糖尿病専門医に聞いた!知っておきたい体と食事のこと

糖尿病食は健康食ってどういうこと?

身体のこれから

糖尿病は摂取エネルギー量が適切で栄養バランスが整っていれば、基本的に食べてはいけない食材などはないのです。それを規則正しく食べることが、血糖値の急上昇を防いでくれます。もし食習慣が乱れている、栄養が足りていない自覚があるのであれば、まずは食事を見直してみることをおすすめします。

【監修】鈴木吉彦医学博士

血糖値のコントロールが必要な糖尿病は、治療の一環として食事指導が行われます。糖尿病食というと、カロリーや糖質の摂取量などきびしい制限があるというイメージがありませんか? 主食であるお米があまり食べられなくなるとか、野菜ばかりになるとか、そんな食事を思い浮かべる方も多いかもしれません。

「糖尿病食は、どなたにでもおすすめできる健康食です」と話すのは、糖尿病専門医であるHDCアトラスクリニック院長の鈴木吉彦先生。今回は、糖尿病食のメリットなどについてお話を伺いました。

糖尿病食ってどんな食事?

毎日の準備がとても大変そうに感じられる糖尿病食ですが、実はそこまで厳しいものではありません。摂取エネルギー量が適切で栄養バランスが整っていれば、基本的に食べてはいけない食材などはないのです。それを規則正しく食べることが、血糖値の急上昇を防いでくれます。

エネルギー量と栄養が適切で、規則正しく食べること。よく考えると、糖尿病の方に限らず誰にとっても健康的な食事に感じられませんか? そう、糖尿病食は糖尿病を患っていない方にとっても、とても健康に良い食事なのです。

糖尿病食をつくるときのポイント

食材に制限がないとはいえ、どうしたらバランスのとれた食事を準備できるのでしょうか。普段気にかけていないと、どのようなポイントに注意したら良いかわかりにくいですよね。糖尿病食を準備するときは、以下のポイントに気をつけると良いでしょう。

適切なエネルギー量

エネルギーはとりすぎると、当然ながら体重は増えてしまいます。自分の適正なエネルギー量を知り、できるだけそれを上回らないようにすることが大事です。

1日あたりの適正なエネルギー量は、以下の計算式で求めることができます。

「1日あたりの適正なエネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×身体活動量」

身長あたりの標準体重は、「身長(m)×身長(m)×22」で計算することができます。今の体重ではなく、標準体重でエネルギー量を計算するようにしましょう。エネルギー量を計算するようにしましょう。

身体活動量は、1日のどのくらいのレベルで活動しているかによって変化します。

  • デスクワークなど座っていることが多い...25~30
  • 家事や立ち仕事などが多い...30~35
  • ハードな運動や力仕事が多い...35~

当てはまる数字を上記の式に当てはめて、適正なエネルギー量を計算してみましょう。それがわかったら、普段の食事がどのくらいのエネルギー量なのかを把握します。多すぎるようなら、間食を減らしたり、食材や調理方法の工夫をしたりしてみると良いでしょう。

エネルギーバランスに気をつける

エネルギーのもととなる栄養素は、「炭水化物」「脂質」「タンパク質」の3つです。この3つのバランスもとても大事になります。できるだけ以下のような割合になるように、食事の工夫をしてみましょう。

  • 炭水化物...摂取エネルギー量のうち50~60%
  • 脂質...摂取エネルギー量のうち20~25%
  • タンパク質...1.0~1.2g /kg×標準体重

摂取エネルギー量が適正な数字内におさまっているだけではなく、その内容も大切です。特定の栄養素に偏るとそればかりが過剰になって、ほかの栄養素が不足してしまいます。特にシニア層は筋肉量低下を防ぐためにも、タンパク質が少なくなるのは避けたいところです。食事を準備するときは、主食にご飯やパンなどで炭水化物をとり、主菜に肉や魚を使うなど、意識してみましょう。

