糖尿病専門医に聞いた!知っておきたい体と食事のこと

胃もたれ、食欲不振......加齢で食が細る原因は?

身体のこれから

年齢を重ねると、胃だけでなく食道も少しずつ機能が落ち、噛む力(咀嚼力)も低下していきます。食事量は無理なく、バランスに気をつけて必要な栄養をしっかりととるようにしましょう。

【監修】鈴木吉彦医学博士

すぐにお腹がいっぱいになってしまう、胃もたれがするなど、食が細くなってきた実感はありませんか?50代以降になると、いままでと同じ量の物を食べられないという方が多くなってきます。そのような変化が起きるのはなぜなのでしょうか。

糖尿病専門医であるHDCアトラスクリニック院長の鈴木吉彦先生に、年齢を重ねると食が細くなってしまう理由や、気をつけたいことについて伺いました。

年齢を重ねると食が細くなる理由

食が細くなってしまう理由は、加齢による体の機能の変化にあります。どのような変化が起きるのか、ご説明していきましょう。

年齢とともに胃の機能は低下する

年齢を重ねると、胃の弾力性が徐々に低下していきます。弾力性が下がるということは、食べ物が入ってきても十分に胃が広がらないということで、一度にたくさんの量をためておくことができないため、以前と同じように食べることができなくなるのです。
また、油を多く含む食材は胃では分解することができないため、胃もたれのような不快感があり、あまりこってりした食材は好まなくなりがちです。

さらに、胃から小腸へ食べ物を送る蠕動(ぜんどう)運動も低下するため、消化に時間がかかります。そのため、食べ物がずっと胃の中にとどまっていて、すぐにはお腹も空きません。
胃の中に食べ物が多く残ったままだと、胃酸過多(胃酸が過剰に分泌されること)が起きてしまいます。

50歳から特に気をつけたい逆流性食道炎

年齢を重ねると、胃だけでなく食道も少しずつ機能が落ちてきます。他の臓器と比べて、その変化は小さいと言われているものの、胃へ食べ物を送る蠕動(ぜんどう)運動が弱くなったり、括約筋(かつやくきん)の衰えによって食道と胃をつなぐ場所が閉じにくくなったりします。

一方、上記で説明したように、胃では胃酸過多になりがちです。そのため、胃から食道へ胃酸が逆流してしまうことがあります。これによって起こるのが、逆流性食道炎です。むかつく感じや胸焼けは、この逆流性食道炎が原因で起こっていることが少なくありません。

口まわりの機能の変化

胃や食道が変化するだけでなく、口まわりの機能も加齢によって低下します。ひとつは唾液の減少です。唾液が減ると口の中が乾燥し、歯周病や口内炎が増えてきます。それに伴う痛みや不快感などによって、食事がとれなくなるのです。

そして、噛む力(咀嚼力)も低下していきます。噛んだり飲み込んだりするための筋力が衰え、また虫歯や歯周病などで歯を失うことで、固い物が食べられなくなったり、むせたりするのです。

そして、舌にある味蕾(味を感じる器官)が萎縮することで、味を感じにくくなります。お年寄りの方の味付けが濃くなりやすいのは、このためです。味覚を感じる機能が衰えると、今まで食べていたものが美味しく感じられなくなるため、食欲の低下につながっていきます。

これらの食事に関する機能の低下が、食が細くなってしまう大きな理由です。しかし、食が細くなると同時に、50代以降の方は若い頃と比べて新陳代謝も落ちています。若い頃と比べて必要なエネルギー量も減っていますので、あまり心配する必要はありません。

食道がんが増えて胃がんが減っている理由

近年、ピロリ菌を除菌する人が増えてきました。ピロリ菌は胃がんのリスク因子と言われており、除菌することで胃がんを発症しにくくなると考えられています。

ピロリ菌の除菌をすると、胃の粘膜が厚くなって胃潰瘍にもなりにくくなります。すると、胃粘膜から胃酸の分泌は増え、それが食道に逆流して食道粘膜を損傷してしまいます。逆流性食道炎は、食道がんのリスク因子のひとつです。そのため、胃がんは減っているのに食道がんは増加すると言われているのです。

食が細くなったとき、何をすれば良いか

上記でご説明したように、食が細くなると逆流性食道炎になりやすく、それが食道がん発生のリスクを高めます。これを予防するためには、食が細い状態の改善が対策となるでしょう。

具体的には、消化に良い食べ物を食べるようにすること、そのなかでも炭水化物やアミノ酸が豊富なタンパク質(油があまり入っていないもの、豆腐など)を摂取することがひとつの方法です。50代以降でも食べやすいさっぱりとした味付けで、加熱すると量が食べられる野菜類などを取り入れると、ビタミンの摂取も同時に得られて良いと思います。

しかしながら、50代以降の方は筋肉量が減ってくるので、油も含んだステーキなどの肉類を積極的に食べることが推奨されています。どうしても食べられないという場合には、肉類の代わりに魚などを多く摂取すると良いでしょう。

食事量は減っても栄養はしっかりとろう

歳を重ねると、食事量が減ることはある程度仕方のないことです。しかし、あまり食べないでいると栄養不足になって、筋力低下や痩せすぎによる体調不良につながってしまいます。食事量は無理なく、バランスに気をつけて必要な栄養をしっかりととるようにしましょう。

食事そのものが楽しくなるよう、家族や友人などと一緒に食べたり、季節のものを取り入れたりといった工夫もおすすめです。外食や出来合いのもの、配食などもうまく利用しながら、無理なく続けていきましょう。

監修

鈴木吉彦医学博士

慶応大学医学部卒。元、日本医科大学客員教授。現、HDCアトラスクリニック院長。

糖尿病外来と併行し、自由診療としての肥満治療外来を立ち上げる。