糖尿病専門医に聞いた!知っておきたい体と食事のこと

骨粗鬆症とカルシウムの話

身体のこれから

骨粗鬆症は、気づかないうちに進行している病気です。50代になったら定期的にチェックして、予防を心がけるようにしましょう。特に閉経後の女性は骨密度が低下しやすいので、一度整形外科で骨密度を見てもらうと良いでしょう。

【監修】鈴木吉彦医学博士

年齢を重ねて行くと、とくに気をつけたい病気のひとつが、骨粗鬆症です。足の付け根などの骨折をしやすくなることで知られていますが、高齢者がかかる病気で、まだまだ自分には関係ない、と感じている方もいるかもしれません。

しかし、減ってしまった骨を元に戻すことは難しいため、早いうちから気をつけることが大切です。今回は、糖尿病専門医であるHDCアトラスクリニック院長の鈴木吉彦先生に、骨粗鬆症と予防に必要なカルシウムのことについて伺いました。

骨粗鬆症は遺伝します

骨粗鬆症は、骨の量が減って骨密度が低くなってしまい、骨折を起こしやすくなっている状態のことを言います。骨量が減っても特に痛みなどは生じないので、骨折してはじめて骨粗鬆症であることに気づくこともあります。

骨粗鬆症になると、ちょっとしたきっかけですぐに骨折してしまいます。転んで足の骨が折れた、思わず手をついたときに手首の骨にヒビが入った、尻もちをついたら背骨の圧迫骨折をした......そんな、若い頃には考えられなかったような場面で骨折をしてしまうのです。骨折がきっかけで、寝たきりになってしまう人も少なくありません。

骨は加齢に伴ってある程度減っていくので、骨量の減少そのものは病気ではありません。骨量の減った割合が2〜3割と高くなると、骨折をしやすい状態だとして、骨粗鬆症と診断されます。

この骨粗鬆症、実は遺伝すると言われています。体格や骨の質などは遺伝的要素が関わっており、家族や近しい親族に骨粗鬆症と診断された人がいる場合、自分自身も骨粗鬆症になるリスクが高いと言えます。特に、小柄な人は骨の量がもともと少ないので、注意が必要でしょう。

50代は、骨粗鬆症を起こしやすくなる年代です。ほかにも骨粗鬆症を起こすリスクはありますが、まずは近くに骨粗鬆症と診断された人がいないかを確認しておくと良いかもしれません。

カルシウムだけとっても骨密度が上がらない?

カルシウムが丈夫な骨をつくる、ということは多くの人が認識していることだと思います。カルシウムは骨をつくる材料となる栄養素で、骨粗鬆症予防にも欠かせないものです。サプリメントなどで補っている人もいるかもしれませんね。しかし、カルシウムばかりをたくさんとっても、吸収されにくいことをご存知でしたか?

カルシウムは吸収されにくい栄養素で、効率よく体に吸収するためには、ほかの栄養素も必要になります。たとえば、カルシウムの吸収促進作用があるビタミンD、血液中から骨へのカルシウムの取り込みを助ける作用のあるビタミンKなど。カルシウムばかりに注意するのではなく、さまざまな栄養素をバランスよく摂取することが大切です。

さらに、ビタミンDは、日光を浴びることで体内でも生成されます。家にこもりきりにならないように散歩などで外を歩くことも、骨粗鬆症予防には大事です。

骨粗鬆症予防に必要な栄養素が含まれた食材とは

骨粗鬆症を予防するために必要となる主な栄養素は、カルシウムとビタミンD、ビタミンKなどです。これらが多く含まれている食品には、以下のようなものがあります。

  • カルシウム...乳製品、大豆製品、小魚・海藻類(干しエビ、まいわしの丸干し、ひじきなど)、野菜類(小松菜、チンゲンサイ、切り干し大根など)
  • ビタミンD...魚介類(さんま、鮭など)、きくらげ、干し椎茸など
  • ビタミンK...納豆、ブロッコリー、小松菜、ほうれん草、卵など)

特定の食材に偏るのではなく、いろいろな食材を取り入れるようにすると良いでしょう。

日本人はカルシウム不足

もともと日本人のカルシウム摂取量は少ないと言われています。厚生労働省が定めているカルシウムの食事摂取基準は50代以上の男性で750mg、女性で650mgが推奨量とされています。骨粗鬆症が心配なのであれば、意識してカルシウムの多い食品をとるようにしましょう。

骨は意外と新陳代謝が激しい

私たちの体を支えている骨は、実は生まれ変わりを続けています。筋肉や皮下脂肪と違って、目で見ることもできないので想像がつかないかもしれませんが、古くなった骨を壊して新しくつくる、ということを繰り返しているのです。

古くなった骨は、破骨細胞によって壊されて、血液の中にカルシウムが溶け出していきます。これを「骨吸収」と呼んでいます。古い骨が壊されると、骨芽細胞がその部分に血液中のカルシウムをくっつけて行って、新しい骨ができます。これを「骨形成」と呼び、この繰り返しを「骨の新陳代謝」と呼んでいます。

骨粗鬆症は、骨の新陳代謝のバランスが崩れてしまった状態です。加齢などによって骨形成が間に合わなくなり、骨がどんどんスカスカになってしまうのです。

いつから骨粗鬆症の薬を飲むべき?

骨粗鬆症は、治療を始めたからといってすぐに改善されるものではありません。まずは、骨をつくるにも材料が必要ですから、そのための努力を地道に続けていく必要があります。

骨密度が低い傾向にあることがわかったら、まず医師から指導されるのはこの3つです。

  • 食事
  • 運動
  • 日光浴

運動については、意外に思われるかもしれません。骨密度が下がっているのに運動は危険なのでは、と疑問に思う方もいるでしょう。実は骨をつくるためには、運動は必要な要素です。骨に適度な負荷をかけることで、骨を強くすることができます。

いよいよ骨密度が下がってきたら、薬による治療の開始です。薬物治療は、閉経後の女性または50歳以降の男性、かつ大腿骨頸部骨折や腰椎圧迫骨折などをした人、あるいは骨密度が低いなど、骨折リスクが高い、という基準に達したときに行われます。

心配だからといって、すぐに薬を飲めるわけではないということを知っておきましょう。大切なのは、日頃から骨密度が下がらないように意識をすることです。

50代になったら骨密度にも気をつけよう

骨粗鬆症は、気づかないうちに進行している病気です。50代になったら定期的にチェックして、予防を心がけるようにしましょう。特に閉経後の女性は骨密度が低下しやすいので、一度整形外科で骨密度を見てもらうと良いでしょう。

骨粗鬆症で骨折すると、治るまでに時間がかかることが多いです。筋力が低下して、そのまま寝たきりになる高齢者の方も少なくありません。できるだけ早いうちから、食事や運動などを意識することをおすすめします。

監修

鈴木吉彦医学博士

慶応大学医学部卒。元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。

糖尿病外来と併行し、自由診療としての肥満治療外来を立ち上げる。