食材をたくさん使う

エネルギーのもととなる栄養素以外にも、ビタミンやミネラル、食物繊維なども大切です。さまざまな食材を取り入れて、たくさんの栄養素がとれるように心がけましょう。果物や野菜、海藻類やきのこ類、乳製品など、1日をとおして30品目以上とることが理想とされています。

1食ですべてをそろえる必要はありませんので、1日の中でできるだけ多くとれるように意識すると良いでしょう。

糖尿病食を食べるときに気をつけること

バランスのとれた食事が準備できたら、食べるときにも気をつけたもらいたいことがあります。

1日3回、規則正しく食べる

食事の感覚がバラバラだと、血糖値が安定しません。食事を抜くと、次の食事で食べ過ぎてしまいがちなので、できるだけ規則正しく食べましょう

ゆっくりとよく噛んで食べる

ゆっくり食べた方が満腹感があり、たくさん食べなくても満足できます

アルコールはほどほどに

アルコールはエネルギーはあるものの、栄養素はありません。アルコールを飲むときは食事の内容が乱れることも多いので、飲み過ぎないようにしましょう

 

ちょっとしたことではありますが、毎日心がけることで太りにくくなります。食事内容だけでなく、食べ方も意識してみましょう。

食事制限が守れなくなった理由

こうした食事制限は、以前は守ることがそこまで難しくはありませんでした。食事は自宅で食べることが多く、食材やエネルギーのコントロールが比較的しやすかったのです。さらに、いまほど外食の選択肢も多くありませんでした。

しかし今は、チェーン店をはじめとした手頃な値段で食べられる外食のお店が増え、テイクアウトに対応したところも非常に多くなりました。甘いものもコンビニなどで気軽に買うことができます。広告も非常に魅力的で、食べたくなってしまうのもわかります。

もともと自炊が得意な人でなければ、外食やテイクアウトに頼りがちになってしまうでしょう。その中でエネルギー量や栄養バランスに気を使うのは困難です。そのような理由から、以前よりも食事制限が難しくなっているような気がします。

かつての糖尿病食最強説。現代は?

「糖尿病食は健康食」と言われてきました。ここまでお話ししてきたように、バランスのとれた糖尿病食は健康な人にもとても良い食事です。日々の食生活に気をつけていれば、肥満や生活習慣病の予防などが期待できると言えるでしょう。

このように誰にでも良い食事として認識されてきた糖尿病食ですが、食材の種類や量などに毎日気を使うのは大変なことです。現代の医療において、ほかに選択肢はないのでしょうか。

現在、糖尿病治療薬として承認されているGLP1は食欲を抑える効果があるので、食事量を無理なく減らすことができます。間食を欲しいと思うこともなくなるので、余計なエネルギーを取らずに済みます。食事制限のみだと食事の準備が大変な上、食欲を抑えることができずに苦労する人が多くいました。しかし、GLP1を使えば以前のような努力をすることなく、体重を抑えることが可能です。

日本ではまだ承認されていませんが、海外では肥満治療薬としても認められている薬です。自費診療にはなりますが、無理なく体重コントロールができるGLP1は、肥満でお悩みの方にも選択肢として検討する価値はあるでしょう。

食事は健康の基本です

毎日食べる食事は、あなたの体をつくるもととなります。健康づくりに取り組む上で、食事はもっとも基本的なものであると言えるでしょう。もし食習慣が乱れている、栄養が足りていない自覚があるのであれば、まずは食事を見直してみることをおすすめします。

血糖値のコントロールに悩んでいる糖尿病の方や、肥満を解消したい方で、食欲のコントロールに苦戦しているのであれば、GLP1の力を頼ることも選択肢の一つです。治療実績のある医師に相談して、適切に使用すれば健康管理の一助となるでしょう。

監修

鈴木吉彦医学博士

慶応大学医学部卒。元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。

糖尿病外来と併行し、自由診療としての肥満治療外来を立ち上げる。