糖尿病専門医に聞いた!知っておきたい体と食事のこと

糖尿病になるとどの程度の費用がかかるのか

身体のこれから

糖尿病は悪化すると治療費がどんどんかさんでいきます。できるだけそうならないように、食事や運動にきちんと取り組んでいく必要があります。また、使用できる薬は病状によって異なります。費用面や薬の使用方法とライフスタイルが合うかなどを検討した上で、無理なく治療が続けられるようにしていきましょう。

【監修】鈴木吉彦医学博士

病気になると、それを治すためには当然ながら治療費がかかります。治る病気ならば費用の負担も一時的なもので済みますが、糖尿病のような慢性疾患は長く付き合っていかなければならず、費用もその分必要です。糖尿病で治療が必要になったとき、どのくらいの費用負担が必要になるのでしょうか?

今回は、糖尿病専門医であるHDCアトラスクリニック院長の鈴木吉彦先生に、糖尿病の治療に必要な費用についてお話を伺いました。

糖尿病の治療にかかる費用

糖尿病の治療といっても、その人の病状によって内容は変わります。診察と食事療法・運動療法で済む人から、内服やインスリン注射が必要な人、合併症の腎症を発症して透析が必要になる人など、治療の程度はさまざまです。

国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターが試算した結果によると、糖尿病のひと月あたりの治療費用は以下のようになっていました。

薬を使用していない...2,000円弱
経口薬を使用している(2種類)...約4,000円
経口薬(1種類)とインスリン注射(1日4回)を使用し、自己血糖測定をしている...約12,000円

治療費は薬の種類や数などによって変わるので、あくまで上記は参考です。合併症があれば、その治療費も必要になります。この試算を見ただけでも、薬が必要になればなるほど、治療費がかかることがわかるのではないでしょうか。

インスリン注射が必要な場合を見ると、年間の治療費は10万円を大きく超えることになります。今糖尿病でない方は今後発症しないように予防を、すでに指摘されている方は悪化しないようにすることが重要です。

糖尿病の薬には新薬が多い

治療費がどれくらいかかるかは、どの薬を使うかによっても変わります。ジェネリック医薬品が開発されているような、以前から使われている薬であれば、毎月の薬代はある程度抑えることができるでしょう。

しかし、糖尿病の薬は、現在も新薬がいろいろと開発されています。患者数の多い病気ですから、より効果のある薬が求められているのです。海外では承認済みだけれど、日本ではこれからという薬もあり、今後は選択肢がより増えることが予測されます。

当然ながら新薬にジェネリック医薬品はありませんし、似た種類の薬がない場合もあるので、費用は高くなります。ただし、新薬の方が効果を期待できたり、使い勝手が良かったりする場合もあるので、費用以外の面も考えて医師と相談すると良いでしょう。

広がる抗肥満薬の開発

近年、製薬会社の間では抗肥満薬の開発が進められています。肥満は糖尿病のリスク因子になりますから、世界的にもニーズがある分野であることは間違いありません。実際に、日本で糖尿病薬として使用されているGLP1製剤は、海外では抗肥満薬として承認を受けて使用されています。

薬で痩せられるなら、治療薬として保険で使えるなら使ってみたい、という方はいるのではないかと思います。しかし、薬での治療の対象となるのは、病的に肥満とされる場合です。日本は海外に比べて肥満率が低く、治療薬としてのニーズが低いと考えられており、未だ抗肥満薬としての申請・承認はされていないのが現状です。今後の動向次第では、日本でも抗肥満薬が一般的に使われる日が来るかもしれません。

インスリン注射はスタンダードな治療方法ではなくなる?

糖尿病といえば、一般的にインスリン注射のイメージが強いのではないかと思います。身近な人が糖尿病で、食事の前に腹部などに注射を打っているのをみたことがあるという方もいるでしょう。

しかしここ数年で、その様子は変わりつつあります。GLP1製剤が新たな糖尿病の治療薬として登場したからです。インスリン製剤は、体内で足りていないインスリンを薬によって補うというものでした。ところがGLP1製剤は、インスリンを外から補充するのではなく、膵臓からのインスリン分泌を促すという仕組みです。食事をとったときにのみ作用するので、低血糖を起こしにくいとされています。

このGLP1製剤の良いところはもうひとつあります。それは、体重が増えにくいということです。インスリンなどの血糖を下げる効果のある薬は太りやすいと言われています。しかし、GLP1製剤はそのような作用はみられず、食欲が抑えられるためにかえって痩せることがあるくらいです。肥満で悩んでいる糖尿病の方は、病気のコントロールができるだけでなく、そのリスク因子である肥満も改善させることが期待できます。

GLP1製剤を使うとお金がかかる?

先ほどの糖尿病情報センターが行った治療費用の試算によると、GLP1製剤を治療薬として使用した場合、月あたりの費用負担は約14,000円だそうです(1日1種類の経口薬と併用、自己血糖測定を行っている場合)。

新しい薬であることもあり、費用負担やインスリン製剤よりも高めです。医師から使用を提案されたら、期待される効果やご自身のライフスタイルなどを考慮して、十分に相談した上で選択すると良いでしょう。

糖尿病の治療は注射をしなくても良くなる?

現在、日本で糖尿病薬として承認されているGLP1製剤は、インスリン製剤と同じように自分で注射して使用するものです。回数に違いはありますが、自分でやらなければならないことに変わりはありません。

それが糖尿病治療だったのですが、2019年に経口剤タイプのGLP1製剤が国内で承認されました。2020年に発売されることが見込まれており、注射しか選択肢がなかったGLP1製剤の幅が広がることが期待されています。

この形がスタンダードとなれば、自己注射が必要な糖尿病患者さんは少なくなっていくのではないかと期待しています。

糖尿病の治療は費用と効果を見極めよう

糖尿病は悪化すると治療費がどんどんかさんでいきます。できるだけそうならないように、食事や運動にきちんと取り組んでいく必要があります。それが糖尿病治療の基本です。それでも効果が見られない場合に、薬を使った治療が必要となります。

治療薬にはいろいろと種類があり、使用できる薬は病状によって異なります。担当医の話をきちんと聞いて、費用面や薬の使用方法とライフスタイルが合うかなどを検討した上で決めると良いでしょう。どんなに良い薬であっても、きちんと使用できなければ意味がありません。できる限り無理がない形で治療が続けられるようにしていきましょう。

監修

鈴木吉彦医学博士

慶応大学医学部卒。元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。

糖尿病外来と併行し、自由診療としての肥満治療外来を立ち上げる。