を動かすのをやめると心臓へ血液の戻りが悪くなり、不整脈や血圧低下などが起こることがあります。ゆっくりと負荷量を下げ、十分なクールダウンを行いましょう。

「胸が痛い」「ドキドキする」などの症状やひどい疲れがある場合は、すぐに運動を中止し、休息を取ります。ゆっくり休んでも症状がおさまらない場合はかかりつけ医を受診しましょう。

できることから始めましょう

運動の大切さや実際の取り入れ方の参考になったでしょうか? まずは「+10」を目標に、できることから日々のなかに運動を取り入れ、いつまでも健康なからだを保っていきましょう。

引用・参考

※1 WHO 「Global Recommendations on Physical Activity for Health.|2 PHYSICAL ACTIVITY FOR HEALTH  2.1 Public Health Significance of Physical Activity」
https://www.who.int/dietphysicalactivity/global-PA-recs-2010.pdf

※2 厚生労働省 健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpr1.pdf

※3 厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013|P12 (4)全ての世代に共通する方向性」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf

監修

本間

日本内科学会認定内科医、日本医師会認定産業医

働く人のココロとカラダの健康を守ります。